文:石丸眼鏡
7月2日から7日にかけて行われたITTFワールドツアー・韓国オープン。各国のトップ選手が参戦した今大会。またも中国がその強さを見せつける結果となったが、地元韓国選手の活躍も大いに記憶に残る大会となった。会場の熱気も凄まじく、観客の大声援が韓国選手を大きく後押ししたようだ。
地元韓国選手も応援を力に
写真:鄭栄植(同20位・韓国)/撮影:ラリーズ編集部
林鐘勲(世界ランキング23位・韓国)は絶対王者馬龍(同5位・中国)に敗れたもののフルゲームデュースの熱戦を展開。また、鄭栄植(同20位・韓国)が樊振東(同3位・中国)に勝利するなど健闘が目立った。観客の熱く激しい声援は、自国開催に燃える韓国選手団にとって大きな力となり、対戦相手にはこのうえないプレッシャーを与えたことだろう。鄭栄植は地元の声援の大きさに驚き、感動したとコメントしている。
東京開催の世界選手権でも応援が力に
応援と聞いて思い出されるのは、2014年の世界選手権東京大会だ。福原愛を怪我で欠く日本代表は、若きエース石川佳純に加え、経験豊富な平野早矢香・石垣優香を主力とする陣容。メダル獲得を懸けて戦った準々決勝オランダ戦。エース石川が第2試合で敗れる波乱の中、平野・石垣が価値ある1勝を挙げ、最終第5試合に再び石川が登場。フルゲームの熱戦の末、エーラントを下し悲願のメダルを勝ち取った。
写真:左から石垣優香、平野早矢香、石川佳純/撮影:長田洋平(アフロスポーツ)
この試合の会場の空気は今も記憶に残っている。満員の観衆が一台の卓球台に声援を送り、1点1点に一喜一憂し、選手のプレッシャーが観客にも伝わっているような緊張感と熱気が渦巻く異様な雰囲気であった。格上の日本に対し思い切って向かってくるオランダに追い詰められながらも、勝利を収めた日本代表。観客の声援はきっと選手たちに届いていたことだろう。
Tリーグは応援文化を醸成できるか
日本では昨年からTリーグが開幕。これを足掛かりに、応援の文化が定着するかもしれない。昨シーズンも、応援の方法を選手が実演する動画をSNSに投稿したり、試合前に応援のレクチャーを行う姿がみられた。
写真:カレッジコスモス/撮影:ラリーズ編集部
日本でスポーツの応援というと、やはりプロ野球とJリーグが代表的だろうか。ファンが一体となって手を叩き、各選手固有の応援歌やチームソングを歌い、選手を鼓舞する。選手の登場曲に合わせてファンも歌うなど、そのパターンは多岐に渡る。こういった応援の文化は今後卓球界にも入ってくるだろうか。
応援という観点で、野球・サッカーと卓球の違いを挙げるとすれば、「インプレー中に応援できるか否か」という点だろう。野球やサッカーはプレー中にも応援を止めることはないが、卓球は選手がサーブの体勢に入った時点で観客は静かにするのが一般的なマナーとなっている。
それを踏まえると、卓球で応援の入り込む余地がある部分は試合前後やゲーム間ということになるだろう。これを野球やサッカーで考えると、試合前には選手紹介に合わせて応援歌を、試合開始に合わせてチームの球団歌を歌う。ゲーム間(イニング間・ハーフタイム)は球団主催のイベントなどが主で応援はあまり行われない。試合後はチームの勝利を祝う歌で喜びを分かち合う。
野球やサッカーでは応援のリードを取る応援団やサポーターの存在が一般的で、応援全体の統率と盛り上げに寄与している。この辺りは卓球にも同様のものを持ち込むことができそうだ。
Tリーグの誕生は日本での卓球応援文化の発展のきっかけになりうるだろう。歴史を重ねるに連れて、選手やチームの応援団が自然発生的に生まれ、会場のファンも彼らの応援に乗って拍手や声援を送るような姿がみられるかもしれない。卓球観戦の中心は勿論「卓球を観ること」だが、同じ選手・チームを応援する者同士が一緒になって応援し、盛り上がることを新たな楽しみの要素として追加できれば、より満足度の高い楽しい時間を過ごすことができるだろう。
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