水谷隼の真骨頂 マツケン封じた巧みなコース取り<KM東京 vs TT彩たま> | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:水谷隼(木下マイスター東京)/提供:©T.LEAGUE

大会報道 水谷隼の真骨頂 マツケン封じた巧みなコース取り<KM東京 vs TT彩たま>

2020.02.17

文:ラリーズ編集部

Tリーグの見逃せない名勝負をラリーズ編集部独自の視点で解説する【T.LEAGUE 名場面解説】。今回は2月15日のノジマTリーグ・木下マイスター東京 vs T.T彩たまから、水谷隼(木下マイスター東京)と松平健太(T.T彩たま)の第2マッチにスポットライトを当てる。

水谷は言わずと知れた日本の大黒柱で、東京五輪代表候補選手だ。2020年に入って吉村和弘(岡山リベッツ)や神巧也(T.T彩たま)、木造勇人(琉球アスティーダ)に敗れているも、ドイツオープンでベスト8に入って以降調子を取り戻しているように見える。

一方の松平は2月11日の琉球アスティーダ戦で、水谷と同じく左腕の木造相手に勝利を収めている。水谷とは青森山田中・高の後輩で、手の内を知り尽くしているのに加え、水谷は木造とタイプは異なるものの、対左利き選手の勝負勘は冴えている。

今回の試合では木造戦とは逆に松平が向かっていくプレーで、水谷に対してゲームカウント2-1で先に勝利に王手をかける展開となった。しかし、そこから戦術マスター・水谷が真骨頂を発揮し、一気に逆転勝利を収めた。水谷が試合の流れを決めたのはどんなプレーなのかに焦点を当てる。

ノジマTリーグ 木下マイスター東京vs T.T彩たま:水谷隼VS松平健太

詳細スコア

○水谷隼 3-2 松平健太
11-9/2-11/6-11/11-9/11-8

歴戦の水谷の老獪なプレーはこちら!

1.コースを読まれないフォアフリック


図:水谷のフォアフリックのコース取り/作成:ラリーズ編集部

今回の試合では、木造戦で勝利した松平がやはりフットワークを活かしたフォアハンドを中心に攻める展開で試合を進めた。松平は水谷のショートサーブやフォア前のストップに対して水谷のバックに深いツッツキを送り、返ってきた打球をカウンターする展開で2,3ゲーム目を連取する。

水谷も攻めるチャンスはあったものの、前陣での松平のブロックに捌かれ、ドライブ攻撃の打球点が下がってしまい、得点につながらない。そこで水谷が取った戦術は、コースを読まれないフォアフリックで台上から先手を取ることだった。

1ゲーム目から高度な台上からの駆け引きが行われていたこの試合で、特に決定的だったのはフォアストレートへの流しフリックだろう。トップ層でも多くの選手は流しフリックをする際に、やや打点が落ちてしまうが、水谷の場合はどのコースにフリックする際も打点が一定なため、コースが読めない。

その結果、フォアストレートへの流しフリックで松平からノータッチを奪ったかと思うと、クロスへのミドルやクロスへのフリックで松平の返球を甘くし、ラリー戦で優位に立ったのだ。

2.反撃をさせないフォア側からの攻撃


図:水谷の攻撃時のコース取り/作成:ラリーズ編集部

松平のバック側へのツッツキに対して、水谷は弧線をしっかりと描くゆっくり目のバックドライブで返球することが多かった。これに対して松平は前陣でフォアカウンターをし、水谷を台から下げた。松平に奪われた2ゲームでは、このツッツキからカウンターまでの流れがほとんど松平にとってのフォアクロス(上図の黒い実線)で行われていた。

そこで水谷は、早い打点で主にフォアクロスのコース(上図の赤い実線)を攻めることでゲームの流れを変えた。右利き対左利きの試合で、フォアクロスの攻撃を軸にすることには2つのメリットがある。1つ目にフォアストレートへの攻撃を読みづらくさせること、2つ目に相手が回り込んでのカウンターが狙いづらいことが挙げられ、ここでは松平のプレーを封じる上で有効な戦術といえる。

水谷のドライブのコースが厳しいため、バック側も積極的にフォアで回り込んでいた松平は万全の態勢でカウンターできず、攻撃の質が落ちてしまう。さらに水谷のフォアストレート攻撃を警戒せねばならず、バック側への打球に対して回り込みが少し遅れ、カウンターの打点を落としてしまい、自身が水谷に対して行っていた戦術をされる形となった。

まとめ


写真:水谷隼(木下マイスター東京)/提供:©T.LEAGUE

この試合を通じて両者のハイレベルな技術が随所に見られた。松平は水谷の堅い守りを打ち抜くフォアカウンターや、動ききるフットワーク、強く攻めさせない多彩なブロックが光ったのに対して、水谷は狙ったレシーブを引き出すサーブ力や台上プレーが目立った。

特に水谷の台上プレーでキーになったフォアフリックにおいて重要なのは、流しフリックを連発することではなく、要所で使うことで松平の読みを外したことだ。こうすることで強いカウンターを防いで打球の威力を弱めたり、あるいはカウンターをさせずにブロックさせるなど、水谷にとって攻撃の起点を作ることができたのだ。

松平のフォアの使用頻度を見て、水谷にとってのフォアクロスでラリーをする戦術に切り替えたその引き出しの多さは、長年日本卓球界を牽引した水谷だからこそなせる業だ。そしてこれら2つの戦術を完ぺきにこなすにはサーブレシーブが重要なのは言うまでもない。

このT.T彩たま戦をもってプレーオフ進出を確定させた木下マイスター東京。水谷率いる木下マイスター東京の一層ハイレベルなプレーから目が離せない。