取材・文:川嶋弘文(ラリーズ編集長)
スポーツでパフォーマンスを発揮するための心構えとして「試合を練習のように、練習を試合のように」という格言があるが、丹羽孝希はそれを地で行くトップアスリートの一人だ。
25日のTリーグでは、伊藤美誠と混合ダブルスで日本一になったばかりの森薗政崇(岡山リベッツ)と対戦し、ゲームカウント3−1で勝利した。
丹羽は「自分」と「相手」を冷静に分析する
写真:丹羽孝希(木下マイスター東京)/撮影:ラリーズ編集部
森薗とは12月22日の全日本トップ12、12月29日のTリーグでも対戦していたが、丹羽は“自身のコンディション”と“相手の戦術”とを俯瞰し、冷静に戦い抜いた。「勝ててよかったです。体が少し重くて、回り込んだ時に詰まったり、ボールの威力が少し落ちて、ブロックでフォアに飛ばされて失点するパターンが結構多かった。練習量が少ないと体が重くなって動かなくなる。もっともっと体のキレを上げていかないと」とコンディションが万全で無い状態を自覚しながらの戦いとなった。
相手の対策については「森薗選手は非常に粘り強いので、今日は最後つかまりかけたんですけど、出だし2-0でリード出来たおかげでなんとか逃げ切れました。森薗選手はチキータが得意なんですけど、今日はあまりしてこなくて、ストップ対ストップの展開が多くて、今日は僕がその展開で不利になった。その台上での戦い方をもっと強化していきたい」と冷静に相手の作戦の変化を認識し、結果を出した。
丹羽「右の選手と対戦したかった」
写真:丹羽孝希(木下マイスター東京)/撮影:ラリーズ編集部
一方で丹羽は本当は左利きの森薗では無く右利きの攻撃選手と対戦したかったという。「今日は右の選手と試合したかったですね。全日本(選手権)で(右利きの)戸上選手に負けたので、その対策として右の選手と沢山試合がしたかったです。明日もカットの選手が2人いるのでカットの選手とできれば対戦して、カットの選手は苦手なのでそこを実戦で対策していきたいです。カットの選手は練習相手もなかなかいない。試合で沢山当たってカットに慣れるのが大事なので。明日当たりたいです。」
丹羽の根底にあるのは、“1試合1試合を練習メニューのように消化していく”という考え方であるように感じる。従来のアスリートは、練習は試合のための準備で、試合が本番という考え方が一般的だが、丹羽は1試合1試合を来たるべくビッグゲームのための成長機会と捉えていることが発言の端々から分かる。昨年も厳しい五輪選考を勝ち抜き、世界選手権のシングルスでは2大会連続で日本最高位のベスト8と安定した成績を出せた要因がそこにあるのではないかと思う。
そして丹羽の発言はいつも正直だ。
「全日本が終わって少し休んでいた部分がある。これからもっともっと調子を上げていきたい。全日本では後ろに下がってのプレーを多くしたが今日は体のキレが悪くそれは出来なかった。練習していればすぐに体のキレは良くなると思うのでドイツオープンまでにはしっかり仕上げていきたいです」
4年前のリオ五輪で男子団体銀メダル獲得に貢献した丹羽が、再び迎える今夏の“東京でのビッグゲーム”にどう照準を合わせてくるのか、注目したい。