卓球ノートの重要性と挫折せず継続させる方法|頭で勝つ!卓球戦術 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:英田理志の卓球ノート/提供:英田理志

卓球技術・コツ 卓球ノートの重要性と挫折せず継続させる方法|頭で勝つ!卓球戦術

2023.09.20

この記事を書いた人
初級者、中級者向けに基本技術の説明から、戦術論や卓球コラムまでを執筆。社会人になってから5回全国に出場し、全日本卓球選手権(マスターズの部・男子30代以上の部)ではベスト64。まさに“頭で勝つ!”を体現中。
戦型:右ペン表裏

卓球では練習をしていない時間の活用法が上達スピードを左右する。そのなかで特に筆者がオススメしたいのは「卓球ノート」の活用だ。

>>こだわりは「卓球ノート」 笹尾明日香(早稲田大学)の用具紹介

なぜノートを書かないといけないのか

記憶はあてにならない。

「エビングハウスの忘却曲線」という実験を御存知だろうか。

わたしたちの記憶の保持率に関する研究で、「無意味な文字の羅列を記憶してそれを一定時間後にいくつまで思い出せるか」という実験である。

実験の結果では、20分後にはその内容の42%を忘れ、一日後には74%を忘れているというのだ。

たとえばこれを卓球に当てはめてみると、対戦相手から有益なアドバイスをもらっても、自分にとってぴったりな練習法を見つけても、1日経てばその8割近くを忘れているということだ。

いささか衝撃的ではあるが、言われてみれば納得がいくのではないだろうか。わたしたちは、日々、膨大な量の情報を頭に入れ、同時に膨大な量の情報を忘れていっている。人間は忘れる生き物だ。

ただ、実験のなかではこうも述べられている。

「記憶が残っている間に復習をすることで、記憶を定着させることが出来る」と。

ということは、忘れる前に得た情報をなんとか保持しなければならない。その為に便利なのが、「記録」だ。

>>【頭で勝つ!卓球戦術】大舞台での緊張を和らげる方法

ノートに書くべき内容

ノートに「記録」を取っておくことで、復習することで記憶に定着させることが出来るし、忘れたとしても記憶を呼び起こすことが出来る。

ノートを書くことは大事だ。しかし、今まで書いていなかったあなたは、「何を書けばいいんだろう」と思うかもしれない。

今回は具体的に筆者が卓球ノートに書いている内容を紹介する。

サーブの種類

自分で言うのもなんだが、出せるサーブの種類が無駄に多い。使えるものから使えないものまでよりどりみどりだ。しかしいざ試合となると、そのサーブのラインナップを結構忘れるのだ。

以前、試合終了後にチームメイトから、「何であの伸びる巻き込みサーブを使わなかったの?」と言われて、「しまった!」と思うことがしばしばあった。

忘れている時点で大したサーブでないことは自明の理であるが、一応出せるサーブはリストとして記録している。(自分で勝手にサーブに名前をつけたりしても面白いし、思い出すのに役立つ。)

戦術の種類

これも結構忘れる。やはり戦術の引き出しは多いに越したことはない。

・このサーブからの3球目攻撃のパターン
・このレシーブからの4球目攻撃のパターン

といったシンプルに攻める戦術から、

・このレシーブを打たせて、ブロックしてからのパターン
・わざとスピードを落としたドライブでミスを誘うパターン

などの“引きの戦術”といったものまで、幅広く持っておく方がよい。すぐに思い出せるよう、記録に残しておこう。

練習メニュー

これもやはり忘れがちだ。ノートに記録しておけば、課題練習をする際に大いに役立つ。

・自分の調子を上げる練習
・対戦相手の戦型に特化した練習・
・試合前に必ずやる練習
・ワンコースでも出来る練習

など、すぐに見て出来るよう記録しておこう。

調子が悪いときの改善点

これはぜひオススメしたい。筆者はペンホルダーの表ソフト選手である。その戦型ゆえに、いわゆる「崩れだすと止まらない」といったことが試合のなかでしばしばある。自分で自分を立て直すのが難しいのだ。

