戦型:右ペン表裏
卓球ライター若槻軸足がお届けする「頭で勝つ!卓球戦術」。今回は「ダブルスを制するサービスのポイント」というテーマでお話していく。
ご存知の通り、卓球のダブルスには「サービスはフォアサイドから対角線のコースに出さなければならない」というルールがある。さらに近年のチキータ系の技術の発展もあり、ダブルスではレシーブ側の方が有利であるとされている。
もちろん、サービス側でも工夫すれば、得点に繋げることは十分に可能である。だがしかし、残念ながら私も含めて、それを活用できている選手は多くないと思われる。そこで、今回はそんなダブルスのサービスにおいて工夫すべきポイントや考え方を追求してみよう。
このページの目次
ダブルスを制するサービスのポイント①:コースを細かく考える
「ダブルスのサービスはフォアサイドから対角線のコースに出す」というのは承知のルールであろう。しかし、だからといってサービスのコースを安易に考えているのでは、かなり損をしている。私が高校生の頃、練習試合をした強豪校の監督から「フォアサイドを9つに割って考えろ」というアドバイスをもらったことがある。
ちょうど以下のような形だ。
写真:フォアサイドのコースを9つに分解した図/制作:ラリーズ編集部
※以下、上記の図に記載の番号に則って話を進めていく。
ほとんどの人は、ショートサービスなら第2バウンドが⑧か⑤、ロングサービスなら②の位置を狙って出しているかと思われる。しかし、今回オススメしたいのは、「それ以外のコースも意図的に狙っていきましょうね」ということである。
③⑥⑨はセンターラインギリギリに出すことになるため、少しでもズレるとサーブミスになる恐れもある。しかし、そのギリギリを狙わなければ意味がない。④のようなサイドを割るサービスも有効になる。⑦を狙うのはかなり難しいが、使いこなせれば強力な武器になるだろう。
基本的にはショートサービスで組み立てることが多いと思うが、その際も⑧⑨だけでなく⑤⑥といったコースも非常に有効だ。なぜなら、このコースは台から出るか出ないかのハーフロングを狙うことができる位置で、相手のレシーブの質を落とすことが可能だからだ。
ダブルスを制するサービスのポイント②:レシーバーの利き手別に考える
さらにはレシーバーが右利きか左利きかでも狙い所が変わってくる。
右利き相手なら③⑥⑨のコースを狙うのが良い。フォアハンドで処理しようとする相手なら、体の近くの処理になるので詰まらせることができる。特に右利き同士のペアならば、レシーブの時点で相手ペアが重なる形にできるので、非常に有効である。
そして、このときにはなるべく卓球台中央の白線を狙って出すことが大事である。そのためにはサービスを出す際はなるべく台の中央の一から出し、ボールの第一バウンドも白線ギリギリを狙うのがコツである。
次に左利きの選手がレシーバーの場合だが、実を言えば、左利きの選手に対しては有効なコースはほとんどない。なぜなら、左利きの選手はシングルスとほとんど変わらない状態でのレシーブとなり、右利きの選手よりも圧倒的に空間を広く使うことができるからだ。
ただ、敢えて言えば、しっかりとサイドを割った④や、体から遠い⑨、⑥、ロングサービスなら③といった厳しいコースを狙うことを心がけると良いだろう。
ダブルスを制するサービスのポイント③:横回転の使い方を考える
ダブルスではなるべくパートナーが打ちやすいボールを出すことがセオリーである。そのため、サービスもなるべくシンプルに返ってくるように、下回転かナックルといった、いわゆる「縦回転系のサービス」を中心に出すことが多い。
そのため、横回転を上手く取り入れられれば、サービスからの有効な展開を作りやすくなるのだ。
まずは逆横回転だ。シンプルにショートサービスで⑤を狙うのもいいが、せっかくなら⑦を狙う方が面白いだろう。ネット際かつ、右利き選手から見るとボールが逃げていくようなサービスになるため、相手のレシーブはほぼ確実にこちらのフォア側へのドライブになる。
さらに、相手が右利きと左利きのペアの場合は、左利きの選手の視界を一旦遮る形になるため、そのあとの展開もサービス側に有利になる。
そして、よりダブルスで効果的なのが順横回転のサービスである。
まずはセンターライン付近の③⑥⑨を狙ったコースだ。相手のバック側へ曲がっていくボールが出せれば、右利き選手にとっては相当厳しいはずだ。レシーブのコースもこちらのフォアサイドへ返ってくる確率が高くなる。左利き選手に対しては③を狙って、逃げていく回転でロングサービスを出してやれば、意表をつけることは間違いない。
さらにぜひ試して欲しいのは、④のコースへのハーフロングサービスである。
このコースのサービスは、通常の縦回転ならショートサービスでもボールが台から出てしまう。だが、順横回転をかければ、相手コートから出ると見せかけてコートの白線上を沿うような軌道を描くことができる。そうすれば、相手は強打できないうえに、判断が遅れて返球が甘くなれば、絶好の3球目攻撃のチャンスとなる。コースも大抵はフォアサイドだろう。
そもそも、出るか出ないかのハーフロングのサービスが有効なのは言うまでもない。ハーブロングのサービスというのは、レシーブ側にとっては判断を間違えれば手を卓球台にぶつけて怪我をする可能性があるため、恐怖を伴うのだ。
加えて、④のコースは卓球台の角がある部分になるため、より恐怖感が強まるというわけだ。物理的、視覚的に角のあるところへ向かって身体を動かすわけなので、当然である。サービスのコントロールに自信がある方は、ぜひ試してみてほしい。
まとめ
いかがだっただろうか。今回はダブルスのサービスについてより踏み込んで考えてみた。
「細かく厳しく狙った方がいいなんてことは分かっている」という読者の方もいるだろうが、実際に使いこなせている方はほとんどいないのではないだろうか。もちろん今回の内容がすべてうまく行くわけではないと思うが、エッセンスの一つとして加えて頂ければと思う。
ただ、確実に言えることは、今回のように細かく厳しくコースを考える事自体にものすごく価値があるということ、さらにはこれはシングルスにおいても応用できるということだ。明日からのあなたの卓球の参考になれば幸いである。
若槻軸足インタビュー記事
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