シェークバック表の選手を倒すための戦術と注意点|頭で勝つ!卓球戦術 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

卓球技術・コツ シェークバック表の選手を倒すための戦術と注意点|頭で勝つ!卓球戦術

2023.09.04

この記事を書いた人
初級者、中級者向けに基本技術の説明から、戦術論や卓球コラムまでを執筆。社会人になってから5回全国に出場し、全日本卓球選手権(マスターズの部・男子30代以上の部)ではベスト64。まさに“頭で勝つ!”を体現中。
戦型:右ペン表裏

卓球ライター若槻軸足がお届けする「頭で勝つ!卓球戦術」

このシリーズでは、初心者向けに卓球の基本的な技術についての説明やそのやり方、対処法などについてお話していく。実際のプレイヤーはもちろん、テレビなどで観戦される方にとっても、頻繁に出てくる用語が登場するので、知っているとより卓球の面白さが分かるだろう。ぜひ参考にしていただきたい。

(特に記述がない限り、右利きのシェークハンドの選手を想定している)

さて今回は戦型別の対処法で、シェークバック表ソフトの選手を倒すためのテクニックについてお伝えする。男子のトップ選手のなかでは、少ない戦型だが女子選手ではまだまだ多く見られる。こと地域の愛好家達の間では、シェークの裏裏の選手の次に人気のある戦型ではないかと感じている。ぜひこの機会にしっかりと対処法をマスターしておこう。

表ソフトの特徴

まずは表ソフトについての簡単な特徴からお話しよう。一般的な「裏ソフト」ラバーが、表面が平らな形状となっているのに対して、表ソフトは凸凹の形状をしている

そのため、相手のボールの回転の影響を受けにくいという利点がある。ただし反対に、表ソフトラバーで回転をかけるのは難しい。また、その形状からボールがラバーに接触してからの反発が強く、いわゆる「球離れが早い」という特徴も持つ。

そのためプレー領域に関しては、裏ソフトでドライブ主体の選手よりも、台に近い前陣でプレーする選手が多い。そして回転ではなくタイミングやピッチ、あるいはナックルボールといった変化を駆使した戦い方になることが多いだろう。

表ソフトラバーをバック側に使うトップ選手といえば、やはりなんといっても伊藤美誠選手だろう。男子選手では「丹羽キラー」として日本選手の前に何度も立ちはだかった、香港のベテラン、唐鵬選手などが代表的なプレイヤーだ。

バック表ソフトプレイヤーへの対策

バック前は要注意

まず、シェークバック表の選手に対して一番やってはいけないことから解説する。

バック前への送球だ。回転の影響を受けにくいという特性上、様々なボールが返ってくる可能性が最も高いのがバック前だからだ。台上でパチンと弾くバックハンドのフリックや、強烈に変化するチキータ、あるいはネット際にピタッと止まるストップなど、非常に多くの選択肢がある。それは、伊藤選手のプレーを見ていれば明らかだろう。

シェークバック表の選手に対して特別な意図もなく安易にバック前にボールを送ってはいけない、ということは常に意識しておくべきだ。

バック深くに下回転

表ソフトが最も苦手なのは、深い下回転のボールへの対処だ。台上の浅いボールに対してはスマッシュ系の弾く打法でスピードのあるボールを打つことができる。

しかし深いボールに対してスマッシュ系の弾く打法をすると、どうしてもミスが多くなる。そこで、ドライブでの対応となるのだが、前述のとおり表ソフトで回転やスピードのあるドライブを打つことは難しい。バックハンドであればなおさらだ。

よって、シェークバック表の選手に対しては、とにかくバック側へ深く下回転を送っておくのが基本的な戦術となる。表ソフトで持ち上げるドライブをさせておいて、それをドライブやスマッシュで狙い打っていく、というのが理想的な展開だ。具体的には、サーブからの展開なら、バック深くへ下回転や横下回転でのロングサーブを出す。あるいは短い下回転サーブを出し、3球目をあえてツッツキでバック深くに詰める、という展開もありだ。

そういった展開を何度か続けていると、相手はきっと回り込んでフォアハンドで対応するようになってくるはずだ。そうなれば今度はフォア側を狙おう。こうして相手にフォア側への意識も植え付けた上でバックを狙えば、相手の足の動きを止めて狙い通りの展開に持っていくことができるだろう。

フォアをついて少しでも台から下げさせる

逆にレシーブからの展開を考えてみよう。表ソフトの選手は、純粋な下回転サーブよりは、横回転やロングサーブを多く使って、テンポの早い展開に持っていこうとする傾向が強い。よって、相手がサーブを持っているときは、深い下回転をバックに詰める前述の作戦は上手くさせてもらえないだろう。

そのため、レシーブの展開ではフォアサイドを突くことを意識したい。それは、少しでも相手を台から下げさせたいからだ。バックハンドが身体の前方で打球するのに対し、フォアハンドは身体の横側で打球する。その結果、フォアハンドでラリーを続けていると打球点が落ち、台から離れていくパターンが非常に多いのだ。

とにかく、バックハンドを前陣の万全な状態で打たせないために、まずはフォアサイドを突いて、少しでもいいので相手を台から下げさせる。そうして相手が下がってから初めてバックを狙えばよい。表ソフトは台から下がった状態ではその強みを全く活かせないため、驚異はほとんどなくなるはずだ。

シェークバック表の選手は、表の特徴を活かしたピッチや変化でチャンスメイクをして、最後はフォアハンドで決める、という考え方が念頭にある。なので、何も考えずにバックを狙ってしまっては、相手の思うつぼなのだ。ラリーになったらまずはフォアを狙って、少し台から下げさせて、その上でバックを詰める。これが、表が最も嫌がる戦術だ。

まとめ

今回の話をまとめると、

サーブからはなるべくバック深くへ下回転のボールを送り、表で持ち上げさせて狙い打つ。
レシーブから、あるいはラリーになってからは、まずフォアを突いて台から下げさせてから、バックを詰める。

ということになる。もちろん選手によってそれぞれ特徴があるので一概には言えないが、表ソフトラバーの特性を考えた上では、最も基本的で、共通的な内容になっているかと思われる。シェークバック表の選手と対戦するときは、ぜひ参考にして頂きたい。

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