「細く長く」卓球を続けられる環境づくりとは?"卓球と勉強の両立"や"進路指導"も重視する荒川沖TTC | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:荒川沖TTCの宮城遠征での様子/提供:荒川沖TTC

卓球×インタビュー 「細く長く」卓球を続けられる環境づくりとは?“卓球と勉強の両立”や“進路指導”も重視する荒川沖TTC

2026.02.02

この記事を書いた人
Rallys編集長。学生卓球を愛し、主にYouTubeでの企画を担当。京都大学卓球部OB。戦型:右シェーク裏裏

茨城県土浦市を拠点に、小学生から高校生までを指導する荒川沖TTC。

中学校で外部コーチを経験したことをきっかけに、中高生の指導にも力を入れたいと思うようになった。

社会人チーム・BEE CLOVERの代表を兼務する木村俊貴さんに、チーム立ち上げの経緯、指導する際の意識、そして目指す未来像について聞いた。


写真:全日本ジュニア2026でアドバイスを送る木村俊貴さん/撮影:ラリーズ編集部

チーム立ち上げの経緯

――木村さんご自身の卓球歴を教えてください。
木村俊貴さん:卓球は中学からスタートしました。中学時代は結果も出なくて、高校でも県大会に出場する程度でした。

大学には卓球ではなく勉強で進学したんですが、高校の友達と一緒に「BEE CLOVER」という社会人チームを立ち上げました。


写真:コーチ陣は仲もよく普段から社会人チーム(BEE CLOVER)で活躍する選手/提供:荒川沖TTC

――BEE CLOVERと荒川沖TTCとの関係性はどのようなものですか?
木村俊貴さん:兄弟チームといいますか、僕が代表を兼任しているという立場です。BEE CLOVERは社会人の仲間内でやって、小学生から高校生まで教えているのが荒川沖TTCという形です。


写真:生徒とコーチが混ざって大会に出ることも/提供:荒川沖TTC

――荒川沖TTCが立ち上がったきっかけを教えてください。
木村俊貴さん:14年前にBEE CLOVERを友達と立ち上げた後、教職を目指していた時期に中学校の外部コーチをすることになって、そこで中学生や高校生を教えたいと思いました。

ただ、BEE CLOVERで一緒に練習するのは実力的に難しいと考えて、チームを分けることにしました。


写真:普段の練習の様子/提供:荒川沖TTC

荒川沖TTCの特徴


写真:小学生〜高校生まで同じ大会に出ることもある/提供:荒川沖TTC

――荒川沖TTCの特徴を教えてください。
木村俊貴さん:月に土日が4回あれば、そのうち3回ほどは試合に行くイメージです。他にもクリスマスやハロウィンみたいなイベントも行います。

1番は実際に卓球とどう関わっていくかを学べるところです。県内だけではなく県外にも練習に行くので、強豪校や進学校、千葉の強い社会人チーム、栃木の強い社会人チーム、さまざまな人たちと関われるんです。


写真:BEE CLOVERの山根選手(土浦二高→新潟大→東北大(修士))が仙台の卓球ラウンジNOAさんでバイトしていたつながりから仙台に遠征/提供:荒川沖TTC

――荒川沖TTCは、どんなことを目指したクラブなのでしょうか?
木村俊貴さん:「卓球界に還元したい」という想いが根底にあります。

私は高校時代は卓球スクールに通って、出会った大人が大会に連れて行ってくれたりして、すごく良い思い出になりました。

地域のクラブみたいな雰囲気でありながら、卓球スクール並みに敷居が低く入りやすい環境を目指しています。指導料はほとんど取らず、最低限の運営ができるぐらいの費用をいただいて、非営利でやってるという感じです。


写真:コーチも大学生なので、練習中以外は距離感が近いのも特徴/提供:荒川沖TTC

――ビジネスより還元を意識しているのですね。
木村俊貴さん:そうですね。最低限のコストで運営できる環境を作って、そこで育った選手が社会人チームを作ったり、ウチに戻ってきてコーチをしてくれたり。そういう循環を作りたいです。

まだ歴史が浅いので、OBが社会人になって戻ってくる例は多くありません。でも、今大学生ぐらいの子たちもあと5年、10年後には、地元に残ってコーチを手伝ってくれる子も出てくるんじゃないかなと思っています。


写真:右側オレンジシャツ・津口コーチ。地元つくば市出身でBEE CLOVERで活躍中/提供:荒川沖TTC

――木村さんが指導をするうえで大切にしていることを教えてください。
木村俊貴さん:平等性を大事にしてます。部活だと、やる気ある子はどんどんやれるけど、やる気のない子は淘汰されていくと思うんです。

