「試合勘」について考える|頭で勝つ!卓球戦術 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:松平健太(ファースト)/撮影:ラリーズ編集部

卓球技術・コツ 「試合勘」について考える|頭で勝つ!卓球戦術

2023.04.23

この記事を書いた人
初級者、中級者向けに基本技術の説明から、戦術論や卓球コラムまでを執筆。社会人になってから5回全国に出場し、全日本卓球選手権(マスターズの部・男子30代以上の部)ではベスト64。まさに“頭で勝つ!”を体現中。
戦型:右ペン表裏

卓球ライター若槻軸足がお送りする「頭で勝つ!卓球戦術」今回は、「試合勘について考える」ということをテーマにお話していきたいと思う。

今回は「試合勘」という言葉を取り上げたい。これは卓球以外のスポーツ競技にも用いられる言葉であり、経験や直感、状況判断能力などを駆使して相手を制するための力のことである。

これは単なるテクニックや体力だけでなく、心理的な要素も大いに重要な役割を果たす。「久しぶりの試合で試合勘を取り戻せず負けてしまった」「彼は類まれなる試合勘を持つ選手だ」などというように用いられる。


写真:丹羽孝希(スヴェンソンホールディングス)/撮影:ラリーズ編集部

「勘」という言葉からも分かるように、これは非常に抽象的でつかみどころのないものである。と同時に勝利を得るためには必要不可欠な能力であるとも言える。

今回はそんな試合勘というものについて少し考えてみる。

試合勘の重要性について

試合勘は勝利のための条件として非常に重要な要素である。テクニックやフィジカルで相手を圧倒できる実力差があれば話は別だが、ある程度近い実力の者同士であれば、試合勘に長けた方が勝つといってよいだろう。

たとえば日頃からフットワーク練習に勤しみ、足を使った攻めなら誰にも負けないという選手もいるだろう。あるいは非常にサーブが得意で、ありとあらゆる種類のサーブを駆使できる選手もいるだろう。


写真:吉村真晴(TEAM MAHARU)/撮影:ラリーズ編集部

ただそれらの要素が「試合に勝つ」とは直接的に結びつかないこともまた事実である。試合勘を磨くためには、数多くの試合をこなして経験を積んでいくほかない。

卓球の試合勘がどういったものか

試合の終盤で勘が働いてばっちりとハマる、という経験をしたことはないだろうか。なんとなくバックにロングサーブが来そうな雰囲気を感じ取って、回り込みをしたらまさにその通りのサーブが来て、打ち抜いてレシーブエース、といったことだ。

「予測」や「読み」といった言葉も使われるが、試合全体を通してより大きな視点で捉えたときに試合勘という表現ができる。


写真:早田ひな(日本生命)/撮影:ラリーズ編集部

たとえば緊張した場面でどのサーブを選択するか、ということは言わずもがな非常に重要である。これまでの効いていたサーブを出すのか、あるいは少し変化を加えるのか、はたまた今までに一本も出していなかったサーブを使うのか、といった具合だ。

当然レシーブの場面でも、様々な選択肢の中からその瞬間ごとに判断と選択をしなければならない。ストップで安全にいくのか、フリックで攻めにいくのか、はたまたツッツキを送って打たせる展開にするのか。

ラリーの中でもリスクを負って攻めるべきか、安定性を重視するべきか、といったことは試合の終盤になればなるほど大切になってくる。

あるいはあえて打たない、という選択も時として非常に効果的である。強く打つ方が良いとされがちだが、ときにはその強く打つことが「逃げ」のような場面もある。あえて打たない。我慢をして入れる。

それも非常に勇気がいることだ。「強気で入れにいく」こういったことも試合勘と呼ばれる能力で重要な役割をはたすことがあるわけだ。


写真: 張本智和(智和企画)/撮影:ラリーズ編集部

試合勘を‟鍛える”と‟取り戻す”

ここまでお話してきたが、では実際にこのつかみのどころない能力についてどう向き合えばよいのだろうか。私は2つの観点があると考える。ひとつは‟鍛える”ということだ。これは一朝一夕にできるものではない。

当然たくさん試合の経験を積む必要があるのだが、それは様々なレベルや年代の選手と対戦し、なおかつ勝つか負けるか分からない接戦の中で磨かれるものだ。

徹底して効いている戦術を使うのか、それとも相手を翻弄するひらめきを出せるか。そういったことは自分が様々な試行錯誤を繰り返すことで磨かれる。

あるいは他人のプレーを見て学べることも多いにあるだろう。自分と近い戦型やレベルの選手、もしくはYouTubeなどで上級者の戦いを見て、活かせる部分が見つかれば積極的に取り入れてみよう。


写真:伊藤美誠(スターツ)/撮影:ラリーズ編集部

もう一方の‟取り戻す”という観点については、私自身も頭を悩ませるところである。なにせ試合に出るのは年に数回、練習も今では2~3ヶ月に1回程度となってしまった。

これを読んでいるあなたも学業があり、仕事があり、家庭があり、と様々な環境の中に置かれていることだろう。卓球が生活の中心という人は多くないはずだ。となると限られた練習時間、試合の機会では、試合勘が失われていくのも無理はない。

勘を取り戻すためには当然ながら試合数を重ねるのが必要である。あとは取り戻す為の工夫として、言語化して記録しておくというのも効果的だろう。

競った場面で使うサーブだったり、戦術だったりをノートや端末に書き記しておいて、ゲーム間に確認できるようにしておくだけでも非常に役立つだろう。

あるいはそういった情報をチームメイトと共有しておくのも良いだろう。ベンチコーチの際には有用なアドバイスをもらえるかもしれない。

まとめ

今回は試合勘という非常に抽象的だが、勝つ為に大切な能力についてお話してみた。卓球では、「上手であること」や「技術を持っていること」と、「試合に勝てること」は直接的には結びつかない。相手の心理を読み合い駆け引きをする、さらにそれを自身のメンタルも影響する中で実行できるか。

そしてその瞬間ごとのひらめきで、相手の裏をかくプレーができるか。そういったことすべてを含めて、実力と呼べるのだ。卓球はそれだけ奥が深いスポーツである。今回はそれらを試合勘という言葉として表現した。ぜひ今後、少し意識してみてはいかがだろうか。

若槻軸足インタビュー記事

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