戦型:右ペン表裏
卓球ライター若槻軸足がお届けする「頭で勝つ!卓球戦術」
今回は、「格下の選手に負けないために」というテーマでお話していく。
長年卓球をやっていると、過去に対戦したことのある選手と試合をする機会も多くなってくる。すると自分と相手との実力差を推し量り、「この選手となら自分の方が実力が上だろう」と考える、つまり相手が格下であると判断をしてしまうことが誰しもに起こりうる。
ただそういった場合には十分注意しなければならないというのが今回のテーマの趣旨である。
試合が始まる前に、「自分が勝つだろう」ということを思ってしまっていると、いざ試合になったときに様々な弊害が生じてくるのだ。今回はそんなところにフォーカスをあてて考えていく。
このページの目次
格下の選手に負けないために①格下と思った時点でアウト
自分が上だと判断してはいけない
まず格下選手に負けてしまうことの要因としては、冒頭に話したとおり相手との実力差を推し量り、自分が上だと判断してしまうことにあると考える。過去の対戦成績であったり、県でベスト8に複数回入っているといった客観的な情報などから判断することもあるだろう。
あるいは初見の相手であっても、試合前練習の際のフォームや身体の使い方などから、「見た目からして上級者とは考えにくい」といった選手もいたりする。そういった情報から自分が勝てると判断する経験は、おそらく多くの方に身に覚えがあるのではないだろうか。しかし言わずもがな、どちらが試合に勝つかは最後まで決して分からないのだ。
「舐めプレー」「魅せプレー」はもってのほか
自分が勝てると思うこと自体は別に悪いことではない。自信を持つのはむしろいいことだ。しかし過信はよくない。勝てると信じ込むことによって、余裕のあるいわゆる「舐めプレー」「魅せプレー」といったことをやってしまう選手もいる。こういったことで得点を相手に与えてしまうと、あっという間に形勢が厳しくなる。
かつての1ゲームが21点制だった頃は、大差がついた状態から逆転をするのは至難の技であった。だが11点制になり、サーブもかつての5本交代から2本交代になった今のルールでは、大逆転が起きる可能性を常にはらんでいる。舐めプレーなどをして相手に得点を与える余裕など微塵もないはずなのだ。
自分が勝てると思っていると、いざ雲行きが怪しくなってきたときに冷静な立て直しができない。それまでろくに戦術を考えずにやっていたのならなおさらである。情報を取っていなければ、勝てる試合も勝てなくなってしまう。終盤になって急に慌てたところで遅いのだ。
格下の選手に負けないために②受け身の姿勢
油断が生む受け身
自分が勝つだろうと少しでも思ってしまうと、どうしても受け身の姿勢になりがちだ、これは意識的にというよりは、知らず知らずのうちにプレーが受け身になっている、という方が近いだろう。
ひいてはこれも、「相手よりも自分の方が実力が上なのだから、特段頑張らなくとも普通にやっていれば勝てるだろう」と、心のどこかで考えてしまっていることが要因と考えられる。
実は筆者自身も昔からそのような傾向があった。高校時代、エースという役割だったにも関わらず、インターハイ予選の団体戦で、無名の選手に負けてチームの士気を下げてしまうという事態があった。
大事なのは挑戦者の気持ち
そのようにならないための方法は、自分が挑戦者の気持ちで戦うということだ。相手選手も自分の方が実力が下思っているのなら、リスクを冒して果敢に攻めてくるはずだ。そこへ受け身の姿勢でいると、相手が波に乗ってきたときに対処できなくなり、そのまま押し切られてしまうことになる。
スポーツの世界ではよく言われることだが、やはり精神的に苦しいのは、追う立場よりも追われる立場の方だ。だから多くの選手が「挑戦者の気持ちで」と口にするのだ。なので、「かかってきなさい」という受身の姿勢ではなくて、「倒してやるぞ」という向かっていく気持ちで戦うことが大切なのである。
まとめ
今回は格下の選手に負けない為にというテーマでお話してみた。
相手の方が実力が上だとか下だとかいったことは関係なく、ただ愚直に目の前の1本を取ることに全力を出すこと、そして、試合の中でしっかりと相手の癖や傾向といった情報を収集し、勝つための戦術を考え、遂行する。それが格下の選手にも負けずにしっかりと勝ちきる方法なのだ。
思い当たる節のある方はぜひ、今回の内容を参考にして頂ければ幸いである。
若槻軸足インタビュー記事
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