<卓球・ノジマTリーグ2024‐2025シーズン(7thシーズン) 日程:12月1日 場所:かほく市総合体育館(とり野菜みそBLUECATS ARENA)>
これが、五十嵐史弥の持つ力だ。
これが、金沢ポートの大応援が作る流れだ。
1日、金沢ポートは木下マイスター東京と対戦、五十嵐史弥(金沢ポート)が第2マッチで木下マイスター東京のエース・リンユンジュを、そしてビクトリーマッチで大島祐哉を破り、マッチカウント3-2で金沢ポートが劇的勝利を収めた。
写真:五十嵐史弥(金沢ポート)/撮影:ラリーズ編集部
五十嵐「一球ずつ成長できるように」
第1マッチのダブルスを落とした金沢ポートは、第2マッチの五十嵐もリン相手にゲームカウント1−2、点数は5-10でリンにマッチポイントを握られる。
普通ならここで誰しもリンの勝利を確信するが、この日は会場の応援も五十嵐本人もまったく諦めなかった。
五十嵐は、ただ自分に言い聞かせていたと言う。
「ここからの一球ずつ、自分が成長できるように。ミスして負けても後悔しないように」
写真:リンユンジュ(木下マイスター東京)/撮影:ラリーズ編集部
五十嵐は9月21日の木下戦で大島に負けて以来、出場機会がなかった。西東輝監督ともじっくり話し、この日までにプレースタイルを大きく変えて臨んだ。
ミドルをフォアで動き、その後は少し台から距離を取ってラリー戦に持ち込んでいくと、本来得意とする豪打が面白いように台に入った。リンにも引けを取らない好ラリーの連続で、相手のリズムを崩した。
結果、5-10から6連続得点で第4マッチを取ると、6−6から始まる最終第5ゲームは10-6まで、実に五十嵐の10連続得点である。その後10-9まで粘るリンを振り切り、五十嵐が土壇場からの大逆転勝利で、チームに希望を繋いだ。
写真:抱き合う五十嵐史弥(金沢ポート)と西東輝監督/撮影:ラリーズ編集部
ビクトリーマッチにも五十嵐「自分はこんなもんじゃない」
写真:吉田雅己(金沢ポート)/撮影:ラリーズ編集部
第3マッチのパクギュヨンが敗れ、第4マッチの吉田雅己(金沢ポート)が松島輝空(木下マイスター東京)に勝利してぎりぎり繋いだバトン、ビクトリーマッチを、金沢ポートはもう一度五十嵐に託す。
今日を除くと、これまで今季たった1勝の五十嵐に、だ。
「出してもらったときに勝とうとずっと思ってました。自分はこんなもんじゃない、と信じてました」
会場の大声援を受け、前回9月には0-3で敗れた大島相手に、五十嵐は11−3で勝ちきった。
写真:ビクトリーマッチに勝利した瞬間の五十嵐史弥(金沢ポート)/撮影:ラリーズ編集部
「ファンが好きなんです」
ところで、なぜ五十嵐はそんなに声援を力にできるのか、聞いた。
「僕、大げさじゃなくて、本当にファンの人たちが応援してくれるのが好きなんです。少しでも会場を盛り上げようと思って試合に入りました。そのぶん情けない試合したら恥ずかしいんですけどね(笑)」
五十嵐にファンの多い理由がわかる気がした。
写真:五十嵐史弥(金沢ポート)/撮影:ラリーズ編集部
この劇的勝利で金沢ポートは順位を4位に上げたが、それ以上に、今季随一の熱狂のホームマッチの手応えが、これから終盤戦を迎えるチームに与えた影響は大きい。
「初めて観に来たんですけど、こんなに卓球が熱いなんて知りませんでした」
3時間に迫る試合時間にも、700人超のお客さんのほとんどは席を離れず、息を呑んで大声援を送った。
王者相手に必死に食らいついていく各選手の向こう側に、観る人の心を動かす物語があったのだろう。
写真:大声援を送る金沢ポートの応援席/撮影:ラリーズ編集部
誰も諦めない
今日の試合、どのゲームも驚くほど、金沢ポートがリードされる展開だった。
しかし、災害から何度でも立ち上がってきたこの地の風土か、どんな窮地でも、選手もスタッフも観客もまったく諦めないのだった。
次の金沢ポートのホームマッチは2月8日、9日、長く避難所として使用されてきた、いしかわ総合スポーツセンターでの開催である。
写真:金沢ポートのベンチ/撮影:ラリーズ編集部
ノジマTリーグ2024-2025・試合結果
〇金沢ポート 3-2 木下マイスター東京
三浦裕大/𠮷田雅己 0-2 松島輝空/吉村和弘〇
9-11/5-11
〇五十嵐史弥 3-2 リンユンジュ
6-11/11-10/3-11/11-10/11-9
パクギュヒョン 2-3 大島祐哉〇
6-11/11-10/11-9/10-11/10-12
〇𠮷田雅己 3-1 松島輝空
11-10/11-10/9-11/11-10
〇五十嵐史弥 1-0 大島祐哉
11-3
男子チーム順位(12月1日時点)
1位 岡山リベッツ(勝点32)
2位 T.T彩たま(勝点31)
3位 琉球アスティーダ(勝点30)
4位 金沢ポート(勝点24)
5位 木下マイスター東京(勝点23)
6位 静岡ジェード(勝点8)