鳥取県を代表する進学校の1つ、鳥取東高校。
文武両道を掲げるこの学校の卓球部は、地域の小中学生やOBともつながりながら活動を続けている。
今回は、同校で監督を務める山添正登(やまぞえ・まさと)コーチに、チームの指導体制や地域連携、そしてこれからの目標について伺った。
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「学校を飛び越えた卓球」を支えるネットワーク
――まずは、山添コーチが卓球部の指導に関わるようになった経緯を教えてください。
山添正登さん:私が現役時代にお世話になった顧問の異動に伴い、代わりの指導者を探しておられた時に声がかかりました。以前から鳥取東高校での練習を手伝っていたこともあり、比較的スムーズに指導を引き継ぐことができたと思います。
写真:練習中の1コマ/提供:鳥取東高校
――鳥取東高校の卓球部の特徴について教えてください。
山添正登さん:最大の特徴は「地域とのつながり」が強いことです。練習には鳥取東高校のOB・OGはもちろん他校のOBや地域の中学生も参加してくれていて、文字通り“世代を超えて”卓球を楽しむ空間ができています。大会のない土曜などは、中学生や他校の生徒も混ざって合同練習のような雰囲気になることもありますね。
――それは珍しい形ですね。
山添正登さん:はい。実際に、「中学や高校の枠を超えて卓球ができる場所をつくりたい、地元に帰ってきた子達の居場所をつくりたい」と、2021年に立ち上げた社会人クラブチーム「CELESTA(チェレスタ)」にも、鳥取東高校や地域の中学生も練習に参加することがあります。
CELESTAのX
CELESTAのInstagram
――卓球を軸に、地域の子どもたちと自然に関係が築かれているのですね。
山添正登さん:その通りです。鳥取のように競技人口が限られる地域では、学校単位の活動だけではどうしても選手が育ちにくい。その壁を越えるためには、学校と地域が一体となることが大切だと感じています。
1人ひとりの“伸びしろ”に向き合う
――現在の部員構成や練習体制についても教えてください。
山添正登さん:部員は男子が15人、女子が8人で、練習時間は平日が2時間ほどですね。大きなチームではありませんが、そのぶん一人ひとりとしっかり向き合えるのが強みです。
私自身が、元全日本総監督をされていた高島規郎先生(現高島塾代表)に10年以上指導法・技術・戦術を教わっており、その経験から得たことや昨年受講した公認コーチ3の講習から学んだことを生徒へ還元しています。
平日は他の職場での業務もあるため練習を指導する時間は限られていますが、トレーニングや戦術面などで細かいフォローを心掛けています。それに伴い部員も自立して取り組む姿勢が少しずつですが身についていると思います。
写真:団体戦での集合/提供:鳥取東高校
――指導にあたって、特に大事にしている考え方はありますか?
山添正登さん:大前提として「選手の意思を尊重する」というスタンスです。目標が違えば練習に対する考え方も変わってくるので、「みんなで同じことをやる」よりも「それぞれが何を目指すか」に重きを置いています。
――とはいえ、生徒の実力差もあるのではないでしょうか?
山添正登さん:もちろんあります。生徒によって実力も経験もバラバラですが、それぞれに合った伸ばし方があると思っています。
過去にもインターハイ・全国選抜・全日本ジュニアなどに出場する生徒もいましたし、初心者で入部した生徒が団体戦で大きな勝利を挙げてくれたこともあります。勝ち方や取り組み方は一つじゃない。そこを信じて、私は指導しています。
「育成」と「挑戦」の両立
――県内では鳥取城北高校のような強豪校もありますが、そうしたチームとはどう向き合っていますか?
山添正登さん:正直、戦力的に勝ち負けだけを考えると難しい部分もありますので、総合力を上げ勝負になるタイミングを作っていきたいと考えています。
また、鳥取東高校は“勉強も卓球も両立する”というスタンスなので、そこを強みに選手獲得や育成に繋がる部分もあるのかなと。
写真:キャプテンの都宮悠生(鳥取東高校)/提供:鳥取東高校
――具体的には、どういった部分が強みになっているのでしょうか?
山添正登さん:鳥取東高校は卓球の技術や結果だけではなく、「どう努力するか」や「どう学ぶか」といったプロセスも評価しています。自分自身が考えることができる生徒が増えれば強さにも繋がりますし、それが生徒の人間的な成長にもつながっていると思います。
――そうした方針が浸透しているからこそ、地域との協力関係も築けるのかもしれませんね。
山添正登さん:はい。応援に来られている地域の方々や、観戦に来られている色々な方にも「鳥取東高校卓球部を応援したくなる」と言っていただけることが増えており、本当にありがたい限りです。
写真:エースの日高優翔(鳥取東高校)/提供:鳥取東高校
――チームとしての短期・中長期の目標はありますか?
山添正登さん:短期的には、団体戦で県ベスト4以上を目指しています。個人レベルでは、今年のインハイ予選で鳥取城北高校が男女代表を独占する中、唯一代表に入った日高のように全国レベルを目指す選手もいるので、そこはしっかり後押ししていきたいです。
中長期的には、東高から県の卓球を盛り上げる選手・指導者が育っていくような仕組みをつくっていきたいですね。
地域に支えられ、地域に返すクラブへ
――鳥取東高校の卓球部をひと言で表すと、どんなチームですか?
山添正登さん:“地域密着の挑戦型チーム”ですね。中高、そして地域の様々な方が協力しあえるチームだと思います。そこが指導していて一番面白いところでもあります。
――今後、力を入れていきたい取り組みがあれば教えてください。
山添正登さん:まずは、地域の卓球熱を絶やさないこと。そして、選手としてはもちろん、将来指導者や社会人としても活躍できるような人材を育てること。現在は中学生までですが、近いうちに小学生も巻き込んで育てていきたい。それが私自身の役割だと思っています。
――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
山添正登さん:地方の学校でも、環境と想いさえあれば、卓球を通じて人は育つし、広がっていけるということを知ってもらえたら嬉しいです。これからも選手と一緒に、地域に貢献できる部活動を目指していきますので、「私立高校に勝ちたい!一緒に頑張りたい!」と思う人がいれば是非、鳥取東高校卓球部への入部をお待ちしています。








