法政大・宮本勝典総監督が30年前から学生に求める"3つの約束"と大谷泰平監督の指導論 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:法政大学での部活/撮影:ラリーズ編集部

卓球×インタビュー 法政大・宮本勝典総監督が30年前から学生に求める”3つの約束”と大谷泰平監督の指導論

2026.04.09

この記事を書いた人
Rallys編集長。学生卓球を愛し、主にYouTubeでの企画を担当。京都大学卓球部OB。戦型:右シェーク裏裏

指導歴30年の法政大学卓球部・宮本勝典総監督と、そのあとを継ぎ監督に就任した大谷泰平監督。

主力として活躍した4年生が引退し、新チームとなった法政大学卓球部の指揮を執る二人に現在のチーム状況、指導する際の意識、今後の展望について伺った。

宮本勝典総監督 インタビュー

「兎跳び」の時代から、学生主体の現代へ

――宮本総監督の経歴と、法政大学卓球部との関わりについて教えてください。
宮本勝典総監督:昭和42年に法政大学に入学して卓球部に入りました。当時は部員が7〜8人しかおらず、関東学生リーグでも2部と3部を行き来しているような時期でした。

今の学生に比べたらレベルは低かったですが、練習はそれなりに厳しかったです。「兎跳び」や「正座」といった、今では考えられないような根性論的な練習が多かった時代です。


写真:インタビューに応える宮本総監督/撮影:ラリーズ編集部

宮本総監督:指導者として法政に戻ってきたのは30年ほど前です。法政が3部に落ちたときに「誰か見てくれないか」という話になりまして。私は東京在住で自営業を営んでおり、ある程度時間の融通が利いたので引き受けました。

それから約30年監督を続けて、2年前に監督の座を大谷に譲り、私は総監督という立場になりました。

――ご自身の現役時代と今の学生たちを見て、違いを感じる部分はありますか?
宮本総監督:一番違うのは、上下関係が非常にフラットなことです。これは良いことだと思います。我々の頃は1学年上の先輩と話をすることすら珍しかったですし、一緒に帰るなんてあり得なかった。でも、今はみんな仲良く帰っていきます。

今の学生は、強豪校出身の子たち、例えば野田学園などから来た選手を見ても、「先輩後輩」というよりは「友達」に近い言葉遣いが多い気がしますね。


写真:指導には社会で通用する人間になるように意識する/撮影:ラリーズ編集部

――学生指導において、特に大切にされていることは何でしょうか?
宮本総監督:私が30年前から言い続けているのは、たった3つのことです。「時間を守れ」「挨拶をしろ」「整理整頓をしろ」。これしか言っていません。でも、卒業したOBからは「会社に入ってから、その教えが一番助かりました」と言われることが結構あります。

大学というのは、社会と一番近い場所です。大学時代の友人は一生の付き合いになることも多い。だからこそ、社会に出て通用する人間になることが一番大事です。

――資料を拝見すると、OBの方の大手企業への就職実績が多いですね。
宮本総監督:良い企業かどうかよりも、「卒業したら必ず組織に足を踏み入れろ」と伝えています。今の時代、転職はネガティブなことではありませんが、まずは一度ちゃんとした組織に入って社会を経験することが重要です。

卒業してすぐに、卓球コーチのバイトで食いつなぐようなことだけは避けるよう注意しています。なので、大学1年のときから「せめて日経新聞くらいは読むようにしよう」と言っています。就職や進路については、かなり強く意識させていますね。

学外での経験と法政の「カラー」


写真:新チームでの新しい力に期待する/撮影:ラリーズ編集部

――卓球強化の面では、どのような方針を取られていますか?
宮本総監督:選手には「いろんな場所へ行け」と言っています。法政の練習に留まらず、他大学や実業団へ武者修行に行くことですね。東京ガス、NTT、リコーなど、OBがお世話になっているチームも含め、学生が「行きたい」と言えば橋渡しをするようにしています。

練習環境についても、私の知人が「TTC浦和」という卓球場付きのマンションを持っているので、そこに今6名の学生を住まわせてもらっています。法政の練習場よりも素晴らしい環境で、法政の学生だけは無料で使わせてくれています。

そういった環境作りも私の役割だと思っています。

――主力選手たちが卒業しましたが、新チームへの期待はいかがでしょうか?
宮本総監督:今の4年生は原田(哲多)や岩永(宗久)、加藤(翔)など強い選手ばかりでしたので、彼らが抜けた後は正直厳しい部分もあると思います。ただ、2年生の佐藤(卓人)と岩井田(雄斗)や、1年生の平山(航大)も頑張っていますし、新しく入ってくる高校生も力のある子がいます。

リーグ戦で彼らがどれだけ頑張れるか、若い力に期待しています。

――最後に、他大学と比べたときの「法政大学のカラー」を教えてください。
宮本総監督:とにかく「挨拶」ですね。練習場や試合会場で座っていても、どんな人に対しても必ず立って挨拶をする。ごく当たり前のことですが、これを徹底しています。