そんなときの為に、自分自身で意識するポイントを書いてある。

・ラケットの位置が低くないか
・スイングを大振りしすぎてないか
・つい足の動きがズボラになっていないか
・攻めることばかり考え過ぎていないか

こういったことをセット間などで見返せば、「あ、たしかに大振りになっているな。コンパクトに振ろう」と意識して、体制を立て直すことが出来る。

>>卓球の練習時間外の活用法7選 打てない時でも強くなれる【頭で勝つ!卓球戦術】

最も大切なことは、習慣化

ここまで読んで、ノートに書くべき内容がだいぶイメージ出来てきたのではないだろうか。しかし、今回わたしが最も言いたいこと、それは「ノートを書く・読むを習慣とすること」だ。

習慣とは、“それをすることが当たり前で、苦にならない“ことである。たとえば、「毎日お風呂に入る」ということは習慣になっているだろう。入ることが当たり前なので、「今日はお風呂に入ろうか、どうしよう」と悩むこともないだろう。

つまり、ノートを書く、読むということが当たり前で、苦にならないようにする工夫が必要なのだ。

実は筆者は、「卓球ノート」をスマートフォンのメモ帳に書いている。以前は紙のノートに書いていたが、いかんせん面倒で続かないのだ。紙に書くには、ノートを取り出して、ペンを取りだして、机か椅子か、平らな場所か、なにかしらが必要になってくる。「今はペンが無いから、帰ってから書こう」では、そのとき書きたかったことを8割方忘れている。

一方スマホならそれひとつで、立ったままでもほんの少しのスキマ時間で書ける。それに常に持ち歩いているのでいつでも読み返すことが出来る。

もちろん紙のノートにも優れた点はある。それは一覧性だ。A4ノートにしっかりと情報があれば、ぱっと目に入り込みやすい。
一方で、特定の情報を探し出す“検索性“は、スマホの方が優れている。

別に「スマホに書け」と言いたいわけではないが、どちらにせよ、最も大切なのは、「手軽さ」なのだ。卓球をするたびに、気軽に書ける、読める。

家に置いてあるPCでExcelにまとめるというのもいいが、おそらくよっぽど几帳面出ない限りは習慣となるには難しいだろう。そこに苦が伴うようでは、絶対に続かない。

>>【頭で勝つ!卓球戦術】フルゲーム11-9で勝つ為に「見せ球」の使い方

こんな書き方はNG

試合ごとにスコアを綺麗にまとめる

たまに試合や練習試合などで、対戦成績のスコアを綺麗にノートにまとめている選手もいる。それ自体は素晴らしいことなのだが、何試合分ものスコアを書き移すのは、いかんせん時間がかかるので無駄だ。

単なる作業でしかないのでそれこそスマホで写真を取って、フォルダで管理する方がよい。スコアを書いている時間があるのなら、対戦を振り返って課題点を考えて、それをささっとメモるべきだろう。

丁寧に書き過ぎる

よくノートを書き始めたころにありがちなのがこれだ。最初は誰しも気合いが入る。「よし!今日からは練習ごとにしっかりノートを書くぞ!」しかし残念ながら、その気合いは長くは続かない。

だから、簡単でいいのだ。毎回書くと決めたのなら、たとえほんの一行や二行でもいいので、絶対に書く。何よりも「手軽に出来る」ことが重要なのだ。意気込み過ぎるのは挫折のもとだ。「細く長く続ける」くらいがちょうどよい。

>>【永久保存版・平成振り返り】日本の卓球界が右肩上がりに躍進 平成21年〜31年

まとめ:記録の重要性と習慣化

情報を定着させる、あるいは保持するために、ノートに記録する。そしてそれを手軽に更新・復習が出来るように習慣化する。

この二つが、卓球ノートを書く意義と、続けるための心掛けである。

記憶は頼りにならない。記録して強くなろう。

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