「勝ち負けだけが大事じゃない」日本ペイント・三原監督の卓球指導はなぜ楽しいのか | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

大会報道 「勝ち負けだけが大事じゃない」日本ペイント・三原監督の卓球指導はなぜ楽しいのか

2018.08.13

取材・文:城島充

産声をあげてまだ1年半の日本ペイントマレッツを監督として率いる三原孝博は、Tリーグ開幕を迎えるにあたり「勝ち負けがすべてではありません」と言い切った。「選手たちには観ている人たちに卓球の楽しさが伝わるようなプレーをしてほしい」と。自身、実業団の選手時代に突然卓球ができなくなる状況に追い込まれた経験をしたからか、その視線はリーグや日本卓球界全体の未来をしっかりと見据えている。
 
――チームに加入した田代早紀選手、松平志穂選手に聞くと、2人とも「三原監督の指導は遊び心があって楽しい」と言ってました。

三原孝博氏(以下、三原):選手がそう感じてくれているなら何よりですね。僕たちが若いころは厳しく指導されましたが、振り返ってみると、ときに理不尽な理由で怒られたりしたことで身になっていることって意外と少ないんですよね。それより、自分自身で考えて形に移したことが身になっている。何より、選手が楽しくないと、観ている人たちに卓球が楽しいとは感じてもらえませんから。

――実業団時代に所属チームが突如休部になるという経験をされている三原監督にとって、卓球の新リーグが開幕することに特別な感慨があるのでは?

三原:チームの活動ができなくなり、一旦は会社に残って半年間人事の仕事をしていたのですが、ずっと卓球のことばかり考えてモヤモヤしていました。そんなときに、日本生命でコーチをされている竹谷康一さんから『卓球に戻ってこいよ』と声をかけていただきました。以来、女子代表のスタッフの一員として日本生命の村上恭和総監督からいろんなことを教えていただきました。安定した職に恵まれながらも卓球への未練を断ち切れなかった僕ですから、今、若くて現役であったら、プロリーグでやりたいと思うでしょうね。昔はプロリーグが海外にしかなくて、水谷隼選手や岸川聖也選手ら限られた選手しか海外に渡ってプロとして腕を磨くチャンスなかったですから。そういう意味では今回日本でTリーグが開幕することは、選手たちにとって大きなチャンスだと思います。日本ペイントの選手たちにも、このリーグでプロフェッショナルとして切磋琢磨しながら世界を目指して欲しい。

JOCエリートアカデミーでの指導経験のある三原孝博コーチ

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――指導者やスタッフとして女子日本代表やJOCエリートアカデミーで積まれた経験は、チームの指導にも役立っていますか。

三原:エリートアカデミーでは十代の女子選手たちを見ていましたが、結局、やることは同じなんです。それは男子でも変わりません。指導というのは、どこまで追い求めても正解がないと思うんです。ガチガチに固めた指導論でチームを作ると、うまく行かなかった時に対応できません。もちろん、大きな方向性は持つべきですが、その時の状況に応じて少しでも良くなっていくように臨機応変に対応していくしかないと思っています。女子選手といって特別なことはないつもりですが、今は僕が言ったことを選手たちにやってもらうことよりも、彼女たちに自分がシャットダウンされないように気をつけています(笑)。

――監督としてのプレッシャーもあるのでは?

三原:それがあまりないんですよ(笑)。意識して考えないようにしているところもあります。もちろん、日本ペイントのみなさんにチームが勝って喜んでいる姿を一試合でも多く届けたいと思っていますが、勝ち負けだけにこだわるつもりはありません。さきほどの話と重なりますが、卓球って面白い競技だと感じてもらえること、卓球人口を一人でも多く増やしていくことのほうが重要だと思っています。

――楽しみたいという思いの先に、どんな結果を残したいと考えていますか。

三原:自分たちのチームだけじゃなく、Tリーグ全体の発展につなげていけるようなシーズンにしたいと思っています。日本生命の村上総監督ともよく同じことを話すのですが、チームの勝敗よりも卓球界全体への注目が集まって、卓球人口を一人でも多く増やしたい。卓球という競技をもっともっとメジャーな競技にしていきたいんです。私たちのチームも、その力になりたいと思っています。

――まずは地元の大阪でファンを増やしたいですね。

三原:もちろん、そのことは最優先に考えています。チームとしていろんな情報発信をしていきたいですし、積極的に地元のメディアにもアプローチしていきたい。卓球の試合ってとても面白いエンターテイメントなんだということを発信したいですね。チーム単独でもいろんな活動をしたいと思っていますが、たとえば、同じ大阪を拠点にしている卓球以外のスポーツチームとコラボしてスポーツの魅力を伝えることもできたらと考えています。(了)

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