文:ラリーズ編集部
今回は、東京五輪混合ダブルス金メダルを獲得し、世界ランキング自己最高位は2位と日本人最上位につける卓球黄金世代の一人、伊藤美誠選手を紹介します。プロフィール、使用用具、プレースタイルなどの基本的な情報から、国際大会での戦績についても触れていきます。
卓球女子の黄金世代の一角として幼少期から注目されている伊藤美誠のプロフィールを見ていきましょう。
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このページの目次
伊藤美誠とは?
伊藤美誠(いとうみま)とは、全日本選手権で2年連続の3冠(女子シングルス、女子ダブルス、混合ダブルス)を達成し、世界ランキングでは中国選手の分厚い壁を一人突き破り5位(2022年12月時点)に君臨する、日本の卓球選手です。
写真:TOP32福岡大会で優勝した伊藤美誠(スターツ)/撮影:ラリーズ編集部
2022年には、自身3度目となる全日本選手権女子シングルス優勝を果たし、9月に行われたパリ五輪国内選考会「TOP32福岡大会」で優勝。世界選手権成都大会では、日本の準優勝に大きく貢献しました。
また、繊細な台上技術、フットワークを生かしシングルスだけでなくダブルスでも活躍し、東京五輪では水谷隼(木下グループ)と組む混合ダブルスでも代表に内定しており、メダル獲得が期待されます。
伊藤美誠のプロフィール
伊藤美誠(いとうみま)は2000年10月21日生まれの23歳(2024年7月時点)で、静岡県磐田市出身です。
2歳の終わりから卓球を始め、2008年の全日本選手権バンビの部(小2以下)、2010年の全日本選手権カブの部(小4以下)でそれぞれ優勝を果たし、2011年の全日本選手権では一般の部で大会史上最年少勝利の記録を更新しました。
写真:伊藤美誠/撮影:ラリーズ編集部
2013年のドイツオープンでは平野美宇と組んだ女子ダブルスでワールドツアー初優勝を果たし、史上最年少でのツアーダブルス優勝を記録しました。
2015年には、ドイツオープン女子シングルスで世界最年少優勝記録を樹立し、ギネス記録に認定されました。また、その年の世界選手権蘇州大会では、破竹の快進撃で準々決勝に進出。2003年パリ大会での福原愛の持つ記録を塗り替え、日本選手歴代最年少ベスト8入りを果たしました。
その後2015年9月発表の世界ランキングで日本選手3番手の10位となり、リオデジャネイロ五輪女子団体戦代表候補選手に選出されました。
翌年のリオ五輪では、女子団体3位決定戦で、ロンドン五輪銅メダリストの馮天薇(フォンティエンウェイ・シンガポール)に勝つなど大活躍し、最年少の15歳300日で銅メダルを獲得しました。
写真:伊藤美誠/提供:ittfworld
2017年の世界選手権ドイツ大会では早田ひなと組んだ女子ダブルスで銅メダルを獲得しました。
2018年の全日本選手権では女子シングルス、女子ダブルス、混合ダブルスを全て制し3冠を達成。その年の世界選手権団体戦スウェーデン大会では、決勝で中国の劉詩雯(リュウスーウェン)に勝つなど8戦全勝と日本を準優勝に導く活躍をし、同大会の最優秀選手賞を受賞しました。
さらに、6月のジャパンオープンで中国の王曼昱(ワンマンユ)を下し優勝を果たすと、11月のスウェーデンオープンでは、劉詩雯、丁寧(ディンニン)、朱雨玲(ジュユリン)に勝つ圧巻のプレーで優勝。卓球帝国から最も恐れられる選手の一人としてその名を世界に轟かせました。
写真:伊藤美誠/提供:ittfworld
2019年の全日本選手権でも別次元の強さを発揮し、女子史上初となる2年連続の3冠を達成しました。その年の世界選手権ハンガリー大会では早田ひなと組むダブルスで銀メダルを獲得。
11月に行われたチームワールドカップでは、ホームの観客の前で決勝で同年代のライバル、孫穎莎(スンイーシャ・中国)と大熱戦を展開。マッチポイントを握るも逆転負けを喫し、チームも敗れて準優勝に終わりました。
2020年1月には、東京五輪のシングルス、団体戦、混合ダブルスの代表に内定したことが発表されました。その後ハンガリーオープンで優勝、カタールオープンで準優勝を果たすなど、さらにそのプレーに磨きをかけています。さらに、同年4月には世界ランキングで日本選手歴代最高となる2位となりました。
写真:伊藤美誠/提供:新華社/アフロ
しかし、以降は新型コロナウイルスの影響で国際大会が軒並み開催中止となり、日本代表に選出されていた東京五輪も1年延期。苦しい時期を過ごすことになりますが、2021年に開催された初のWTT大会で2連覇を達成し、健在ぶりをアピールします。
そしてついに迎えた東京五輪。水谷隼との混合ダブルスでは苦戦を強いられながらもなんとか勝ち上がり、決勝ではこれまで何度も対戦し敗れてきた許昕(シュシン)/劉詩雯(リュウスーウェン・中国)ペアと対戦。先に2ゲームを奪われる苦しい展開となるも、そこから3ゲームを連取して勝利に王手をかけます。
