カットブロックのやり方とその使い所|頭で勝つ!卓球戦術 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:丹羽孝希(スヴェンソンホールディングス)/撮影:ラリーズ編集部

卓球技術・コツ カットブロックのやり方とその使い所|頭で勝つ!卓球戦術

2023.11.23

この記事を書いた人
初級者、中級者向けに基本技術の説明から、戦術論や卓球コラムまでを執筆。社会人になってから5回全国に出場し、全日本卓球選手権(マスターズの部・男子30代以上の部)ではベスト64。まさに“頭で勝つ!”を体現中。
戦型:右ペン表裏

卓球ライター若槻軸足がお届けする「頭で勝つ!卓球戦術」。

今回は、「カットブロックのやり方とその使い所」というテーマでお話していく。

これを聞くとやはりなんといっても真っ先に思い浮かべるのは、丹羽孝希選手だろう。2017年のスウェーデンオープンで方博(ファンボー・中国)選手との試合で見せたプレーはあまりにも有名だし、2019年の世界選手権では梁靖崑(リャンジンクン・中国)選手相手にカットブロックで何点も積み重ね、フルゲームまで追い詰めた。卓球ファンなら一度は憧れ、試してみたことがあるのではないだろうか。

今回はそんなカットブロックについてのやり方とその使い所について考えていこう。

カットブロックのやり方

スイング

では実際にカットブロックに挑戦してみよう。

まず多球練習でフォア側からこちらのバックへ、ゆるめにドライブのボールを送ってもらおう。フォア側を待っている意識でラケットをなるべく高い位置で保ち、そこから自分の体の左方向へスイングする。肘の位置が動いてしまうと安定しないので、肘から先のみを動かすように意識しよう。真横にスイングするとボールに当たりにくいので、やや斜め前方へ突き出すようなイメージだ。

ラケット角度は通常のブロックのように伏せてしまうとネットミスするので、やや起こして行う。相手コートのバックサイドにうまく返球できれば成功だ。なるべく低い軌道で、さらにバックサイドを割る厳しいコースへいけば尚良しである。

捉えるポイント

捉えるポイントとしては、自分の体の中心よりもやや左側の位置で打球し、ボールの真後ろではなく左後ろをとらえるようにしよう。真後ろを捉えたのではボールの回転の影響を強く受けやすく、コントロールが難しくなるからだ。

そして打球点はバウンド直後だ。これも同じ理由で、バウンドの頂点や下降時をとらえたのでは回転の影響をうけやすいためである。台に着地してすぐを打球するのが最も簡単だ。

意識するポイント

意識としては、「強い回転をかけてやろう」と思うと力が入ってミスしやすくなるので、そういった考えは一旦置いておこう。意図としては相手の上回転のボールに対して、ブロックで同じ上回転で返球するのではなく、相手のボールの勢いを殺してゆっくりのボールにしてリズムを変えることだ。

そのため回転は二の次で、なるべく低く、あるいは浅く返球ができれば、それだけで十分にラリーに緩急をつけることができる。そして次のボールのほとんどはクロスへのツッツキか、持ち上げるドライブが来るので、しっかりと待ち構えて狙いにいこう。

カットブロックの使い所

カットブロックを技術のレパートリーに加えるにおいて、注意してほしいことがある。それは、「カットブロックをしよう」と思えば思うほど難しくなるということだ。

というのも、シェークハンド選手のバックハンドのラケットの動きは、左から右である。下回転に対するバックドライブも左から右。上回転に対するボレーも左から右、チキータも左から右だ。ただしこのカットブロックの場合は右から左の動きになり、通常とは全く逆になるわけだ。

つまり、他の技術の延長線上にないので、「カットブロックをやろう」という意識でボールを待ってしまうと、とっさにそれ以外の技術に切り替えようとしてもうまくできないという事態に陥るのだ。

例えば丹羽選手のカットブロックのシーンを見返してみると、そのほとんどが同じパターンであるということがわかる。相手選手(右利き)がバックサイドからのボールを打つ場面でのクロス待ち、つまり丹羽選手がフォアで待っているところへ、バックへのストレートを突かれたという状況だ。このとき丹羽選手としては逆を突かれた形であり、とっさに腕を伸ばして最短距離でバック側へラケットを持っていく。それがごく自然な形でカット性の打球となり、相手は意表を突かれるというパターンだ。

このクロスでフォアを待っていたところ、ストレートを突かれてとっさにカットブロックで対応する、というパターンが、どんな選手であっても最も現実的な使い所ではないかと思われる。

はじめから「ようし、カットブロックをしてやるぞ」と思うとなかなかうまくいかないことが多いのだ。

ペンホルダーの場合のカットブロックとは

ただし、ペンホルダーの場合は考え方が変わってくる。

ペンホルダーの表面、つまりバックショートのときのラケットの動きは右から左だ。そしてペンでカットブロックをするときも、シェークと同様ラケットは右から左へ動かす。ということは、ショートでプッシュするときもブロックするときも、そしてカットブロックをするときもすべて同じ動かし方でまかなえるというわけだ。

さらに言えば、フォアハンドを打つときもラケットは右から左だ。そして体重移動も右から左であることから、ペンホルダーの表面の技術はすべて右から左方向へのラケットの動きと体重移動で行うことができ、技術のつながりが非常にスムーズになるのだ。これはシェークハンドにはないペンならではの利点であると言えるだろう。

まとめ

いかがだっただろうか。今回はカットブロックのやり方について考えてみた。

おさらいすると、まずは強い回転をかけるというよりは、ボールの勢いを殺してラリーのリズムを変えるという意識で行うということ。そして行う際は、ある程度使用するシーンを限定しておく必要があるということだ。

卓球には無数の技術がある。新しい技術を覚えるのは非常に素晴らしいし、ぜひ挑戦してほしい。しかし、その技術が練習でできるのと試合でできるのとは全く別のお話だ。なにせ試合はどこにどんなボールが来るかわからない。ひとつの新しい技術を取り入れようとするあまり、これまで持っていた他の技術との連動がうまくいかなくなり、試合で勝てなくなる、というのはよくある話だ。

今の自身のプレースタイル、そして課題や今後の展望等もふまえて、今回のカットブロックについても自分のレパートリーに加えるかどうかを検討して頂ければと思う。

若槻軸足インタビュー記事

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