サービスの質を高める2つのメリット|頭で勝つ!卓球戦術 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:岡田崚(岡谷市役所)/撮影:ラリーズ編集部

卓球技術・コツ サービスの質を高める2つのメリット|頭で勝つ!卓球戦術

2022.08.10

この記事を書いた人
初級者、中級者向けに基本技術の説明から、戦術論や卓球コラムまでを執筆。社会人になってから5回全国に出場し、全日本卓球選手権(マスターズの部・男子30代以上の部)ではベスト64。まさに“頭で勝つ!”を体現中。
戦型:右ペン表裏

卓球ライター若槻軸足がお届けする「頭で勝つ!卓球戦術」。今回は「サービスの質を高めるメリット」というテーマでお伝えしていく。

サービスでの重要な考え方

卓球におけるサービスは「一球目攻撃」と呼ばれることもあり、その重要性については疑いの余地はない。それゆえ、サービスについての考え方は千差万別で、「絶対にこうだ」という正解もない。

だが、筆者自身の考え方は一貫している。それは様々な種類で色々な回転のサービスを出せることよりも、まずはひとつひとつのサービスの「質」を高める方が重要だ、ということである。ここでの「質」は、サービスの高さ長さ、それにスピード、加えて安定性といった指標である。

要はひとつのサービスを、「できる限りネットスレスレの低さで」、「しっかりと相手コートでギリギリ2バウンドする短さで」、「ボールのスピードも速いサービス」を、「何本でも安定して出せるようになろう」ということである。あるいは、ロングサービスなら「限りなく速く」、「相手のコートのエンドラインに着地する深さで」というわけだ。

もちろん、卓球のサーブは多種多様で、その多様性が卓球の魅力であるということは否定しない。YGサービス、しゃがみ込みサービス、アップダウンサービス等々、様々なサービスに取り組む姿勢自体はとても素晴らしい。新たな技術にどんどんチャレンジして、習得できたときの高揚感は何もの変え難い。

だがしかし、限られた練習時間の中で「強くなる」ための最短ルートを辿るには、ひとつのひとつのサービスの質を極める方がより近道であると私は考えている。

では、実際にサービスの質を高めることには、どんなメリットがるのだろうか。

サービスの質を高めることのメリット①:強いボールが返ってこない

基本的な事柄として、サービスの質を高めることは相手の強いレシーブを阻止することに繋がる。どんなに強烈な回転量で、どんなに複雑なモーションで分かりにくく出したからといって、ネットから10cm高いボテボテのサービスでは一発で強打を決められておしまいである。

ショートサービスのつもりでも、相手コートで2バウンドしないサービスになってしまっては、ドライブで先手を取られてしまう。相手の意表をつくロングサービスも、緊張した場面でスピードが緩くなってしまっては単なるチャンスボールを与えることになってしまう。

例えシンプルなサービスであっても、しっかり質を担保できれば、一発で抜き去られるような強力なレシーブはなかなか返ってこないはずだ。まずもっての優先順位はそこである。

さらに言えば、サービスの「質」は自分ではなく相手が決めるものだ。自分としては低く出しているつもりでも、レシーブをする側からしたら結構高い、ということも往々にしてある。このあたりは決して自分ひとりで完結せず、チームメイトに厳しくチェックをしてもらうことをおすすめする。

普段の練習の中でも、甘いサービスの場合は積極的に攻撃するなど、お互いに厳しい目で日々の練習に取り組むことが、サービスの「質」の向上に繋がるだろう。

サービスの質を高めることのメリット②:経験則が溜まり予測が立てやすくなる

今回の記事で最も伝えたいことが、経験則が溜まるということである。

我々が知覚しうる限り、この世界の「回転」という概念の範囲は360度しかなく、ボールの回転も当然その範囲を超えない。そのため、「この回転のサービスをこのコースに出したら、大抵はこういうレシーブが返ってくる」というセオリーがある程度決まってくるはずである。

(ただし回転の性質や適切なラケット角度、セオリーといった知識を習得していないレベルはその限りではない。)

例えば、「バックに逆横回転を出すとほとんどはバックサイドに返球されるな」とか「バック前に下回転のショートサービスを出したら7割くらいはバックにツッツキで3割はフォア前にストップだな」とか「バックのサイドを割るコースに順横のロングサービスを出したらほぼバックに返ってくるな」などである。

このように、自分の中でのある程度の正解があると3球目攻撃を待ちやすくなるため、非常に優位に試合を展開できる。

だがこれが、例えばショートサービスが3回に1回は台から出てしまうのなら、当然ドライブをかけられる可能性が出てきてしまう。ロングサービスなら、バックのコーナー付近にサーブを出してしまうと、フォアストレートに返球される可能性が高まってしまう。また、精神的に弱気な場面で、安定重視で入れにいこうとして球足が遅くなってしまえば、狙い打たれることもあるだろう。

こうなると、自分の経験則の域を超えてしまうわけである。

ある程度自分が思い描いたプレーをしたいと思うのならば、ひとつひとつの技術の質を高めることが不可欠である。そしてそれら技術の中で最もシンプルで最も重要なものが、サービスなのである。

逆に経験則が溜まっていないサービスの危険性も併せてお伝えしておきたい。

例えば、新しく習得した必殺サービスを重要な場面で使いたい気持ちはわかる。だが、「得点になるかもしれないけれど、返球されたときはどんなボールが来るか分からない」という状態は非常に危ない。

そうなると、ただサービスを「出しただけ」で、3球目への準備が全くできていないということになる。それこそ「レシーブされたら知りませんよ」という状態だ。これではギャンブルと言わざるをえない。

そのため、新しいサービスも試合の序盤や練習試合等、安全な場面で相手のレシーブを見て、経験値を貯めていくことが大切である。

まとめ

今回はサービスの「質」に関する考え方についてお伝えしてみた。

理想を言えば、あらゆる種類の回転で、様々なモーションを駆使しながら、低く、短く(あるいは深く)スピードのあるサービスを、どんな場面でも繰り出せるのがベストである。サービスに限らずとも、ドライブ、スマッシュ、カット、ロビング、チキータ、カットブロックなど、様々な技術が使えれば当然強い。

だが、私を始めとする多くの読者の方は、限られた時間や環境の中で、取捨選択をしながら勝利に向かって努力を重ねていることと思われる。であれば、優先すべきは何かということを今一度考える必要があるだろう。

自分にとって勝利を掴むために取るべきものと捨てるべきものを考えて、しっかりと取り組んで頂ければと思う。

若槻軸足インタビュー記事

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