写真:東京五輪混合ダブルス金メダルを獲得した水谷隼と伊藤美誠/提供:ITTF
第6ゲームは許昕/劉詩雯ペアに取られるも、第7ゲームでは序盤から点差を広げて、最後は伊藤美誠のサービスエースで勝利。フルゲームの激戦を制して、伊藤美誠は日本選手史上初の五輪金メダル獲得の偉業を成し遂げたのです。
さらに、女子団体と女子シングルスでも活躍を見せ、女子団体では銀メダル、女子シングルスでは銅メダルを獲得。出場した全3種目でメダルを獲得し、日本卓球界の歴史に大きく名を刻みました。
このように、自国開催の五輪で輝かしい成績を残した伊藤美誠は、同年の世界選手権女子ダブルス銀メダルを獲得、翌年のWTTシンガポールスマッシュ女子ダブルス準優勝など、大舞台で結果を残し続けます。
2022年から本格的に始まったパリ五輪国内選考会では、国内選手からの徹底した対策に苦しみ、満足のいく結果を残せずにいました。それでも、TOP32福岡大会で優勝を飾るなど選考レースでは上位をキープしていましたが、最後の選考会となった2024年1月の全日本選手権で、女子シングルス6回戦で木村香純に敗れてベスト16で敗退します。
写真:2024年の全日本で木村香純に敗れた直後の伊藤美誠/撮影:ラリーズ編集部
この結果から、代表枠を争っていた平野美宇のポイントを上回ることができなくなり、伊藤美誠の選考レース落選が決定。その後に日本卓球協会から発表された3枠目(推薦枠)にも選出されず、パリ五輪代表の座を逃す結果となりました。東京五輪で日本卓球史上初の金メダルを獲得した伊藤だけに、このニュースは大きな驚きを持って報道されました。
代表落選直後は現役引退も示唆していた伊藤でしたが、2月の世界選手権釜山大会にも出場し、現役続行の意思を表明します。この大会では、早田ひなや平野美宇らにベンチでアドバイスする姿が、さながら監督のようであることも話題となりました。
写真:伊藤美誠(スターツ)/提供:WTT
そして、以降も国際大会に精力的に出場し、同年7月のWTTスターコンテンダーバンコクでは、約1年半ぶりとなる国際大会優勝、ならびに約3年半ぶりとなるWTTスターコンテンダーシリーズ優勝を果たしました。
伊藤美誠のSNS
伊藤美誠のプレースタイル
伊藤美誠の戦型は、右シェークバック表の前陣速攻型です。バック面に表ソフトラバーを貼り、ナックルボールを効果的に用い相手を翻弄します。
伊藤が中国選手たちから恐れられている原因は他の選手には真似できない伊藤の独創的な技術の数々にあります。まず、伊藤のサーブ。近年は様々なフォームからの巻き込みサーブを軸とし、その中に順回転のサーブや切り方の違う逆系のサーブ、そしてロングサーブを混ぜて相手に的を絞らせないような配球を見せます。
中でも目を引くのは、巻き込みサーブを出すときの独特の構え。その後のラリーに備えコンパクトなサーブを出す女子選手が多い中、伊藤のダイナミックなフォーム、そして素早いスイングスピードで放たれる巻き込みサーブは、唯一無二の武器となっています。
また、レシーブでは、バックの表ソフトラバーでのチキータ、逆チキータ、ストップなど多彩な台上技術で相手を翻弄し、先手を取ることができます。中国の孫穎莎や陳夢(チェンムン)は、その台上での多彩なレシーブを嫌がり、伊藤のバックサイドに強烈な下回転をかけたサーブや深く速いロングサーブを出し、ラリーに持ち込む戦術を多用します。
伊藤は、相手の回転をうまく利用し、本来回転のかけづらい表ソフトでバックドライブを打つことができます。さらに、本来フォアドライブで攻撃するようなボールも、伊藤は「みまパンチ」と呼ばれるフォアスマッシュで打ち抜いていきます。
ミドルに来たボールに対しては表ソフトで変化をつけて返し、低く厳しいボールは回転量のあるドライブで攻撃、甘いボールは回転量の少ないスマッシュで打ち抜く伊藤のプレーは、中国選手の予測をはるかに超え、対中国相手にも互角以上の勝負を展開します。
また、伊藤はカット打ちの名手としても名を馳せています。普通のプレイヤーがドライブ連打で攻略していくのに対し、伊藤は回転量に変化をつけ、両サイドへのスマッシュ攻撃で押していき、また表ソフトによる前後の揺さぶりも効果的に用いるため、カットマンにとって天敵と言える存在でしょう。
伊藤美誠の使用用具
ニッタクの契約選手である伊藤美誠は、ラケットはニッタクの『伊藤美誠カーボン』、ラバーはフォア面にニッタクの『ファスタークG-1』、バック面にニッタクの『モリストSP』を使用しているようです。
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>>【卓球】ファスタークG-1の性能を徹底レビュー 抜群の安定感でスピンドライブならお手の物
>>【卓球】モリストSPの性能を徹底レビュー 伊藤美誠も使用の表ソフトラバー
伊藤美誠の世界ランキング
伊藤美誠の世界ランキングは9位(2024年7月時点)で、最高ランキングは2位(2020年4月)です。
