卓球技術・コツ 左シェーク裏裏の選手を倒すための戦術と注意点|頭で勝つ!卓球戦術
2023.09.25
戦型:右ペン表裏
卓球ライター若槻軸足がお届けする「頭で勝つ!卓球戦術」
今回も前回に引き続き戦型別攻略法ということで、左利きの選手への対策について考えてみよう。
やはり左利きの選手は右利きよりも圧倒的に数が少ないため、対峙する機会も少ない。多くの方が苦手意識を持っていることも納得がいくだろう。
しかし、競技を続けていく中、試合を勝ち進んでいく中で左利きと戦わないといけない場面は必ず来る。単純に「苦手だから勝てなかった」というのは、あまりにも情けない。そうならないためにも、今回しっかりと左利き選手の特徴について理解した上で、対策方法を身に着けていこう。
なお、今回は左利きのシェークハンド両面裏ソフトの選手を想定している。
このページの目次
左シェーク裏裏の特徴
写真:水谷隼(木下マイスター東京)/撮影:ラリーズ編集部
左シェーク裏裏の特徴①回転が右利き選手と逆
まず左利きを不慣れとしている選手が攻略しなければいけないのが、右利きの選手と回転が逆になる点だ。
最も顕著なのがレシーブだ。たとえば右利き選手が出すYGサーブや巻き込みサーブは「逆横回転」と言われるが、左利きがYGや巻き込みを出せば、それは「順横回転」となる。
写真:森薗政崇(BOBSON)/撮影:ラリーズ編集部
加えてサーブの出どころも違う。右利き選手は卓球台に向かって右側からボールが来ることが多いのに対し、左利き選手からは卓球台の左側から飛んでくる。回転もボールの出どころも普段と逆とあっては、慣れないうちは対応に手こずるのもうなずける。
写真:水谷隼(木下マイスター東京)/撮影:ラリーズ編集部
ただこれに関しては慣れればどうということはなく、サーブが来たときに、「普段と逆だから、このサーブは順回転で」などと頭のなかで変換するまでもなく、感覚的に分かってくる。経験がものをいうので、しっかり競技経験を続けていくなかでじっくりと身に着けていこう。
左シェーク裏裏の特徴②高い打点のバックで振り回される
フォアハンドよりもバックハンドの方が打球ポイントが身体の前方にあるので、高い打球点でボールを返球することができる。それは右左共通なのだが、違うのは左利きがバックハンドでクロスに打ったときは、右利き選手のフォアサイドに逃げていくボールになるという点だ。
写真:石川佳純(全農)/撮影:ラリーズ編集部
安易に左利きのバックへ送るとこちらのフォア側に打たれて、追いかける形になって台から下がらざるを得ない状況になる。
しかもそのボールもクロスへ送ってしまいがちなので、さらに相手はバックハンドで対応し、もう一度こちらのフォアを突かれてしまったり、あるいはストレートに送られたりと、防戦一方になる。
左シェーク裏裏の特徴③バックに回り込まれるとやっかい
そして最も警戒しなくてはならないのが、相手がバックサイドを回り込んだときだ。
写真:石川佳純(全農)/撮影:ラリーズ編集部
回り込んでフォアハンドを打たれる場面になると、相手はこちら側のどこにでも自由に打ち分けられる。ストレートに打たれると反応が難しいし、フォアクロスにシュート気味に打たれるボールなども相当やっかいだ。
台上でも同じことが言える。左利きがダブルスで有利なのは、回り込んで台上処理ができることに圧倒的な優位性があるからだ。とにかく安易にバックサイドへは送らない方がよい。
左シェーク裏裏攻略法
ではいよいよそんな左利きを倒すための算段を考えていこう。
大前提として頭に入れたいのが、「左利き選手と同じ戦法を取る」ということだ。右利きのあなたが左利きにされて嫌なことは、同様に左利き選手も嫌なのだ。
「やられたらやり返す」というよりは「先にやる」ということを念頭に置いて、徹底的に左利きの嫌がるポイントを攻めよう。
左シェーク裏裏攻略法①とにかくフォア前に順横
まずはやはりフォア前に順横回転、これが基本となる。それもフォアサイドを出るか出ないかの長さにコントロールできれば1番良い。
台から出た場合は、相手はクロスに持ち上げるドライブをするしかないので、それをブロックあるいはカウンターで待ち構える戦法が最もシンプルだろう。やはりフォアで持ち上げさせてから叩くというのはプロ選手の試合でもよく見られるし、これをうまく対処できる選手というのはなかなかいない。
写真:丹羽孝希(スヴェンソン)/撮影:ラリーズ編集部
またもし台上で処理されるとしても、左利きがフォア面で順横回転に対して角度を合わせるのは、かなり手首が窮屈な形になり難しいのだ。そのため足を使ってバックハンドで処理されることも考えられるので、それも考慮して台から少し出るくらいの長さにコントロールするよう心がけよう。
左シェーク裏裏攻略法②まずはフォアを狙って台から下げる
バック側への安易な送球は危険なので、やはりまず狙うべきはフォアサイドだ。
サーブあるいはレシーブでフォアを突き、ドライブを振らせてそれをもう一度フォアへブロック、そうすればたいていは少し台から距離を取らざるをえなくなる。
そうなれば、相手がフォアハンドで打つボールはクロスであるこちらのバックに集まってくるわけだ。さらにフォアを厳しく狙ってもいいし、もちろん空いているバックストレートを突いてもいいだろう。完璧にラリーの主導権を握った形になる。
左利きのフォアを突いて後ろに下げさせて、こちらは前陣のバックハンドで振り回す。この構図にできるだけ多く持っていけるかが、左利きと対峙するときの勝負の分かれ目なのだ。
左シェーク裏裏攻略法③バックへのロングサーブ
これらの作戦でフォアを意識的に狙っていけば、当然相手も「フォア側を狙われているな」と意識するだろう。
そうなったところへ、バックストレートへの速いロングサーブだ。
写真:早田ひな(日本生命)/撮影:ラリーズ編集部
先述したとおり何も考えず安易に左利きのバックを狙うのはリスクが高いのだが、十分にフォア側への注意を向けさせておいてからバックを詰めることによって、相手としては以後、対角の2点をケアしないといけないため相当しんどくなるだろう。
逆にこのバックストレートへのロングサーブがなければ、せっかくのフォア攻めも威力が半減してしまう。なので以前からお伝えしているように、ロングサーブというのは非常に大切で、普段からそこへの意識を強く持っているか否かで試合の進め方が大きく変わってくるのだ。
左シェーク裏裏攻略法まとめ
いかがだっただろうか。今回は左利き選手を攻略するための作戦を考えてみた。
もちろん左利きとひとくちに言っても様々なプレースタイルの選手がいる。全て同じようにいくわけではないが、今回のお話は基本的には皆に共通する基本的な事柄なので、おそらくこれを守ればそれほど悪い結果にはならないだろう。
そして今回の基本的な事柄を理解したうえで、左利きに「慣れる」ということも非常に大切になってくる。チーム内に左利き選手がいない場合でも、右利きの選手にフォア側からサーブを出してもらうなど、工夫の仕方はいくらでもある。
そうやって、「苦手だから負けた」ということが二度とないように、しっかりと向き合っていこう。
若槻軸足インタビュー記事
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