戦型:右ペン表裏
卓球ライター若槻軸足がお届けする「頭で勝つ!卓球戦術」
前回の記事では、今のご時世ロングサーブを使わない理由はないよという趣旨の記事をお送りした。
今回はそれに引き続きということで、具体的にどういうポイントに気をつければ、上手にロングサーブを出せるのかを私なりに解説していきたい。
>>前回の記事はこちら 今、ロングサーブを使うべき5つの理由|頭で勝つ!卓球戦術
このページの目次
勝てるロングサーブのポイント①速さよりも低さと深さを重視
有効なロングサーブは、まず第一にボールのスピードが「速い」ことが重要である。
ショートサーブ待ちをしている相手の意表を突いてロングサーブを出せれば、相手を詰まらせることができ、サービスエースも狙えるだろう。そのための絶対条件として、まずはやはりボールスピードが求められる。
しかし「速く出す」ことばかりを強く意識し過ぎると、体に余計な力が入って安定して入らなくなってしまう。そこでオススメしたいのが、「深さと低さに意識を置く」ということだ。
ロングサーブは低さが重要
まず低さについては、過去のサーブの出し方の記事でもお伝えしていたように、打球位置を低くするということが全てである。
胸の位置でラケットに当てるよりも、腰の位置でラケットに当てる方が当然バウンドは低くなる。とにかくネットをギリギリ通る、できるだけ低い位置で打球をすることが重要だ。
毎回同じ位置でラケットに当てることができていれば、ロングサーブだろうとショートサーブだろうと、常に低いサーブを出すことができる。これは普段からの心がけでしっかりと体に染み込ませておくことが必要だ。
ロングサーブは深さも重要
次に深さについてだ。ロングサーブはできるだけ相手コートの深くギリギリに到達するべきである。
このやり方に関しても明確で、相手コート深くへボールを着地させたければ、第一バウンドも自分側のコートギリギリに着地させるのだ。台の端の白線に第一バウンドを狙うのがいいだろう。そのためには、白線ギリギリの位置から出す方がより狙いやすく、ミスも少なくなる。
図:打球する位置を白線のギリギリの位置から出す/作成:ラリーズ編集部
ネットギリギリの低さで、第一バウンドがこちら側の白線の位置に着地していれば、実はそれだけで十分スピードのある良いロングサーブを出せるということに気づくはずだ。
騙されたと思ってぜひやってみて欲しい。低さと深さを意識すれば、速さはあとから勝手についてくる。
「速さ」ばかりにを意識を傾けると、実際の試合の緊張した場面では必ずミスが出て、その後も怖くてなかなか出しにくいはずである。
しかし、上記2点を意識するだけであれば、それほど力も入ることなく、どんな場面でも同じ質のサーブを出すことができる。サーブの質が高いことはもちろん、その質の高いサーブをどんな場面でも自信を持って出せることは非常に重要なのだ。
勝てるロングサーブのポイント②なるべくバレないように出す
先程はサーブ自体の質を上げる話だったが、続いてはいかにそれを相手に悟られずに出せるかのお話だ。どれほど低くとも、どれだけ速くとも、「今からロングサーブを出しますよ」といったバレバレの格好で出していたのでは、その効果は非常に薄い。
一般的には、ロングサーブはボールに勢いをつける為に力を込める分、ショートサーブのときよりも大きくスイングをする方がやりやすい。しかしそうすると、サーブを打つ前の時点でロングサーブの気配を出してしまっていることになるわけだ。相手に悟らせないためには、ロングサーブを出すときもショートサーブを出すときも、同じスイング・同じ体の使い方である必要がある。
あなたがある程度競技経験があれば、複数の種類のサーブを持っていることだろう。順横、YG、巻き込み、投げ上げ、バックサーブ等種類は様々だが、それら全てのサーブでショートとロングを出し分けることができるのが理想である。
巻き込みサーブなら、巻き込みのショートと巻き込みのロング、両方を見せた方がサーブの効果がより増すことは言うまでもない。さらにそれを分かりにくくするために、「ロングを出しやすいスイングで統一する」というのがオススメだ。