伊藤美誠は、2015年3月に38位だった世界ランクを、翌月の4月に一気に15位まで伸ばし、6月に9位を記録し、初の世界ランキングトップ10入りを果たしました。そこから現在までほとんど10位以内をキープし、世界の第一線で活躍し続けます。
そして2020年4月には過去最高となる2位にランクインし、日本人として歴代最高記録を更新しました。
伊藤美誠の国内大会での主な成績
2008年 | 全日本選手権(バンビの部) | 女子シングルス:優勝 |
2010年 | 全日本選手権(カブの部) | 女子シングルス:優勝 |
2014年 | 全中 | 女子シングルス:準優勝 |
2015年 | 全日本選手権 | ジュニア女子シングルス:優勝 |
2016年 | 全日本選手権 | 女子シングルス:3位 |
2018年 | 全日本選手権 | 女子シングルス:優勝、女子ダブルス:優勝、混合ダブルス:優勝 |
2019年 | 全日本選手権 | 女子シングルス:優勝、女子ダブルス:優勝、混合ダブルス:優勝 |
2020年 | 全日本選手権 | 女子シングルス:3位、女子ダブルス:優勝、混合ダブルス:優勝 |
2021年 | 全日本選手権 | 女子シングルス:準優勝、女子ダブルス:優勝 |
2022年 | 全日本選手権 | 女子シングルス:優勝、女子ダブルス:優勝 |
TOP32福岡大会 | 女子シングルス:優勝 | |
2023年 | 全日本選手権 | 女子シングルス:準優勝、女子ダブルス:優勝 |
NOJIMA CUP | 女子シングルス:準優勝 | |
2024年 | 全日本選手権 | 女子シングルス:ベスト16 |
伊藤美誠の国際大会での主な戦績
2014年 | ドイツオープン | 女子ダブルス:優勝 |
グランドファイナル | 女子ダブルス:優勝 | |
2015年 | ドイツオープン | 女子シングルス:優勝 |
世界選手権蘇州大会 | 女子シングルス:ベスト8 | |
グランドファイナル | 女子ダブルス:優勝 | |
2016年 | 世界選手権クアラルンプール大会 | 女子団体:銀メダル |
リオデジャネイロ五輪 | 女子団体:銅メダル | |
世界ジュニア選手権 | 女子団体:金メダル | |
2017年 | 世界選手権デュッセルドルフ大会 | 女子ダブルス:銅メダル |
グランドファイナル | 女子ダブルス:準優勝 | |
2018年 | 世界選手権ハルムスタッド大会 | 女子団体:銀メダル |
ジャパンオープン | 女子シングルス:優勝 | |
グランドファイナル | 女子ダブルス:優勝 | |
2019年 | 世界選手権ブダペスト大会 | 女子ダブルス:銀メダル |
チームワールドカップ | 女子団体:準優勝 | |
T2ダイヤモンドシンガポール大会 | 女子シングルス:準優勝 | |
スウェーデンオープン | 女子シングルス:準優勝 | |
グランドファイナル | 女子シングルス:ベスト4、混合ダブルス:準優勝 | |
2020年 | カタールオープン | 女子シングルス:準優勝、混合ダブルス:優勝 |
ワールドカップ | 女子シングルス:3位 | |
2021年 | WTTコンテンダードーハ | 女子シングルス:優勝 |
WTTスターコンテンダードーハ | 女子シングルス:優勝 | |
東京五輪 | 女子シングルス:銅メダル、女子団体:銀メダル、混合ダブルス:金メダル | |
世界選手権ヒューストン大会 | 女子シングルス:ベスト8、女子ダブルス:銀メダル | |
2022年 | WTTシンガポールスマッシュ | 女子ダブルス:準優勝 |
WTTコンテンダーザグレブ | 女子シングルス:優勝、女子ダブルス:優勝 | |
世界選手権成都大会 | 女子団体:銀メダル | |
アジアカップ | 女子シングルス:準優勝 | |
WTTチャンピオンズマカオ | 女子シングルス:ベスト4 | |
2023年 | WTTコンテンダーアンマン | 女子シングルス:優勝 |
世界選手権ダーバン大会 | 女子シングルス:ベスト8 | |
WTTスターコンテンダーリュブリャナ | 女子シングルス:ベスト4 | |
アジア選手権 | 女子シングルス:ベスト8、女子団体:銅メダル | |
2024年 | 世界選手権釜山大会 | 女子団体:銀メダル |
WTTスターコンテンダーバンコク | 女子シングルス:優勝 |
まとめ
今回は、東京五輪金メダリスト、今中国が最も恐れるプレイヤーであろう伊藤美誠選手を紹介しました。卓球帝国・中国の想定を悠々と越え、独自の卓球スタイルを進化させ続け、「無敗の女」を目指す伊藤美誠選手の今後の活躍から目が離せません。
伊藤美誠以外の日本選手のプロフィールはこちら
男子選手
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女子選手
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