戦型:右ペン表裏
卓球ライター若槻軸足がお届けする「頭で勝つ!卓球戦術」。今回は「フォア前のサービスに対する有効なレシーブ」というテーマでお伝えしていく。
御存知の通りフォア前は身体から最も遠い位置であり、かつコントロールを失敗すれば一発で撃ち抜かれてしまうことから、フォア前のレシーブには非常に繊細な技術を要する。実際に、一般の選手のみならずトップ選手ですらここを苦手だという方はとても多い。かねてより、私も本連載でサービスでフォア前を狙うことの重要性を説いてきたつもりだ。
そこで今回は、自分がレシーバーになった場合フォア前をどう処理すればいいのかについて考えてみたい。なお、今回はサービスはアップ系の回転ではなく、下回転系、およびナックルのサービスに対するレシーブとして考えていく。
このページの目次
フォア前のサービスに対する有効なレシーブ
結論として、フォア前のサービスに対して私が有効だと考えるレシーブは「ミドルへのツッツキ」だ。もちろん反対だという意見もあるだろうが、とりあえず最後まで読んで欲しい。
ミドルへのツッツキのメリット①:打点が遅れても対応できる
まず大前提として、ミスをしないということが最も大切だ。レシーブに限った話ではないが、ボールを台に入れなければお話にならない。なので、技術的難易度の低さを考えると、ツッツキが最も容易に返球できるレシーブ技術と言える。
加えて、打球点の自由度が高いこともツッツキをおすすめする理由である。フォア前は身体から遠い位置なので、相手に意表を付かて反応が遅れることは珍しくない。
フリックで強気に攻めようと思っても、バウンドしたボールが頂点から少しでも下に落ちてしまうとフリックの選択肢はなくなる。
あるいはストップで相手の強打を防ごうとしても、ボールのバウンド直後を捉えなければいけないので、より素早い判断と身のこなしが必要となる。頂点を超えた下降時を捉えてのストップも不可能ではないが、非常に高度で繊細なボールコントロール技術があってなせる技だ。
実際、2021年度の全日本選手権男子シングルス決勝では、松平健太選手が打球点の遅れたストップで戸上隼輔選手を翻弄していた。簡単そうに見えるが、常人にできるプレーではない。
以上のことから、技術的な難易度が高くなく、かつ反応に遅れても問題なく対応できるツッツキでの対応が、最もミスの少ないレシーブ技術だと言える。
ミドルへのツッツキのメリット②:相手の待ちを外せる
そして、この「ツッツキを相手のミドルへ送る」というところがミソである。サーバーがフォア前にサービスを出したとき、レシーバーのレシーブとしては「クロスへのフリック」「ストレートへのツッツキ」のいずれかが多いだろう。
実際にフォア前へのサービスを多用する私もそうである。まずはクロス、つまりサーバーのフォア側へスピードのあるフリックを想定して、フォア寄りの位置で、やや台との距離をとって待ち構える。仮にストレート、つまりバック側へのツッツキが来た場合は、バックハンドでドライブをかけてやろうと考えて待っている。
この二つのレシーブを待っていることはあっても、ミドルへのツッツキを待っていることはまずないだろう。
卓球ではとにかく強いボールを打ってガンガン攻める戦い方もあれば、たとえゆっくりのボールであっても、相手の予想だにしていないボールを送ることで優位に進める戦い方もある。
前者のように強いボールを打つ方がシンプルではあるが、その分ミスも増えてくるだろう。少し頭を使って、後者のように予想を外すボールをうまく使えるようになれば、熟練者の仲間入りと言えるだろう。
ミドルへのツッツキのメリット③:コースの予測が立てやすい
相手の予想を外してミドルへのツッツキを送れば、次のボールもある程度予想が立てやすいはずだ。
相手がフォアハンドで処理する場合は、やや打点を落としてのループドライブが、こちらのフォア側へ来る可能性が高い。うまくミドルをつけていれば、相手は打球するための空間を生み出す時間が必要となるので、速い打球点での攻撃は考えにくい。フォア側で落ち着いて待ち、しっかりとブロック、あるいはボールが甘ければカウンターをしかけてもよいだろう。
そして相手がバックハンドで処理する場合は、こちらのクロスへのバックドライブが多くなってくるだろう。このとき相手は右方向へ一歩身体を動かす必要があり、なかなかフォア側へ送球するのは難しいはずなので、しっかりと戻って、バックハンドでブロックをしよう。
あるいは相手が打ちあぐねてツッツキをこちらのバックへ送る、という選択肢も考えられる。その場合はこちらもフォア前へ寄せられているので、バック側でのツッツキ打ちをするのは時間的に余裕もなく、打てたとしてもループ性のボールになりがちだ。この場合は素直にこちらもツッツキにて対応するのが安全だろう。
まとめ
今回はフォア前へのサービスに対する安全かつ有効なレシーブ策として、ミドルへのツッツキを提案した。上級者は回り込んでチキータを狙いにいったりすることもあるが、そこまでのレベルに達していない中級者や初級者にとっては、いい打開策になるのではと思う。
レシーブのときの考え方としては、無理矢理に得点を奪いにいく必要はない。まずはなんとか相手コートに入れること、その上でなるべく気持ちよく3球目攻撃をさせないこと、この2点が重要だ。そして、自分がサービスを持ったときはしっかりと練った戦術を実行していく。それらがうまくできれば、自ずと試合の流れはあなたの方に傾いていくことだろう。
今回の内容がレシーブに悩める選手の参考になれば幸いである。
若槻軸足インタビュー記事
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