ロングサーブに照準を合わせたスイングや体の使い方をデフォルトにしておいて、同じ出し方で短くコントロールできるよう練習するのだ。これで相手へ常にロングサーブが来るような警戒心を感じさせることができ、ショートサーブもこれまで以上に効果を発揮する。
またあるいは、大きなバックスイングでいかにも「ロングでいきますよ」という雰囲気を出してからのショートサーブ、小さなバックスイングで何気ない雰囲気からロングサーブ、といった戦術もあったりする。
とにかくロングサーブを試合で活かす為には、いかに気配を殺しながら、相手の意表をつけるかということが肝要なのである。
勝てるロングサーブのポイント③狙うべきコースは3つ
最後にロングサーブをどこに出すべきかという話だ。コースについては、ショートサーブを出すとき以上に気を使う必要がある。
なにせ、一発の強打で仕留められるリスクもはらんでいるため、甘いコースへ出せば格好の餌食となってしまうからだ。なるべく振り切らせない厳しいコースへ、さらに打たれたとしても返球の予測がつくコースへサーブを出すことが大切だ。
図:ロングサーブで狙うべきコース/作成:ラリーズ編集部
まずひとつめはバックサイドだ。
このときは、絶対にバックのサイドを割る厳しいコースへ出さなければならない。サイドを割らなければ確実に打たれると思った方がいい。しっかりと厳しいコースへ出せれば、相手はフォアで対処するにもかなり大きく回り込まなければならい為、時間的には相当厳しいはずだ。
そしてバックで処理するにも、体から離れた位置なら角度を合わせるのが難しく、返球されてもほぼ間違いなくクロスへ返ってくる。このパターンにはまれば3球目はかなり楽になるはずだ。
ふたつめがミドルだ。フォアミドルでもバックミドルでもいい。ミドル攻めは一定のレベルを超えるには必須のコース取りであるが、それはサーブの際も例外ではない。
ミドルを狙うことのデメリットとして、「その後の返球の予測がしづらい」といった声を聞くことがあるが、私の経験上は、「ミドルに返ってくることが多い」というのが答えだ。
もちろん相手がミドル処理に慣れている上位レベルならば話は変わるが、初中級者レベルに対しては、「真ん中あたりに打てば真ん中あたりに返ってくる」と思ってしまってかまわない。さらに言えば、ミドルを狙う際は横回転を入れた曲がる軌道のロングサーブを出せればより効果的だろう。
そして最後3つめがフォアストレートだ。
スウェーデンのレジェンド、ワルドナー選手がフォアストレートのロングサーブで相手を抜き去るシーンを見たことがある方も多いだろう。あのように鮮やかに得点ができれば言うことなしだが、実はそこまで求めずとも大丈夫だ。
台の白線を這うような厳しいコースへスピードのあるロングサーブを毎回成功させるのは、かなりの練習が必要だ。しかしたとえ試合本番でミスしても、相手へ「フォアストレートへのロングもある」という意識を植え付けさせることができれば、それで十分なのだ。
試合序盤で1,2本見せておけば、それだけで相手がレシーブで回り込む回数がぐんと減るはずである。ただし、その見せたロングサーブが限りなく速く、かつ厳しいコースを狙ったものであることは必須だ。
まとめ
長くなってしまったが、ロングサーブを上手に出す為の方法について解説した。これまでロングサーブを使う機会がなかった選手は、まずはバックサイドを狙ったコースへ、低く、深くを意識をして練習することをおすすめする。
ロングサーブには2つのリスクがある。まずサーブミスをするというリスク。そして一発で打ち抜かれてしまうというリスクだ。もちろんこれらをゼロにすることはできないが、今回お伝えした点を意識すれば、限りなくリスクを低くすることができる。その上で積極的に使っていけば、得られるリターンはとても大きい。ぜひしっかりと練習し、強力で頼れる武器のひとつに加えていこう。
>>今、ロングサーブを使うべき5つの理由|頭で勝つ!卓球戦術