シンプルかつ効果が大きいシステム練習を紹介|頭で勝つ!卓球戦術 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:京都大学卓球部/撮影:ラリーズ編集部

卓球技術・コツ シンプルかつ効果が大きいシステム練習を紹介|頭で勝つ!卓球戦術

2022.09.22

この記事を書いた人
初級者、中級者向けに基本技術の説明から、戦術論や卓球コラムまでを執筆。社会人になってから5回全国に出場し、全日本卓球選手権(マスターズの部・男子30代以上の部)ではベスト64。まさに“頭で勝つ!”を体現中。
戦型:右ペン表裏

卓球ライター若槻軸足がお届けする「頭で勝つ!卓球戦術」。今回は私が現役時代、インターハイ予選前の半年間でやり込んだ練習方法についてお伝えしたい。

その練習とは、「下回転サービスをバックに出し、バックにツッツキレシーブをしてもらい、ミドルに3球目攻撃をしてからミドル対バック3分の2」というものだ。これを現役時代、特に引退前の半年間はとにかくやり込んだことを覚えている。

練習としては簡単なものだが、やっている人はおそらくあまりいないだろう。本記事を参考にして、ぜひ実践してみてほしい。

ポイントは「ミドル攻めを無意識化する」こと

まず最初に理解しておいていただきたいのが、この練習の趣旨は「ミドル攻めを無意識にできるようにする」ことである。

卓球における基本的なコースは、バック、フォア、ミドルの3種類となっている(厳密にはフォアミドルやバックミドルというのもあるが、難易度が高いため今回は割愛する)。練習や試合ではどうしてもバックかフォアの2択になりがちだが、3コースの中で最も有効なコースはミドルであると私は考えている。

理由は二つある。前提として、狙うコースはフォアでもバックでもできる限り卓球台の端が良いとされているが、端を狙う場合、少しのコントロールミスが命取りになってしまう。しかし、ミドルであればその心配がないのだ。これが一つ目の理由だ。

そして二つ目は、相手がミドルのボールに取り慣れていないということだ。普段の練習の中でミドルボールへの対応を練習している方はおそらくほとんどいないだろう。よってそのまま得点になるか、あるいは返球されても厳しいボールはなかなか返ってこないことが多い。

ミスをするリスクを最小限に留めて最大の効果を得られるため、ミドルへのボールは非常に有効なのだ。

ただし、これを試合の中で咄嗟に行うことは実は難しい。私もベンチコーチに入ったときに、「もっとミドルを上手に使おう」とアドバイスすることがあるが、残念ながらそれが即座に実行されることはほとんどない。その理由は簡単で、普段からミドルを攻める練習をしていないからだ。

練習でしていないことが試合で突然できるわけがない。だからこそ今回お伝えする練習内容が重要となるのだ。

そして、「意識的に狙う」よりも「意識はしていないが勝手にミドルへボールがいく」方が良い。「基礎打ちはなるべくサイドを割るコースを狙って、何も考えずとも厳しいコースへ打球が飛ぶようにすべき」という話を過去に紹介したが、それと同じで、意識せずともミドルへ打球できる身体の使い方を染み込ませておいて、ミドル攻めを無意識にできるようにするわけである。

そのための練習が冒頭で紹介した練習だ。

練習の具体的な内容

では、実際にやってみよう。

まずはサービスを出して、バックへ来たレシーブを回り込んで3球目攻撃する。このときのサービスは下回転サービスと書いたが、バック側へレシーブが来ることを想定したサービスであれば自分が一番得意なサービスで問題ない。

その後の回り込んでのフォアハンド3球目攻撃だが、私の場合は表ソフトのため「いけそう!」と判断したらスマッシュ、無理ならドライブで、相手のミドルへ叩き込む。このときは、当然のことながら試合を想定して「得点するぞ!」という意識で打球する。

そして、相手のブロックはこちらのバック側3分の2にランダムに返球してもらい、自分はそれを全てフォアハンドで攻撃する。このときは、足を動かしながらも、しっかりとミドルを狙っていこう。

これは実践を意識した練習であり、ラリーを続けるための練習ではない。もちろん、全てのボールを100%の力で打つ必要はないが、「点を奪ってやるんだ」という意識を持ちながら、そしてきっちりとミドルを狙うことを意識しよう。

「ミドルを狙うだけでしょ?」と侮るなかれ。この練習をやってみると、正確にミドルにボールを集めることが意外と難しいことに気づくだろう。それだけ、普段やっていないことをやるのは大変だということである。

ブロック側の意識

最後に、本練習におけるブロックをするプレーヤーの意識についてお伝えする。

まずは台の真ん中に立って、バックハンドブロックでしっかりとミスせずに続けられるようになろう。相手の練習なので簡単にミスをしないというのは大前提だ。

そして、慣れてきたら立ち位置を通常の位置に戻して、バックハンドあるいはフォアハンドのブロックで対応しよう。試合の中でミドルが攻められたことを想定して対処するということだ。「フォアハンドで処理しないといけない」ということはなく、得意な方でオーケーだ。もちろんフォアとバック両方で対応できるようになれば理想である。

何よりも大切なのは、「ミドルに来る」と決まっているわけではないので、「全面に来る」という意識を持っておくことだ。そうしないと「練習のための練習」になってしまうので注意しよう。

そして細かい足使いも重要だ。自分のブロックが相手のバックサイドへ厳しくいったのなら、次球は自分のクロスに厳しく来ることを想定して、立ち位置をややバック側へ寄せるというように、1本ずつ足を動かすことも必ずしておきたい。

まとめ

いかがだっただろうか。今回は私が実際にやり込んだ練習メニューをお伝えした。本練習の応用として「レシーブをフォアに送ってもらって、相手のミドル対こちらのフォア側3分の2」という練習も併せてやってみると良いだろう。もちろんフォア側へレシーブが返ってくることを想定したサービスから、実践的なパターンでやることが必要となる。

現役時代、色々な練習メニューをやってきたが、この練習が最も試合に活きたと胸を張って言える。ミドルを攻めることは、特に中級者くらいのレベルでは非常に有効であるが、なかなか徹底まではできていないのが現実だろう。少ない練習時間で効率的に強くなるためにも、ぜひ取り組んでみてほしい。

若槻軸足インタビュー記事

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