戦型:右ペン表裏
卓球ライター若槻軸足がお届けする「頭で勝つ!卓球戦術」
このシリーズでは初心者向けに卓球の基本的な技術についての説明や、そのやり方、対処法などについてお話していく。実際のプレイヤーはもちろん、テレビなどで観戦される方にとっても、頻繁に出てくる用語が登場するので、知っているとより卓球の面白さが分かるだろう。ぜひ参考にしていただきたい。
(特に記述がない限り、右利きのシェークハンドの選手を想定している)
さて、今回は久々の戦型別の攻略法だ。粒高の選手を倒すためのテクニックについてお伝えする。
カットマンがバック面に粒高ラバーを貼っているケースも多いが、今回は前陣で戦う粒高プレイヤーを想定してのお話となる。かなり少数派の戦型なので、初中級者の方は対峙する機会も少ないと思われる。
その滅多とない機会で、うまく戦えず気付いたら負けしまった、とならないよう、ここでしっかりと予習をしておこう。
このページの目次
粒高の基本性質
写真:56歳ながら世界で活躍する倪夏蓮(ルクセンブルク・写真は2019オーストリアOP)/提供:ittfworld
まず基本的なところからおさえておこう。粒高ラバーは、ラバー表面に文字通り高い粒がある。この粒のおかげで、回転を逆にして返球するという特徴があるのだ。
上回転のドライブは、粒高で返球されたら下回転で返ってくる。逆に下回転のツッツキをすると、上回転のボールで返ってくる、ということだ。
粒高への対策
サーブは回転ではなくコースを重視
基本的に粒高ラバーは、ボールの回転の影響をあまり受けない。つまり、あなたが色々と複雑なサーブを工夫して出したところで、その回転はすべてかき消されてしまうわけだ。
さらにいうと、粒高に対して横回転のサーブを出すと、ボールが揺れて返ってきたり、回転が残ったりと予測しづらい返球が来る可能性が高い。
なので、あなたがサーブを持っているときは複雑な回転を出さずに、ナックルや上回転のロングサーブなど、なるべくシンプルなサーブを出す方が吉である。
ただし、それだけではあまり優位性が得られないので、コースをしっかりと意識しよう。フォア前のショートサーブと、バックへ速いロングサーブで、対角を狙う。あるいは逆のバック前とフォア深くなども有効だ。
下回転に対してドライブをしない方が良い
例えば、あなたが上回転のロングサーブを出すとしよう。粒高で返球されれば、当然下回転で返ってくる。それをあなたはドライブをする。粒高で対応されて、また下回転で返ってくる。それをさらにドライブ。よくありがちな展開だが、実はこれは一番やってはいけない。
これはいわば、前陣カットマンと戦っているようなものだ。ただでさえ強くかかった下回転を持ち上げるのは大変なのに、それが前陣から返ってくるので、時間的な余裕が全くない。非常にしんどいと思わないだろうか。
しかもあなたが、スピードがあり回転のかかった質のいいドライブを打てば打つほど、対応されたときには下回転が強くかかった質のいいボールが返ってくるのだ。
鉄板の戦術
筆者なら、下回転が返ってきたら、絶対にドライブをしない。ではどうするかというと、ツッツキだ。それもなるべくバック深くを狙ったツッツキだ。
そうすると、返ってくるのは必ず上回転のボールのはずだ。それを両ハンドで待って、早い打点で相手のフォアサイドに叩き込む。これが、最もこちらがリスクを負わずに優位に進められる展開だ。
もちろんここでラリーを決められなくても、フォアサイドを突くことで相手を台から下げることができるので、連続的に攻めることができるだろう。
注意としては、相手はこちらがツッツキをした時点でプッシュ性のスピードボールを狙っていることがあるということだ。ただ、それも頭に入れてやや台から距離を取って待てば、十分に対応できるだろう。
攻撃中に浮いてきたボールには注意
たとえばあなたの攻撃が返球されたとき、やや浮いて山なりで返ってくることがあるだろう。
ただ、そんなときもチャンスボールだと思って油断してはいけない。たとえ浮いていても、下回転が強烈にかかっていることが多いからだ。さらにそれが深いボールである際は要注意だ。無理して打ち抜こうとせず、つなぎのボールで安全に入れるべきだ。
ただし、浅く浮いてきたボールについては、たとえ回転が強ともチャンスボールだ。しっかりと台に入って、スマッシュで決められるようにしたい。
ループドライブは極力打たない
粒高に対して弧線の高いループドライブをすることは、たとえバック側を狙ったとしてもリスクが高い。なぜなら相手もそれを待ち構えているからだ。相手がペン粒なら、裏面でカウンターを食らうだろうし、シェーク粒なら回り込んでフォアハンドのカウンターの餌食になる。
粒高の下回転にドライブで攻めきろうと考えてしまうと、どうしてもループドライブを打たざるを得ない状況になってくる。
私はそれが嫌なので、最初からなるべくドライブをしないような展開を心がけているのだ。
ペンでもシェークでも基本的にはフォア狙い
相手がペン粒かシェーク粒かで、戦況は大きく変わってくる。ペンなら、基本的に全面で粒高で返球されることを想定しなければならない。シェークの場合はフォア面は裏ソフトラバーのケースが多いので、フォアからは速いボール、バックからは遅く変化のあるボールがくる、と考えるのが妥当である。
ただ、共通して言えるのは、どちらもフォアサイドを狙うべきである、という点だ。
ペンなら、フォア側で粒高で変化を出すのは難しいし、バックよりも打点が落ちるので返ってくるボールもやや甘くなりがちだ。
シェークの場合、フォアから攻撃が来るとはいえ、粒高という戦型を選んでいる時点で、身体能力が高くて何本も連続攻撃するのが得意な選手だとは考えにくいからだ。
常に攻める気持ちを忘れない。
最後に心構えとして、「常に攻める気持ちを忘れない」ということを肝に銘じておいて欲しい。
「どうせ速いボールはほとんど来ないだろう」などと思ってゆったりと試合をしていると、必ず痛い目に合う。劣勢に陥ってから急に攻めようとしても、うまくいかず、相手の術中にハマってしまうことが多い。
粒高やカットマンといった守備型の選手達は、試合が長引けば長引くほど強くなってくる相手が粒高でも、攻撃マンと対峙するとき同じような姿勢で、強気で積極的に戦おう。そして3-0で押し切ってしまうのが最も良いのだ。
まとめ
いかがだっただろうか。今回は戦型別対処法として、粒高対策について考えてみた。
初心者や中級者、また粒高を苦手だと考えている人にとって、参考になれば幸いである。