
写真:チャンウジン(金沢ポート)/撮影:ラリーズ編集部
大会報道 【舞台裏】“え、チャンウジン、昨日シンガポールで試合してませんでした?” 大雪の金沢ポート、全員卓球の勝利で4位浮上
2025.02.08
<卓球・ノジマTリーグ2024‐2025シーズン(7thシーズン) 日程:2月8日 場所:いしかわ総合スポーツセンター>
8日、現在5位の金沢ポートと首位の琉球アスティーダが対戦、マッチカウント4-0で金沢ポートが勝利した。
これで金沢ポートはシーズン順位を4位に上げ、プレーオフ出場条件である3位圏内が現実味を帯びてきた。
写真:金沢ポートのベンチ/撮影:ラリーズ編集部
シンガポールの翌日、金沢で試合?
ところで、なぜ7日にシンガポールでプレーしていたはずのチャンウジンが、8日の正午試合開始の金沢ポートのホームマッチに出場しているのか。
そこには、本人はもちろん、監督・スタッフたちの“プレーオフ進出を決して諦めない”執念があった。
大雪に見舞われた金沢の、熱い舞台裏に迫った。
写真:試合当日朝の会場敷地内/撮影:ラリーズ編集部
チャンウジンの予定
チャンウジンは、7日22時25分シンガポール発羽田行きの飛行機に乗り、朝5時55分に羽田空港に到着。ここまでは予定通り。
しかし、そこから乗り換えるはずの小松空港便が、直前に大雪で欠航となっていた。
急遽、新幹線に切り替え、羽田空港で待機していたチームスタッフと共に、タクシーに飛び乗り東京駅へ。しかし、正午の試合開始に間に合う時間の新幹線はすべて満席だった。
「立ったままでもいいから」というウジンと、昨日の試合後からずっと移動で疲れているウジンにどうにか座席を用意したいスタッフ。
一縷の望みを託して東京駅に滑り込むと、奇跡的に1席だけ空いていた座席にウジンを座らせ、スタッフはウジンを見送った。
しかし、雪の影響で北陸新幹線にも次々と遅れが発生する。例外なくウジンの乗る「かがやき503号」にも遅れが発生した。金沢駅に到着したという確かな連絡がなければ、オーダーには名前を書けない。
金沢駅で待ち構えるのは、金沢ポートの選手である鈴⽊柊平。今回は登録選手から外れていたため、ウジンを知る確実なスタッフのひとりとして奔走した。金沢駅の到着ホームまで行き、ウジンの乗る8号車のドアの前で待ち構えた。
会場でのオーダー提出は10時10分。鈴木から西東監督の携帯に「ウジンと会えました!」と連絡が入ったのは10時6分、〆切4分前のドラマだった。
写真:整列する金沢ポート/撮影:ラリーズ編集部
「もしも負けたときは」
ここまでのチーム順位5位の金沢ポートは、この8日と9日の試合で勝てなければ、勝ち点差を考えるとプレーオフ進出はほぼ絶望的な状況となる。
「失礼な話だけど、もしあなたがWTTスマッシュで負けたとき、まだ金沢でのホームマッチにわずかでも間に合うタイミングだったら来てほしい」
西東輝監督は、ウジン本人に数ヶ月前から連絡を取り続けていた。
「もちろんウジンにはWTTスマッシュでも勝ってほしいし、実際勝つんですけど、もしも負けたときには、まだ金沢のホームマッチに間に合う可能性があるなら、そのための準備だけは整えておきたくて」
7日の午後、WTTシンガポールスマッシュ準々決勝で、ウジンは梁靖崑(中国)に敗れた。
そこからのストーリーだった。
写真:金沢ポートベンチ/ 撮影:ラリーズ編集部
「この2試合の大事さを知っているから」
金沢ポートが、世界ランク13位(2025年2月4日現在)のチャンウジンに出てほしい気持ちはわかる。
しかし、チャンウジン自身は、シンガポールでの試合の翌日に、金沢での試合に出ると決めた理由は何なのだろうか。
「今日と明日の2試合が、金沢ポートにとってどれだけ大事か知ってるからね」。試合後に尋ねると、ウジンはさらりと答えた。
写真:チャンウジン(金沢ポート)/撮影:ラリーズ編集部
「金沢は今季開幕前に来たとき、いろんな人からエネルギーをもらえてハッピーになった。だからホームマッチももっと早く来たかったけど、国際大会のスケジュールや僕自身の怪我などでなかなか来られなかった。今回、もちろん疲れはあったけど、この会場の雰囲気の中で試合ができてハッピーだよ」
そして、こう付け加えた。「韓国選手の中で“金沢ポートのホームマッチの雰囲気いいよ”って聞いてたんだけど、本当に楽しかった」
スーパーマンだね、と伝えると「いや、試合前は確かに少し疲れてたけど、試合が始まったら興奮するし、エンドルフィンも出るから、全然疲れは感じないよ」と笑った。
試合後、スタッフがホテルでの休息を勧めたにも関わらず、ウジンは自らファンサービスにもすべて応え、プロフェッショナルの真髄を見せたのだった。
写真:ファンサービスに応えるチャンウジン(金沢ポート)/撮影:ラリーズ編集部
Tリーグは甘くない
とはいえ、Tリーグの試合は甘くない。
いつもの球の走りがないウジンに、大学卓球界の成長株である岡野俊介(琉球アスティーダ)が1ゲーム目を取る。そこからウジンは、今日できる技術に特化、多彩なサービスと回転量の多いループドライブを多用しながら、岡野のミスを誘う戦術に切り替える。
結果、第4マッチを3-1で勝利したウジンが、金沢ポートに貴重な勝ち点4をもたらした。
写真:岡野俊介(琉球アスティーダ)/撮影:ラリーズ編集部
「まずは、僕らが奇跡を。」
試合には、肘の手術からの復帰を目指す松平健太(金沢ポート)も帯同し、世話役を買って出た。試合前のイベントでは、徳田幹太(金沢ポート)が観客のレシーブチャレンジのサーバーを務める。
まさに全員卓球である。
まずは、僕らが奇跡を。
少しでも被災地に良い話題をと、金沢ポートが今季掲げたその言葉は、逆境のときほどその本気度を問いかけてくる。
写真:チャンウジン(金沢ポート)/撮影:ラリーズ編集部
チーム順位表(男子)※2025年2月8日時点
1位 T.T彩たま (勝点)41(マッチ数)19(勝利数)12
2位 琉球アスティーダ (勝点)41(マッチ数)20(勝利数)11
3位 岡山リベッツ (勝点)35(マッチ数)19(勝利数)11
4位 金沢ポート (勝点)32(マッチ数)20(勝利数)9
5位 木下マイスター東京 (勝点)30 (マッチ数)18(勝利数)9
6位 静岡ジェード (勝点)17(マッチ数)18(勝利数)5
ノジマTリーグ2024-2025・試合結果
〇金沢ポート 4-0 琉球アスティーダ
〇髙見真己/田中佑汰 2-0 岩井田駿斗/上江洲光志
11-4/11-9
〇田中佑汰 3-0 鈴木颯
11-8/11-4/11-10
〇𠮷田雅己 3-1 岩井田駿斗
10-11/11-7/11-6/11-10
〇チャンウジン 3-1 岡野俊介
9-11/11-10/11-8/11-7