挨拶が体に染み付いていると、就活の面接時にも自然とそれが出ます。面接官もプロですから、付け焼き刃ではなく「そうやって生きてきたんだな」ということが絶対にわかります。スポーツをやっている良さというのは、最終的にそういった人間力の部分に表れるのではないかという気がしますね。

大谷泰平監督 インタビュー

青森山田の一期生、そして法政大学へ


写真:インタビューに応える大谷監督/撮影:ラリーズ編集部

――大谷監督の経歴について教えてください。
大谷泰平監督:元々は神奈川県で卓球を始めたのですが、中学校に上がるタイミングで青森山田中学校が創立され、一期生として入学させていただきました。同期には高木和卓や大矢英俊などがいて、全員が1年生ながら全中の団体で優勝するというすごい環境でした。

高校に上がると、下の代には水谷隼や松平賢二が入ってきて、私はなかなか試合に出られない3年間を過ごしました。その後、縁があって宮本総監督がいらっしゃる法政大学に入学しました。

――法政大学を選んだ決め手は何だったのでしょうか?
大谷監督:当時、法政は関東学生リーグの2部に所属していたので、「自分たちの代で1部に上げたい」という強い想いがあって入学を決めました。高校時代は周りが強すぎてなかなか試合に出られなかったので、大学での4年間は非常に充実していましたね。

卒業後は大学職員として働きながらコーチを務め、昨年の11月に正式に監督を引き継ぎました。

――ご自身の現役時代と比べて、今の学生たちの雰囲気はどうですか?
大谷監督:法政大学は昔から自由度が高いのが特徴ですが、今の学生はかなり意識が高いですね。

私の頃はモチベーションに個人差がありましたが、今は何も言わなくても自主的に練習に取り組んでいます。ここ数年、その良い傾向は根強く続いていますね。

――選手を指導するうえで心がけていることはありますか?
大谷監督:法政大学の憲章に「自由を生き抜く実践知」という言葉がある通り、大学全体として自由な風潮があります。私も学生の自主性は尊重したい。ただ、「自由」が「楽なほうへ流れること」にならないようには注意しています。

また、卒業後は一般企業に進む学生も多いので、社会に出てすぐに活躍できるように、挨拶や礼儀はもちろん「報・連・相」などの基本的なコミュニケーション能力については伝えています。

――職員としてのお仕事との両立は大変かと思います。
大谷監督:平日は仕事終わりに可能な限り練習に参加し、土日は必ず顔を出すようにしています。時間が限られる分、学生が自分で自分を管理できるようなチーム作りを目指しています。

主力が抜けた新チームの「競争」と「期待」


写真:「4年生が抜け、全員にチャンスがある」と語る大谷監督/撮影:ラリーズ編集部

――1年生の頃からレギュラーだった4年生が3人卒業しました。新チームの戦力はどう見ていますか?
大谷監督:おっしゃる通り、4年生が抜けた穴は大きいです。ただ、逆に言えば今のチームは5番手から10番手ぐらいの実力差がほとんどありません。1番手から4番手はある程度固まっていますが、残りの枠は全員にチャンスがあります。

なので、学生には「自分がレギュラーになるチャンスだと思ってやってほしい」と伝えています。よりチーム内での競争力が高まってくれればいいですね。

――期待している選手や、成長著しい選手はいますか?
大谷泰平監督:今いる学生で言うと、岩井田と平山ですね。この二人は本当に練習熱心で、化ける一歩手前まで来ていると感じます。岩井田はすでに関東学生選手権でランク入りしていますし、平山もすぐに結果はついてくると信じています。

あと、もう卒業しましたが、林(晃平)は一番化けましたね。入学当初は練習についていくのがやっとでしたが、ひたむきな努力で全日学のシングルス・ダブルス予選を通過するまでに成長しました。そういった選手がいることは、後輩たちにも良い影響を与えていると思います。

――昨今の関東学生リーグのレベルについてどう感じていますか?
大谷泰平監督:全体のレベルが底上げされているのを感じます。本学でも全日学予選を13名が通過するなど、層は厚くなっています。

ただ、技術的には「チキータができれば勝てる」時代は終わりました。早稲田の濵田一輝選手のように、チキータ以外の台上の精度や、最後はシンプルにフォアハンドで動き回って粘り勝つような泥臭さが、特にリーグ戦では重要になってくると感じています。


写真:チーム法政で戦っていく/撮影:ラリーズ編集部

――最後に、今後のチームの目標や展望をお聞かせください。
大谷泰平監督:まずはダブルスの強化ですね。リーグ戦のルール変更で1番がダブルスになり、ここを取れるかどうかでチームの勢いが変わります。

そして今、保護者の方や一般のファンの方々が応援に来てくださることが増えています。これは本当にありがたいことです。今後は社会で活躍しているOBの力も借りて、現役、OB、保護者、ファンが一体となった「チーム法政」で戦っていきたいです。

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