写真:宇田幸矢(明治大学)にアドバイスを送る田勢邦史監督/撮影:ラリーズ編集部
大会報道 男子日本代表・田勢監督「男子は海外経験が少ない」海外リーグ派遣も視野に<世界卓球2021>
2021.11.30
文:ラリーズ編集部
<世界選手権個人の部(世界卓球2021)ヒューストン大会 日時:11月23日~29日 場所:アメリカ・ヒューストン>
29日、世界選手権は最終日を迎え、日本代表の全試合が終了した。男子・田勢邦史監督と女子・渡辺武弘監督が報道陣の取材に答えた。
男子・田勢監督インタビュー
総括
メダルの数だけで言えば、前回大会を上回ることができた。ただ、シングルスでは1回戦、2回戦、3回戦と納得いく結果ではなかったですし、非常に厳しいものを選手に与えていきたいなと思います。
男子全体の結果としてみれば、誰が勝つか分からないので、誰にでもチャンスはある。だからこそ自分のベストフォーマンスを発揮できたり、ベストなコンディションで臨むというのが非常に大事になってくると思います。
今回男子については例えば宇田が肩を故障しただとか、五輪後のモチベーションがとかを考えると、準備が足りなかったんじゃないかなと思います。そういった点も含めて反省点が多いと思います。
同世代の台頭とともに張本に必要なもの
まずはフィジカル。さっきも智和と話してたんですけど、足りないのはフィジカルだと。昨日のミックスを見てもわかる通り、パワーが違う。智和が打っても倍以上で返ってくる、中国選手に打たれたボールに対して返す際にまだ力がない。
練習時間については何も言うことはないですよ。人の何倍も練習します。ただ、練習だけに時間を取られすぎちゃって、トレーニングを疎かにしてほしくないということを彼に伝えて、練習と同じくらいフィジカルの強化もしてほしいと伝えました。
2つめに国際的な経験。やっぱり今大会ヨーロッパの選手が強かった。それはやはりブンデスリーガで試合の経験をしている、情報もある、そういう中で自分の力を引き出すという環境がヨーロッパは整っている。
そう考えると、智和も海外に出して海外経験を積ませた方がいいのではないかと考えています。もちろん経験という意味では、世界ランキング4位まで上げてきた経験があると思うんですけど、やっぱりこのコロナ禍、難しい状況ではあると思うんですけど、海外派遣を多くしたり、海外の選手とやる機会を増やしたり、経験と対応力っていうのを身につかせてあげなきゃいけないなと思います。
ちょっと試合を見てて、試合の中の対応力っていうのが少し問題なのかなという風に感じました。
張本を海外リーグに行かせるということか
今考えてるところですね。
国際大会に行かせたい、でもこの状況でなかなか行けない、そういったときにじゃあTリーグだけで経験を積めるか、トレセンだけで強化ができるのか、でも海外の選手はブンデスリーグでやっている。
そうすると、国際大会で海外の選手と当たった時にどうなるのかなとそこはクエスチョンがついてくるので、そこは考えなきゃいけないところかなと。
打倒中国を目標にしてたが、男子の実力について
今まで(水谷)隼とか(岸川)聖也、(松平)健太、丹羽、みんな海外に行ってて、海外経験をしてきた選手が、その結果五輪で結果を出したのが、日本の実績としてそういうシステムがあるので、じゃあ今の宇田、戸上、智和がどうかと言われると、比べるとやはり海外経験が少ないのかなと。
やはりそういった経験を男子は積むことが大事なのかなと思ってます。世界選手権を見ててもヨーロッパの選手が強いって捉えると、19歳が決勝に上がってくるだけの、もちろんポテンシャルも高いですけど、海外での生活とか経験というのもしている。
そう考えると、自分よりもランクが高くても物怖じしないというか、試合の中で自分の対応力で勝ち上がっていけるところが、そこが智和に足りないところかなっていうのを考えると、すぐに何か考えなきゃいけないなと感じます。
パリの国内選考がある中でヨーロッパの派遣について
もちろん強制ではないので、やっぱり国内の選考会もあるし、コロナ禍という状況でなかなか行きづらいのもある。帰っても隔離があるし、行けるタイミングが難しいっていうのはあります。
ただ、1つの案としてそういったことを考えなきゃいけないですし、本人たちの希望があれば、そこは考えてあげなきゃいけないなと思います。このまま日本にいて良いのかっていうのは疑問ですし、そこは何かしら考えたいです。
女子・渡辺監督コメント
今大会の女子日本代表の活躍
芝田選手は同士討ちで敗れてしまったんですけど、(芝田を除けば)日本選手は中国選手以外には負けなかったんですよね。チームとしては力もついています。ただ中国選手に勝たないとメダル、金メダルには届かないなと思いました。
地力が上がってきたことについて
選手はさすがですね、本当に。五輪後、どんな気持ちで戻ってくるのかなと思ってたんですけど、全く心配はなくて、仕上げてきていた。
選手によっては今大会さらに良いプレーができたと選手自身が言ってますし、すごい悔しかったと思うし、本気で中国倒そうってのが伝わってきて、我々スタッフも含めて頑張らなきゃいけないと感じた戦いだったと思います。
伊藤選手の勝機について
それぞれ課題はあると思うんですけど、伊藤選手は常に自分の卓球を変化していて、伊藤選手がどういう風に感じたか僕はわからないですけど、彼女は新しいサービスやプレーを松崎コーチと見つけてくるだろうし、常に変化をしていくことが彼女の特徴でもあるので、次会う時までにどう変わってるのか楽しみではあります。
中国はさらに攻撃も守備も盤石なものにしてきてますので、それぞれの技術のレベルが上がったうえで、さらに伊藤の特徴、何かはないとなというのは個人的には思います。
手ごたえを感じて帰ってきた選手
伊藤以外の日本選手はみんな満足したプレーはできたんではないでしょうかね。
特に平野は陳夢(チェンムン・中国)選手とすごくいいプレーをしてましたし、石川選手も陳夢選手に負けはしましたけどしっかり勝ちあがったので。
早田はずっとアジア選手権も勝ってきていて、レベルも上がっている。ダブルスでも伊藤選手と同等ぐらいのプレーができるので、すごく上がってますし、芝田選手も試合終わって収穫あったって言ってたので、いい感触で終えられたのではないかと感じます。
女子ダブルスに強いペアが2組もいることについて
皆さん感じられてるように、伊藤/早田も活躍していますし、石川/平野も頑張っているので、女子がレベルアップしているように感じられると思います。
僕も全く同じ感じなので、やっぱりシングルス・女子ダブルス・ミックスダブルス・団体あるので、全種目で日本が上位進出するといいですよね。
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