「試合でバックドライブが打てない」原因と対策とは?|頭で勝つ!卓球戦術 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:バックドライブ/撮影:ラリーズ編集部

卓球技術・コツ 「試合でバックドライブが打てない」原因と対策とは?|頭で勝つ!卓球戦術

2023.01.17

この記事を書いた人
初級者、中級者向けに基本技術の説明から、戦術論や卓球コラムまでを執筆。社会人になってから5回全国に出場し、全日本卓球選手権(マスターズの部・男子30代以上の部)ではベスト64。まさに“頭で勝つ!”を体現中。
戦型:右ペン表裏

卓球ライター若槻軸足がお送りする「頭で勝つ!卓球戦術」今回は、私が先日母校へ指導に行った際に、実際に後輩からアドバイスを求められた、「練習ではできるのに試合になるとバックドライブが打てない」という悩みについて、その解決策を考えていこうと思う。

よく聞く話ではあるが、これに悩んでいる方は多いのではないだろうか。その場ではある程度解決の手がかりを示すことができたが、たしかに私も高校生の頃にはこれにかなり苦戦していたのを覚えている。

今日は同じような悩みを持つ方に、実際に私がしたアドバイスを記していこうと思う。

練習ではできるのに試合でバックドライブが打てない

まず状況を整理しよう。ここで言うバックドライブは、下回転に対するドライブだ。自分が下回転サーブをバック前に出し、バック側に来たツッツキをバックドライブする、という至ってシンプルな状況である。

実際にその選手に練習でやってもらったところ、たしかにほとんどミスすることなく、バックドライブが打てていた。しかし試合の中ではこれがなかなかうまくいかないのだという。

そこで、先程のパターンでレシーブの際に、バックへのツッツキだけでなくフォア前へのストップも混ぜてみた。するととたんにバックドライブが全く入らなくなったのである。なるほど、と合点がいった。彼が普段やっていたのは、「練習のための練習」であって、「試合のための練習」になっていなかったということだ。

どういうことかというと、「バックに下回転のサーブを出し、バックにツッツいてもらったのを、バックドライブする練習」では、最初からバックドライブが打ちやすい位置にいて、しっかりとタイミングを合わせてスイングをすることができているから成功していただけということだ。

しかし試合では当然フォア前にストップされるかもしれないし、ツッツキがフォアに来る、あるいはミドルに来るかもしれない。それらも頭に入れてカバーしようと思うと、なかなかうまくいかない、という現象である。

全部を思い通りにしようとするのは無理とあきらめる

私がこの選手にしたアドバイスは、「全部が思い通りにはならないのであきらめよう」ということだ。

バック前に下回転サーブを出した時の3球目の待ち方の考えとして、絶対にやってはいけないのがこうだ。

・バックにツッツキが来たらバックドライブで強打しよう
・フォアにツッツキが来たらフォアドライブで強打しよう
・フォア前にストップが来たらフォアフリックで強打しよう

このような待ちは、はっきり言って無理である。ここに来たらこれをする、と考えておくのはいいのだが、その「これをする」がどれも難易度が高すぎるのだ。そして彼も実際にこのような考え方をしていたようだ。

我々初級者~中級者のレベルでは、これは理想ではあるが現実に行うのは相当難しい。ではどうすればよいのだろうか。


写真:試合でも強烈なバックハンドを見せる張本智和(IMG)/提供:WTT

まずバックに下回転のサーブを出したなら、まずはおそらく8割方バック側にツッツキで返ってくるだろう。残りの2割はフォア前へのストップだ。私はそのように待つ。なのでサーブを出したら、すぐさま台とやや距離を取ってバックドライブの準備をして構わない。

ただここで大事なのは、2割のフォア前に来たときにどうするかだ。この場合は自分の「待ち」を外されているわけなので、無理にフリックを狙いにいってはいけない。ダブルストップをしようなんてもってのほかだ。

打点が遅れてもいいのできっちりとツッツキで返球をして、相手の強打にそなえる。これでよいのだ。待ちを外されているのにもかかわらず、そこでも良いボールを打とうとするのは欲張りである。まずはミスをしないこと。確実に入れる。それが第一条件である。

試合が進むにつれて待ち方を変える

そして試合が進むにつれて、同じサーブを出したときにフォア前にストップが来る割合が高いなと判断したとする。となれば、フォア前が6割、バックへツッツキが4割という待ち方に変更するのだ。

この場合はフォア前に来たときは待ってましたと言わんばかりに攻めればよいが、バックに来たときはバックドライブを打つのはあきらめるべきだ。しっかりとツッツキでつないで、次球をブロックで待つ。このように相手の出方に合わせて自分が調整することが大事になってくる。

あるいは今度は、フォアへのツッツキとバックへのツッツキの2択を迫られているとしよう。どちらも同じくらいの割合で、バック5割、フォア5割で待つとしよう。この場合はフォアバック共に強打をするという考えを捨てて、やや打点を落としてもループ気味のドライブで対応する、という待ちをするのが良いだろう。

そしてその後の5球目、7球目で強打を狙いにいくわけだ。無理に強打を狙いにいってミスが増えるよりかは、威力を落としても確実に入れていく方が、相手としてもプレッシャーがかかってくるはずだ。

まとめ

この選手にしたアドバイスをまとめるとこうなる。

・まずは待ち方を整理すること
・待っていない方に来たら、「確実に入れる」ことを重視する
・待ち方は状況に応じて柔軟に変えること

といった具合だ。この選手のように、「バックドライブで強打がしたい」という考えを持つのは良い。だがそれに固執し過ぎると全体のバランスが崩れ、試合に負けるという最悪の結果を招きかねない。そのため、「あきらめること」が重要になってくるのだ。

卓球は対人スポーツだ。プロレスとは違って、相手がしたいことをいかにさせないか、ということが非常に大切である。それは相手だって同じだ。こちらがやりたいことをさせてもらえないのなら、こだわるのではなくそれを諦め、他の作戦にスムーズに切り替えることができる選手が、試合で勝ちやすくなってくる。

ただもちろん次のステップとして、こういった2択の状況の練習をするのも大事になってくる。試合となるべく近い状況を練習で作り出して、待ちを外されたときもある程度良いボールが打てるように、レベルアップしていこう。

今回の内容が、同じような悩みを抱えているあなたの解決のヒントになれば、これ幸いである。

若槻軸足インタビュー記事

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