『頭で勝つ卓球戦術』シリーズ著者・若槻軸足が社会人で全国5回でられたワケ | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:若槻軸足氏(卓球ライター)/提供:若槻軸足

卓球インタビュー 『頭で勝つ卓球戦術』シリーズ著者・若槻軸足が社会人で全国5回でられたワケ

2020.06.14

この記事を書いた人
Rallys副編集長。学生卓球を愛し、主にYouTubeでの企画を担当。京都大学卓球部OB。戦型:右シェーク裏裏

卓球専門メディアRallys創業初期の2017年9月から連載が続いている『頭で勝つ!卓球戦術』。

初心者、中級者向けに卓球の基本的な技術の説明やそのやり方はもちろん、戦術論や卓球コラムなどその内容は多岐に渡る。60本ほどを数えた連載は、好評のため電子書籍化もされ、6月現在でvol.4までが発売されている。

著者は卓球ライターの若槻軸足氏だ。

若槻氏は、「僕自身、身体能力は低いですが、社会人になってから全国に5回出られた」と全日本クラブ卓球選手権出場4回、全日本卓球選手権(マスターズの部・男子30代以上の部)ベスト64の実績を誇る。まさに“頭で勝つ!”を体現しているプレーヤーだ。卓球ライターとしても日本卓球協会強化本部長・宮﨑義仁氏の著書『世界卓球解説者が教える卓球観戦の極意』(ポプラ新書)の出版に編集協力として携わった。

今回は、『頭で勝つ!卓球戦術』のバックグラウンドとなる若槻氏の卓球観を探った。

>>連載・頭で勝つ!卓球戦術はこちら

明徳義塾のダブルスに勝った男・若槻軸足

――まず初めに若槻さんの卓球を始めた頃のお話をお伺いできますか?
若槻軸足(以下、若槻):
本格的に始めたのは中学1年生の時です。小学校のとき、体育の授業でペンホルダーを使用していたので、その流れでペンで始めました。最初はペン裏だったんですよ。

中学校は地元奈良の公立中学でした。地域にクラブチームがあったので、小学校からの経験者が入部していて割と強かったため、他校よりもレベルは高かったです。団体戦では奈良県1位になりました。

――若槻さんもレギュラーとして活躍されてたんですか?
若槻:
中学始めでしたが、辛うじてダブルスで団体メンバーに入ることが出来ました。小学校からの経験者4人がシングルスに出て、僕ともう1人の中学始めの子とでダブルスを組んでました。そのダブルスでは安定して勝ち星は上げてたと記憶しています。

中3のときに団体の全国選抜予選で県優勝して、本戦では明徳義塾中と当たりました。ちなみに明徳のダブルスには勝ちましたよ!

――えっ!さすがですね…!
若槻:
…種明かしをすると、明徳のダブルスは初心者2人が組んでたんです(笑)。残りの4人で確か準優勝まで行ってましたね。

――なるほど(笑)。若槻さんは高校でも卓球部に入られたんですよね。
若槻:
高校は同じく奈良の市立一条高校に進学しました。ある程度卓球が強い学校というのは調べて行きましたね。

シングルスでの成績はベスト4が2回、ベスト8も2回。団体戦では県で準優勝です。インターハイ予選で決勝戦の5番フルゲームまでもつれるも、あと一歩のところで優勝を逃しました。

――中学ではペン裏というお話でしたが、高校でペン表になられたんですか?
若槻:
はい、ドライブができないペン裏だったので、高1の途中に先生に言われて表ソフトに変えました。

頭で勝つ!卓球戦術』で書いている内容は、高校のときのその恩師から教わった内容が多いですね。教えていただいたものを自分なりに噛み砕いて咀嚼して身についている情報を出してます。

