【なぜ日本生命レッドエルフだけ勝てるのか/後編】村上恭和の監督論「来季の選手起用はナーバスになる」 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:Tリーグ4連覇に導いた村上恭和総監督(日本生命レッドエルフ)/撮影:ラリーズ編集部

卓球インタビュー 【なぜ日本生命レッドエルフだけ勝てるのか/後編】村上恭和の監督論「来季の選手起用はナーバスになる」

2022.04.08

この記事を書いた人
1979年生まれ。テレビ/映画業界を離れ2020年からRallys編集長/2023年から金沢ポート取締役兼任。
軽い小咄から深堀りインタビューまで、劇場体験のようなコンテンツを。
戦型:右シェーク裏裏

男女唯一の4連覇という偉業を成し遂げた名将・村上恭和に聞く、監督論。

話は、チームの枠を超えて、来季Tリーグのあり方に及んだ。

>>【前編】村上恭和の監督論「チーム一丸の実際の作りかた」

パリ五輪代表選考にTリーグが加わる影響

――Tリーグの試合の勝利にパリ五輪代表選考ポイントがつくとなると、選手起用の監督責任が重くなるんじゃないかと思うんですが。
村上総監督:あるでしょうね。

レギュラーシーズンの中で、1勝1ポイントとかパリ五輪選考ポイントに加わるわけだから、みんな選手は出してほしいですよね。

だから今までの4シーズンよりも選手起用にはナーバスになるんじゃないですか。槌谷さんがおっしゃるように、根拠もなく選手を使えないです。

――4連覇という結果を出し続けている村上監督は別としても、新監督などは難しい面もあるのでは。
村上総監督:悪い例がね、2018年の世界選手権ハルムスタッド大会ですね。

東京五輪代表選手は、ワールドランキングのポイントで決めるシステムでした。あの団体戦は、3人が競争していたから全員が毎回出たいって言ったんです。5人の選手を連れて行ったのに、この3人だけでほぼ全試合戦ったんですよ、何ポイントか上がるから。

それはやっぱり選考基準の落ち度やね。

そのとき行っていた長﨑(美柚)は1試合も出ていない、応援だけして帰ってきたんですからね。

――確かに、あのときそうでしたね。
村上総監督:監督だって別の人を使えないですよね。3人を競争させているんだから、誰か出さなかったら私を選ぶつもりないんですかってことになる。

だから、あれはルールが悪かったです。

ただ、今のところ、少しそれに近くなる可能性はあるので、あくまで各チーム内でですが、基準を設けてもいいと思います。例えばですけど、ひとり20試合あったら16試合までしか出られないとか、何試合かしたときに勝ち越している人が優先するとか。

スタートする前に色々決めておけば、監督に全責任を負わせず、チームが壊れないルールは作れると思います。


写真:村上恭和総監督(日本生命レッドエルフ)/撮影:ラリーズ編集部

――個人戦の開催も、とても意外でした。
村上総監督:リーグ創設当時からスポンサーへの魅力をつけるために、オフシーズンにいろんなイベントをしようというのはずっと企画としてあったわけですよ。

それが講習会なのか、模擬試合なのか、本当の試合なのか。いろんな案があった中で、今回はパリ五輪の選考にも入るんなら個人戦がいいんじゃないかってことになったんですね。

2020年に男女混合のオールスターもやりましたよね。要は卓球ファンづくりとスポンサーを獲得するためのイベントなんです。

コロナと東京五輪金メダル

――昨年の東京五輪を目標地点として、協会はずっと強化を進めてきました。それは混合ダブルスの金メダルという見事な成果に結びついた半面、その後も続くコロナ禍で、卓球人気の爆発的な拡大には至っていません。

ロンドン、リオと、日本女子団体にメダルをもたらした代表監督として、忸怩たる思いはありませんか。

村上総監督:まずはTリーグの観客ですよね。もしコロナでなければ、どこのチーム、行政も大きくPRして1,000人は絶対集まってるだろうなと思うんです。この大きなチャンスを、コロナの影響でものにできなかった。

ただ、これは終わったことですから、みんなの記憶が残っている5thシーズンが再起動の勝負の年ですね。

――具体的にはどんな取り組みが必要でしょうか。
村上総監督:集客で黒字にするような1試合、1,000から2,000人くらいの動員を作りたい。そうしないと運営面にお金をかけられなくなって、それはプロの興行じゃない。

今は各チームともスポンサー関連収入が9割くらいじゃないですか。

ただ、岡山リベッツのイオンモール開催は素晴らしかったね。

――同感です。


写真:イオンモールでのTリーグ開催/提供:岡山リベッツ/T.LEAGUE/アフロ

村上総監督:もし入場料を取れない、その利益を期待しづらいなら、スポンサーに対してPRする力をつければいい。3,000から4,000人が足を止めて観ている、あれは凄かったと思います。

そうしたら、本当に集客したいときに来てくれる。

あの知見を岡山さんが発信するなり、槌谷さんに取材してもらうなり、みんな良かったところを出し合って共存共栄を図りたいよね。

来季Tリーグの展望

――来季のTリーグはどう再起動していきますか。
村上総監督:女子で言えば、報道もされているように、まずは6チームになってほしいなと思います。今回5チームになって選手も良かったと言ってますし、私たちも楽しかったです。同じ人と対戦することが少なくなりましたからね。

もう一つは男女ともに、鎖国して選手を出さない国以外から、海外選手を獲る可能性は高いですよね。特に男子はロシアリーグの契約選手がTリーグに来たら面白いですよね。

男女とも、6チームまでは世界一というレベルのメンバーを集めることができると思っています。8チームでできるかというと、中国選手が来ない状況では厳しいかなと思いますが。

いずれにせよ、もう4年もやったのだから、いろいろ変えていかないとダメだと思ってます。力を貸してください。

――微力ながら、お役に立てる事があれば何でも。貴重なお話、ありがとうございました!


写真:4連覇を果たした日本生命レッドエルフ/撮影:ラリーズ編集部

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