戦型:右ペン表裏
卓球ライター若槻軸足がお送りする「頭で勝つ!卓球戦術」今回は、「回り込みレシーブの4つの重要性」ということをテーマにお話していきたいと思う。
もはや言うまでもなく、チキータという技術の登場によりレシーブの概念は変わったと言っても過言ではない。これまで圧倒的にサービスを持っている側が有利だったのが、それが逆転するとすら言われていたほどにだ。
そんなチキータ全盛の時代と逆向する話になるのだが、まあ最後まで読んでみてほしい。今回の内容は、バックサイドへの短いサービスに対して回り込んでフォアハンドで処理をしましょうというお話だ。
このページの目次
回り込みレシーブの4つの重要性
➀レシーブの自由度が高い
まず考えられるメリットとして、レシーブの自由度が高いということがある。ペンでもシェークでも、返球ができる角度での手首の可動域はやはりフォアハンドの方が広いと言える。
相手の逆をつく流し、一撃の威力のあるフリック、あるいは繊細なタッチのストップ。これらはやはりフォアハンド特有の技術であると言えよう。
写真:吉村真晴(TEAM MAHARU)/撮影:ラリーズ編集部
チキータこそないが、フォアハンドでのレシーブの方がよりバリエーションに富んだ返球をすることができるわけだ。
さらに言えば、フォア前のボールをフォアハンドでレシーブするときと、バック前のボールをフォアハンドでレシーブするときを比べたら、圧倒的に後者の方がやりやすいはずだ。理由は簡単だ。
フォア前は卓球台に覆いかぶさるような形になるので、身体の使い方が制限されることになるが、バック側ならがっつりと回り込めるので、大きく身体を使うことができるからだ。
しっかり台に入り込んだレシーブは、相手としても打たれるコースが読みにくいはずである。
➁球質に慣れていない
今の卓球ではバック側はバックハンドでのレシーブ、フォア側はフォアハンドでのレシーブというのが主流だ。あるいはフォア側も動いてバックハンドを使って処理する、チキータをするといったことも珍しくなくなってきた。
逆に減ってきたのがこのバック側をフォアハンドで処理するレシーブだ。バックハンドのチキータと、フォアハンドのフリック、球質が違うのはもちろんである。
写真:張本智和(智和企画)/撮影:ラリーズ編集部
また自分がサーブを出して、相手にチキータをされてからの展開というのは練習でもよくある光景だろう。だが、回り込んでフリックされてからの展開の練習をしている人はなかなかいないだろう。
相手が普段受けていないボールを送れるというのはそれだけで大きなアドバンテージになり得るはずだ。
➂プレッシャーを与えられる
さらには上記の理由も相まって、こちらが回り込む姿勢を見せているだけで、プレッシャーを与えられるという効果もある。隙あらば攻め込んでやるぞという意識やオーラのようなものが相手に伝わるのだ。
またレシーブの回り込むことを考えると、かなりバックサイド寄りの位置に構えることになる。
写真:宇田幸矢(明治大)/撮影:ラリーズ編集部
そうすると相手はバックへロングサーブを出そうという気にはなかなかなれないであろう。そしてフォア側をがら空きになることで相手に心理的な揺さぶりをかけることにもなる。
サッカーのPKで、キーパーが真ん中ではなくどちらかに寄って構えていると、非常に嫌な感じがしないだろうか?
➃4球目の足運びがスムーズになる
さらにはレシーブから回り込みをすることで、4球目以降の足の運びが驚くほどスムーズになるのである。これは人間の身体の性質である「止まっている状態から動き出す際には時間がかかる」ということが関係している。
つまり、「静→動」よりも「動→動」の方がスムーズかつ素早い身のこなしが可能となる。多くのトップ選手達を観察すると、レシーブの際に
相手が打球するよりも少し前から足を動かしているのが分かるだろう。
写真:張本智和(智和企画)/撮影:ラリーズ編集部
そのためバックハンドで処理するよりも、フォアハンドで回り込んだ方が、戻りの動きも必要な分、絶えず足を動かしていることになる。それが次の4球目への動きにスムーズにつながるわけである。
まとめ
今回はレシーブにおける回り込みの重要性というテーマでお伝えしてみた。もちろんチキータを否定しているわけではなく、全てレシーブはフォアハンドでやるべきだということを提唱したいわけでもない。
ただときとして時代の流れに逆らうことによるメリットがあるのも事実だ。選択肢のひとつとして取り入れてみるといかがだろうか、といった趣旨である。参考になれば幸いである。
若槻軸足インタビュー記事
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