卓球未経験者の恩師から得た学び

――若槻さんの恩師について詳しく聞かせてください!
若槻:
僕の恩師は、竹井博先生という方で、実は卓球経験がない方なんですよ。

でも、生徒を相手にブロックしてフットワーク練習させるとかサーブの技術とかがめちゃくちゃ上手いんです。いまだにちょっと謎です(笑)。

――竹井先生の指導で印象に残ってることはありますか?
若槻:
高校の合宿の夜練で、先生にブロックしてもらってフットワーク練習をしたときですね。

合宿所に、通常より一回り小さいおもちゃみたいなラケットがあって、そのおもちゃラケットで僕の全力のスマッシュを軽々ブロックして僕を振り回してました。当時、先生は50歳代半ばで、しかもお風呂上がりというコンディション。(笑)この記憶は色々な意味で忘れられないですね。(笑)

厳しくもあり面白くもあり、すごく尊敬しています。竹井先生から戦術関係はいろいろとご指導していただきました。


写真:ペン表で現在もプレーしている/提供:若槻軸足

――戦術面ではどのようなことを学ばれたんですか?
若槻:
例えば、「競った場面で絶対下回転は出すな」とか「競ってる時ほど速いボールは打つな」とかですね。

「競った場面での下回転」については、ネットインが起こりやすいから、「速いボール打つな」は、緊張している場面ではブロックでしっかり角度をつけて押さえるのが難しいので、回転のかかったループドライブが良いんだということでしたね。

――しっかりした理由があってわかりやすいですね。
若槻:
あとはボクシングのステップのワン、ツーに例えて、フォアバック切り替えの際の上半身や手の動き、タイミングを教えてもらいました。「サイドを割られたら、必ずサイドを割り返せ」などもよく覚えています。

また、ノータッチで抜かれたら「おーい、野球と違うねんから卓球に見逃しはないんや」と怒られたり、ちょっとコミカルな側面もありましたよ(笑)。

芯にあるのは「卓球は相手より1本多く返したら勝ち」

――竹井先生は、わかりやすくて親しみやすくて絶対に良い先生ですね。
若槻:
あと、もう1人の恩師である、奈良女子高校出身の女性コーチにもお世話になりました。ダブルスで近畿2位までいってる方で、藤原先生とおっしゃるんですけど、高校の時に1年間ほどだけ、週1回程度してもらってました。

藤原先生の一番の教えが「卓球は相手より1本多く返したら勝ちやねんで」でした。僕、ほとんどの記事でその言葉使ってます(笑)。

――確かによく見ます(笑)。
若槻:
あとは「卓球に3ポイントシュートはない」とかね。勝つために相手より1本多く返した者が勝つ。剛速球を打っても1点だしサーブミスでも同じ1点という教えが、今も芯にあります。あと、「裏面が出来た方がかっこいいから、裏面貼り~」というゆるいアドバイスにより、裏面にラバーを貼るようになりました(笑)。


写真:若槻軸足氏(卓球ライター)/提供:若槻軸足

――若槻さんの記事の根底にある部分は、竹井先生の戦術、藤原先生の教え、若槻さんの経験だったんですね。
若槻:
かっこよく言うとそうですね(笑)。

卓球は身体能力が高い人が勝つスポーツじゃない。僕は身体能力はめちゃくちゃ低いですが、サービスやレシーブでの工夫や、ツッツキやブロックで相手より1本多く返すことを心掛けることによって、社会人で全国に5回出られたし、マスターズでも1勝できた。

練習時間も限られている中で、「勝つ」という目的を達成するために、最も合理的な戦術選択ができているかなと思います。

Rallysで最初に書いた『卓球初心者でも勝てる!最初に習得すべき「たった2つの技」』はそれが全て詰まっていますね。

東京選手権では90歳代の部があることからも分かるように、卓球は一生かけてプレーが出来る生涯スポーツです。僕はその点にすごく魅力を感じています。だからこそ、身体能力や技術だけではなく、「戦術」という面により着目する必要があると考えています。

今後も卓球を始める初心者から今もプレーしている中級者まで、広く参考になる記事を書いていければと思います。

――ありがとうございました!今後も面白くタメになる記事よろしくお願いします!

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