戦型:右ペン表裏
卓球ライター若槻軸足がお送りする「頭で勝つ!卓球戦術」今回は「回り込みのメリット」というテーマでお話していく。主に中学生など卓球を始めたばかりで経験の浅い方向けの内容になっている。
私は普段、卓球の経験が1~2年程度の中学生を指導する経験がある。そこでよく感じるのだが、多くの選手は回り込みをしないのだ。つまり、フォアに来たボールはフォアハンド、バックに来たボールはすべてバックハンドで返球する、ということしかやらないのである。
それが悪いことではない。ひと昔前の卓球はオールフォア全盛であったが、現代の高速卓球では両ハンドでなるべく早いテンポで打つのがトレンドである。
だがしかし、それでもバック側のボールを回り込んでフォアハンドで打つということには、様々な良い面があるのだ。今回はそんな回り込みのメリットや重要性について、一緒に考えていこうと思う。
このページの目次
回り込みのメリット
フォドライブの習得につながる
卓球で最も基本的かつ重要な攻撃の技術と言えるのが、フォアハンドドライブだろう。ほぼ全ての選手がこのフォアドライブを練習して覚えていくわけであるが、上手く習得できなかったり、いびつなフォームが染み付いてしまったりといったことがある。
その要因のひとつとして考えられるのが、卓球台との関係だ。基本的にはフォア側、つまり卓球台の右側で打つわけだが、そうなると卓球台が邪魔になり、踏み込みやスイングにどうしても制限が出てくるのである。
写真:大島祐哉(木下グループ)/撮影:ラリーズ編集部
一方バックサイドで回り込んでフォアドライブを打つ場合は、卓球台の干渉を受けないので、大きく踏み込んで打つことができ、フォームやスイングの自由度も高いと考えられる。そのため、回り込んでのフォアハンドドライブの方が、無理なく良いボールを打てるのである。
実際に、フォアハンドドライブがなかなか上手に打てない選手にバックサイドでドライブをさせてみると、驚くほど良いボールが打てたというケースもある。
もしあなたがフォアハンドのドライブを苦手だと感じているのなら、回り込んで打つ練習をしてみてはどうだろうか。
ボールに合わせて足を動かす意識が身に付く
卓球においてはラケットを持つ手の動作に注目されがちであるが、それと同様もしくはそれ以上に大切なのが、足の動きだ。
上手い選手の試合を見ると、たとえバック対バックで同じコースでの打ち合いであっても、絶えず足は少しずつ動いているはずである。
ゴルフなどとは違って卓球のボールは常に動いており、毎回少しずつ違う場所に飛んでくる。自分の打ちやすいところにボールが来るなんてことはないので、自分がボールに合わせて調整しているわけだ。
そうした「ボールに合わせて足を動かす意識」を持っていない選手が、初心者などには非常に多い。
どうしても手(ラケット)を先に伸ばしてボールに合わせようとするのだ。それでも返球することはできてしまうのだが、より上手になりたければ、しっかりとボールに合わせて足を動かし体を運ぶということが重要になってくる。
写真:曽根翔(T.T彩たま)/撮影:ラリーズ編集部
当たり前だが、バック側に回り込むという動作は、ボールに合わせて足を動かすということに他ならないので、自然とその意識が身につくことになる。
もちろん相手の威力のあるボールに対しては、手を先に出さないと間に合わないということはある。だが下回転のツッツキなど比較的時間があるときは、足を動かし体を運んでから打つ、ということを早い段階で身に付けておくべきである。
大きな動作が身に付く
また同じく、大きく足を動かすことも自然と身に付くはずだ。
卓球では小さな歩幅での細かい足運びが重要ではあるが、ときには大きな歩幅で動くことも大切になってくる。いわゆる「飛びつき」と言われる動作だが、これができない選手が多い。特に女子選手は高校生でもこれができないケースをよく見かける。
飛びつきという動作を個別で練習することは、意識をしない限りなかなか無いだろう。だが回り込みをすれば、フォアに返球されて大きく動いて追いかけるといった、飛びつきをしなければならない状況が出てくるわけだ。
飛びつきも回り込みと同様に非常に大切な動作なので、ぜひセットで習得したい。
まとめ
今回は卓球の基本的な足の使い方、「回り込み」のメリットについて考えてみた。当然戦術的なメリットは多くあるのだが、今回はより基本的な技術や動作の習得といった視点でのメリットをお話であった。
もちろんこれらをふまえた上で、試合では極力回り込みをせずに両ハンドで対応していくスタイルを選択することは全くもって問題ない。
しかし、「できるけどやらない」のと「できない」のとは大違いである。どんな選手であっても、回り込みという動作は必ずできるようにならないといけない。
初心者の方、あるいはレディースの方。バック側に来たボールはバックハンドで打つ、と自分の中で決めつけてはいないだろうか。今回の記事を参考に、ぜひ回り込みを練習して、習得してみることをオススメする。
若槻軸足インタビュー記事
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