打たれる場所に先回りするための方法|頭で勝つ!卓球戦術 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:大島祐哉(木下グループ)/撮影:ラリーズ編集部

卓球技術・コツ 打たれる場所に先回りするための方法|頭で勝つ!卓球戦術

2022.11.04

この記事を書いた人
初級者、中級者向けに基本技術の説明から、戦術論や卓球コラムまでを執筆。社会人になってから5回全国に出場し、全日本卓球選手権(マスターズの部・男子30代以上の部)ではベスト64。まさに“頭で勝つ!”を体現中。
戦型:右ペン表裏

卓球ライター若槻軸足がお届けする「頭で勝つ!卓球戦術」。今回は「打たれる場所に先回りするには」というテーマでお伝えしていく。

卓球はよく「反射神経が必要なスポーツだ」と言われるが、これは半分正解で半分間違いである。なぜなら、人間の反射神経だけで打球に対応するのは限界があるからだ。なにせ卓球台はとても小さく、相手がボールを打ってから自陣に到達するまで、時間にして0.5秒もないのだ。

さらに身長が高くリーチがある選手なら対応できるかと思いきや、そうでもない。私自身、身長が180cmあり腕も長いほうだが、卓球台全てにラケットが届くわけではない。

そこで必要なのが、「予測」という能力だ。さらに言えば、予測をするだけでは意味がなく、予測した位置に身体を運ぶ動作が必要になる。予測と動きはセットだ。

先日も世界選手権が行われていたが、トップ選手達のプレーを見ていると「打たれる場所に先回りして動く」ということを彼らはみな当たり前にやっている。ダイナミックなスーパープレーに目が行きがちだが、どんな場面でも自分が打球すると同時に、細かく足を動かして位置取りを調整している。だからこそあれだけラリーが続くのだろう。

そういったトップ選手たちの細かい動きも参考にしながら、我々でもできる部分は学んで取り組んでいこう。

クロスのコースへ先回り

では早速、具体的なやり方について一緒に考えていく。

基本的には相手からの返球はクロスで待つ、というのがセオリーである。理由としてはストレートよりもクロスの方が距離が長く、ミスをする確率が低い点が挙げられる。

また、クロスは卓球台に対して斜め方向(自分の体から逃げていく)のボールなので、自分の身体が台から離れていればいるほど、クロスに来たボールを拾うためには大きく動く必要が出てくるというわけだ。

具体的な展開で考えると、相手のバック側へ送ったボールがクロスであるこちらのバック側に返ってくると予測し、身体を少しバック側へ寄せて待つ、という具合だ。もしくはバック側から相手のストレート(相手のフォア側)へ返球をしたのなら、こちらのフォアに返ってくる可能性が高いので、フォア側へ少し身体を動かす必要があるのだ。

ストレートへのケア

もちろん、クロスだけでなくストレートのコースを狙われる可能性もあるので、そちらへのケアも頭に入れておかなければならない。もしストレートに来たときに、なんとか対応できる位置で待つ必要があるわけだ。

前述のとおり、クロス方向への打球は身体から逃げていく性質のため、それを踏まえてクロスへの返球を想定した位置に動く必要がある。ただ、ストレートに来てもギリギリ対応できるくらいの位置にいることも考えなければならない。この位置というのは日頃の練習で把握しておく必要があるし、自分自身が対応できる範囲をなるべく広げる練習も必要だろう。

そして、このときに動くと同時に相手のラケット角度や肩の開き具合等を注視して、相手の打球がストレートへ来る(来そうな)ことをなるべく早めに察知することも重要だ。

しかし、ストレートへのケアをしなくても良い場面というのもある。それは、相手の打点が卓球台よりも下がったときだ。

相手が回りみドライブを打つ際に、ボールが台より下に落ちた場合、そのドライブは90%以上の確率でクロスに来る。その状態からストレートコースヘ入ることはほとんどない。なので、安心してクロスで待てば良いのだ。こういったことは卓球のいわばセオリーであり、経験を積めば自ずと理解出来るようになる。

前後への先回り

また、左右の動きばかりに目が行きがちだが、前後の動きの意識も非常に重要である。

例えば、あなたがレシーブでストップをしたとする。初心者や中級者くらいのレベルであれば、次はツッツキで返ってくることが多い。それを見越して、ストップ後はすぐに足を動かして、台からしっかり距離を取った位置で次の球を攻撃する準備をしなければならない。

よくやってしまいがちなのが、せっかく良いストップができたのに後ろに下がり切れずに、次のボールで詰まってうまく攻撃できないパターンだ。これは言うまでもなく、前後の動きが不十分であることに原因がある。

あるいは逆のパターンもある。例えば、あなたが中陣でバックサイドのボールをフィッシュあるいはロビングでしのいでいたとする。その中でバックハンドの強打で引き返して、反撃に転じるシーンがあるだろう。それに対し相手がブロックをすれば、当然次のボールは台の近くに落ちるはずだ。

つまり、反撃するのであれば、中陣からすぐさま前に出て台との距離を詰めなければいけないのだ。そのままの位置に居たのでは次のボールを打ちあぐねてしまい、結局また相手の強打をしのぐ展開に戻ってしまう。

自分が打ったボールによって、次にどんな性質のボールが返ってくるのかを意識し、それに基づいて適切な位置取りをすることが重要である。

ボールを見るよりも先に動く

ここまで様々なポイントを解説してきたが、それらポイントには重要な共通点が一つある。それは「ボールを見ない」ということだ。

自分の打球を「入るかなー」とついつい見てしまうことはあるかもしれないが、それは良くない。ボールを打ったら入ろうが入るまいが、次球に備えて足を動かさなければならない。ボールが相手コートに入るまで見てしまう癖がある方は要注意だ。

あるいはボールが入った後、相手の打球する動きを見てから足を動かすということも、実は必ずしも必要ではい。例えば、サービスからの3球目攻撃を狙う際に、バックに返球される可能性が高いサービスを出したなら、ボールが相手のラケットから離れるよりも前に、回り込みを始めてしまえばいい。むしろ、そうすることでしっかりと回り込むことができて、3球目攻撃の威力や精度を上げることに繋がる。

まとめ

今回は「打たれる場所に先回りする」というテーマで考えてみた。

一言で言えば「自分がこう打ったら、次はこう返ってくるから、この位置に動いておく」ということを考えようという話だ。ある程度の経験を積めば、自分が打ったボールが次にどう返ってくるかはおおよそ予想できるようになる。基本的にはクロスに返ってくることが多いし、もしレシーブが浮いたなら強いボールが来る。ただし、それらは頭では分かっていても実際には身体を動かせずに対処できていないケースが多い。

卓球は将棋やチェスに近いものがある。「こうすればこうくる」というのがある程度確立されており、それを知って身体に染み込ませていくことがとても重要になってくるのだ。練習は上手いのに試合では勝てない選手などは、この部分がうまくできていないことが多いのではないだろうか。今回の話が参考になれば幸いである。

若槻軸足インタビュー記事

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