文:寺西ジャジューカ
2月23日、アリーナ立川立飛で木下マイスター東京(以下、KM東京)と岡山リベッツ(以下、岡山)が対戦した。首位の岡山と1点差を追うKM東京による首位攻防戦である。
2チームの対戦は白熱、熱闘の末にKM東京が勝利をものにしている。1位と2位は入れ替わり、首位の座に着いたのはKM東京。この状況のまま、3月17日両国国技館開催のプレーオフを両チームは迎えることとなる。
各マッチの解説は以下の通り。
1番:張本智和/大島祐哉0-2森薗政崇/三部航平
写真:森薗政崇・三部航平(岡山リベッツ)/撮影:寺西ジャジューカ
KM東京はシングルスの強力な2人、張本智和と大島祐哉をダブルスに並べてきた。対する岡山は、今や“ダブルスの専門家”と呼びたい森薗政崇と三部航平のペア。岡山といえば森薗と上田仁のペアがおなじみのはずだが……。岡山・白神宏佑監督曰く「両国に視野を置いている。シングルスに上田を使ったときのことを考えて替えた」とのことである。
そして、やはりダブルスは岡山が強かった。大島のフォアハンドを封じ、バックを攻め、優位にラリーを進めた森薗&三部が0-2で完勝。あの張本でさえ、ダブルスでは岡山に歯が立たない。
ちなみに、三部はこの日が初出場。デビュー戦がいきなりの首位攻防戦とは……。裏ではかなり緊張していたそうだが、森薗が要所要所で「楽しんでいこうぜ」と声を掛け、落ち着かせていたらしい。少なくとも、試合中の三部に気後れは全く感じられなかった。森薗と三部の2人は過去に全日本選手権で2連覇した実績があり、約4年ぶりのペア結成を白星で飾った。
2番:水谷隼3-2林昀儒
写真:水谷隼(木下マイスター東京)/撮影:寺西ジャジューカ
KM東京からは水谷隼が、岡山からは林昀儒(リン ユンジュ)が登場。
第1~2ゲームは林が先取した。フォア、バックとバランス良く両ハンドを駆使して攻める林に対し、水谷はなかなかコースを読むことができない。続く第2ゲームに至っては、水谷は5点しか取れていない。
しかし第3ゲームは水谷が挽回、一気に10-2まで林を引き離した。……が、ここから林が8点連続でポイントを取り、デュースに突入。一進一退の末、第3ゲームは水谷が取り返した。試合後の会見で水谷は「『3ゲーム目からそろそろギア上げていこう』と思うくらいに余裕はあった」と振り返っている。
そしてファイナルでは、相手のコースを読んだ上でのカウンタープレーが光り、水谷が勝利。3-2でKM東京が2番をものにした。最初は相手を読めなくても、最終的に読んでいるのが水谷。これが、彼の強さなのかもしれない。
3番:侯英超0-3イム ジョンフン
写真:イム ジョンフン(岡山リベッツ)/写真:寺西ジャジューカ
試合後の囲み取材で、KM東京・邱建新監督は侯英超の途中加入について言及している。曰く、邱監督は当初、ファイナルの相手としてT.T彩たまを予想していたらしい。侯獲得は、カットマンを苦手とする彩たま対策だったのだ。その侯は水谷の勢いを受け、この日は3番に登場。対する岡山からはイム ジョンフンが登場した。
この日、岡山は上田を起用していない。しかし、その分、イムが素晴らしい活躍を見せた。フォアからもバックからも目の覚めるような威力のボールを放っていくのだ。結果、難敵の侯を3-0のストレートで下している。
4番:張本智和3-0吉村和弘
写真:張本智和(木下マイスター東京)/撮影:寺西ジャジューカ
KM東京からは張本智和が、岡山からは吉村和弘が登場。今年の世界選手権代表者同士による対戦だが、この日は張本の完勝だった。印象的だったのは、相手へがむしゃらに向かっていく張本の姿勢である。この気合の要因としてあるのは、16日(林昀儒戦)と18日(有延大夢戦)の連敗だった。試合後の囲み取材で張本が明かした。
「16日と18日は自分の気持ちがダメでした。勝利に対する執念がなかったですし、『負けてもしょうがないや』という気持ちが自分には珍しくあった。2度とあんな試合はしちゃいけない。親にも怒られましたし、今日の試合前に侯選手からも『前回のようなプレーをしてはいけない』と言われました」(張本)
だからだろうか。この日の張本からはオーラが出ていた。過去にヴィクトリーマッチで2敗を喫している吉村が相手でも、まるで臆していない。
「少し不安はありましたが、本当の実力は自分のほうが上だというのを示したかったので。そういう意味で、いつもより気持ちを入れて闘いました」(張本)
一方、今日の吉村は妙におとなしいように感じたが……。
「今日の試合を忘れることはないです。逆にこの試合を思い出しながら一生懸命練習に取り組み、いい状態で世界選手権とTリーグファイナルに出場したいです」(吉村)
5番:水谷隼1-0イム ジョンフン
写真:水谷隼(木下マイスター東京)/撮影:寺西ジャジューカ
KM東京からは水谷隼が、岡山からはイム ジョンフンが登場したヴィクトリーマッチは物凄い試合になった。
一時は、2-7まで水谷を追い込んだイム。「2-7になったときに負けを覚悟した」と振り返る水谷だが、ここから驚異的な粘りを見せた。なんと6連続でポイント奪取し、逆転に成功したのだ。デュースへ突入すると、そこからはお互いが何度もマッチポイントを迎える一進一退の攻防に。結果、最終的に勝利をもぎ取ったのは水谷だった。本人が「自分でもなんで勝てたのかわからない」と口にするほどのシーソーゲーム、見応え十分であった。
「なんで勝てたのかわからない」と本人さえ驚く水谷の大逆転劇!
プレーオフに向けてのコメント
こうして、レギュラーシーズンの1位はKM東京に確定した。
写真:木下マイスター東京/撮影:寺西ジャジューカ
次はいよいよ、3月17日の両国国技館だ。以下は、プレーオフを間近に控えた選手、監督が発したコメント。
「絶対に2位じゃなくて1位で両国に行きたかったので。明日1試合ありますけど気を引き締め、リーグも決勝も全部勝って優勝したいです」(張本)
「一番大事なのはダブルスですね。ダブルスを取ったほうが優勝するんじゃないかと僕は考えてます。逆にダブルスが勝てれば、9割優勝できるのでは? この2週間はダブルスを重点的に練習していきたいです」(水谷)
「ファイナルでは70%の確率で勝てます。ダブルスが取れれば90%」(木下マイスター東京・邱建新監督)
「現状ではシングルで3点取るのは難しい。何とかダブルスを取り、どこかでシングルを取る……という構成をファイナルでは組んでいきたいです。全員で2点取り、ヴィクトリーで勝利するという展開ですね」(岡山リベッツ・白神宏佑監督)
両国での見どころは、ずばり「ダブルス」である。
2/23 KM東京 3-2 岡山リベッツ
張本智和/大島祐哉 0-2 ◯森薗政崇/三部航平
7-11/9-11
◯水谷隼 3-2 林昀儒
7-11/5-11/12-10/11-7/11-9
侯英超 0-3 ◯イム ジョンフン
6-11/11-13/7-11
◯張本智和 3-0 吉村和弘
11-6/11-3/11-6
◯水谷隼 1-0 イム ジョンフン
15-13