その点、うちのチームでは練習終わった後に1時間ぐらい居残り練をやって、やる気が自然に生まれるような環境を整えています。


写真:普段の練習の様子/提供:荒川沖TTC

――子どもたちとの関係づくりで工夫されていることはありますか?
木村俊貴さん:自発的に進めていくのが難しい子に対しては、大人として手は差し伸べるんですが、甘くはしていない感じです。礼儀やマナーはもちろん教えています。

卓球の競技としての楽しさと、生涯スポーツとしての魅力を伝えられるよう、意識しています。

ロールモデルの多様性


写真:地元牛久市出身の津雲コーチ。大学卒業後、社会人1年目で茨城県予選を突破。BEE CLOVERとして全日本社会人に出場/提供:荒川沖TTC

――指導体制についても教えてください。
木村俊貴さん:基本的には僕の知り合いの大学生にコーチをお願いしてます。BEE CLOVERに入っている大学生をコーチにしているので、実力的には強いです。


写真:コーチは大学生というのもあり、定期的に世代交代が行われる/提供:荒川沖TTC

――木村さんはコーチ業が本業ではないのですね。
木村俊貴さん:はい。コーチ業だけで生計を立てるのは簡単ではありません。

社会人をやりながらも、卓球を競技として楽しむこともできるし、後世に伝えることもできる。それだけでなく卓球を教えたり、競技者としてもやっていたり、楽しく卓球をやっていきたいです。

全国大会にも最近出られるようになったので、卓球で進学・就職しなくても、卓球に本気で向き合い続けられるんだというのを見せられていると思います。


写真:全日本ジュニアで1勝を挙げた板橋悠真(土浦一高) 木村さんがベンチに入った/撮影:ラリーズ編集部

――進路指導にも力を入れているんですね。
木村俊貴さん:そうですね。本職が塾の教室長なので、卓球と勉強・進学の両立は、チームとして強く伝えています。チームのミーティングでも「来週から中学生はテストあるよ」「高校生は1年後が共通テストだぞ」とか、進路の話はするようにしていますね。

もちろん、卓球で進学したい子にはその手助けをします。中学3年生に県大会で上位に進んだ子がいて、明秀日立からもお誘いが来たりしました。

そのときは本人と親御さんの意向で地元に残る判断になりましたが、明秀日立や近隣の強豪校への見学にも同行しました。


写真:選手としてはいちばん実績を出せた中畝地選手。中学時には最高で県準優勝。強豪校には進学せず、地元の公立高校で頑張っている/提供:荒川沖TTC

――チーム運営の中で印象的なことはありますか?
木村俊貴さん:大変だったこともありましたが、嬉しかったことのほうが多いです。教えている子が一度負けた選手にリベンジして、県大会準優勝まで登り詰めたときは本当に嬉しかったです。

あとは、大学に行った子たちが帰ってきて、子どもたちの練習相手をしてくれることは一番嬉しいかもしれません。卓球で結果を出すよりも、卓球を続けてくれてうることが嬉しいですね。


写真:代表の木村俊貴さん。10年以上、地元で指導を続けている/提供:荒川沖TTC

木村俊貴さん:また、今年は3月の関東選抜大会に、各中学校からの団体戦ではありますが、クラブから12名が出場できることになりました。多くの人数が上位大会を体験できるのは、指導者としてもとても嬉しい出来事でした。

今後の展望

――今後の展望をお聞かせください。
木村俊貴さん:荒川沖TTCを続けていくことで、卓球を一人でも多く続けられるような環境を提供していきたいです。

部活動縮小の流れの中で、今後は競技人口が減少していくことも考えられますが、地域移行の受け皿として荒川沖TTCを継続していくことで、卓球を一人でも多くの子どもたちが続けられる環境を提供していきたいと考えています。


写真:北日本卓球大会(岩手遠征)の写真。中高生(荒川沖TTC)+社会人(BEE CLOVER)で総勢16名で行った遠征合宿/提供:荒川沖TTC

木村俊貴さん:卒業生が帰ってきてコーチをしたり、練習相手をしてくれたり、将来的に同じ卓球仲間として同じチームでやってくれてもいいし、自分たちの仲間で別のチームを作ってもいいと思います。

とにかく得た経験を活かして、荒川沖TTCを卒業していっても、細く長く卓球を続けてほしいですね。