【異論反論大歓迎】「卓球を知らない人に伝えたい!スゴ技」で打線組んだ 2019ver. | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

卓球×エンタメ 【異論反論大歓迎】「卓球を知らない人に伝えたい!スゴ技」で打線組んだ 2019ver.

2019.12.31

文:ラリーズ編集部

2019年もいよいよ年の瀬。日本選手の魂がぶつかりあった五輪代表争いもひとまず決着を迎え、選手のみならず、卓球ファンの皆様もほっと一息ついている時期だろうか。

しかし、我々編集部にはまだ一仕事残っている。そう、この企画である。

>>前回記事はこちら!打線組んだver.2

今年誕生した信じられない名プレーを、卓球プレイヤーだけでなく、卓球を知らない人にも届けんとする、Rallys編集部渾身のこの「打線組んでみた」企画。皆様、覚えているだろうか?

今回も、卓球界の最前線にいた我々編集部員が、総力を挙げて、数ある卓球動画から選び抜いた本気の打線をご紹介する。もちろん、毎度のごとく異論反論大歓迎。「いやいや、この選手ならこのプレーの方がすごい」「ちょっと待て、この選手のこのプレーが入っていないのはおかしい」など、皆様のご意見、是非頂戴したい。

それでは、編集部員の選んだ、選手たちのファンタスティックな技に酔いしれていただこう!

Rallys編集部が選ぶ「『卓球を知らない人に伝えたいスゴ技』で打線組んでみた」ver.3

1(遊) 台の隅の隅!世界女王・劉詩雯のフォアロングサーブ


写真:劉詩雯(リュウスーウェン・中国)/提供:ittfworld

概要:2019年女子ワールドカップ決勝 劉詩雯(リュウスーウェン・中国)vs 朱雨玲(ジュユリン・中国)

今年の世界選手権で、悲願の優勝を果たした女王・劉詩雯。過去10年間、世界選手権シングルスでは、優勝にあと1歩手が届かず「無冠の女王」とも呼ばれていた彼女の涙に、心を動かされた卓球ファンも多かっただろう。そんな彼女が、女子ワールドカップ決勝でみせたフォアロングサーブを取り上げる。

2ゲーム目の10-8のシーンで、同じく中国・朱雨玲を相手にみせたこの高速ロングサーブ。一見地味な得点だが、まずこの場面、10-6から相手のナイスプレーで10-8と挽回され、さらに1本目のショートサーブがネットに掛かり、やり直しになったという状況に注目したい。

絶対に1点が欲しい場面で、このロングサーブを選択できる彼女の勇気、そして引き出しの多さに脱帽するしかない。朱雨玲は全く反応できず、ボールはコートを駆け抜けた。さらに、スローで見ると、サーブは台の隅の隅へと、完璧にコントロールされている。もし反応できたとしてもレシーブは困難だろう。何気ない1本に、新女王の戦術、技術が遺憾無く発揮されていたのだ。

2 (二) 1回転リターン!? 速攻の神、張本vs守りの神、サムソノフ


写真:張本智和(木下グループ)/提供:ittfworld

概要:ITTFワールドツアー ドイツオープン 男子シングルスベスト8決定戦 張本智和(木下グループ) vs ブラディミル・サムソノフ(ベラルーシ)

前陣での速攻で相手を圧倒する張本智和と、懐の深いブロックで相手を翻弄する大ベテラン・サムソノフがドイツオープンで対戦。対極的ともいえるプレースタイルの両者がぶつかり合う時、そこに神プレーが生まれる。

得意のチキータレシーブから激しく攻めたてる張本。しかしサムソノフは中陣から的確に返球。気づけば、攻めているはずの張本が、逆に左右に振り回されている。張本の空いたバックサイドに、サムソノフは狙いすまして反撃し、万事休すかと思われた。

が、なんと張本は相手に背を向けてボールを捉え、そのまま流れるように1回転。そして次のボールを、中陣からのバックカウンターで攻撃。これにはさすがのサムソノフもブロックできず。両者の持ち味が存分に発揮された、素晴らしいボールの応酬の末に生まれた名プレーであった。

3(捕)“cloud walker”、許昕のありえないスネークショット


写真:許昕(シュシン・中国)/提供:ittfworld

概要:ITTFワールドツアー ジャパンオープン 男子ダブルス決勝戦 許昕/樊振東(中国)vs ベネディクト・デューダ/邱党(ドイツ)

雲を歩けるくらい軽快で高速なフットワークを持つことから、”cloud walker”の異名を持ち、数々のスーパープレーを生み出してきた許昕。そんな彼が、今年のジャパンオープン、男子ダブルス決勝の舞台で、またしても魔球を放った。

ラリー中、大きくフォアに動かされた許昕。次のボールを、ペアの樊振東が前陣で好反応を見せブロックした結果、空いた許昕のバックサイドにボールが返球される。

ここからは、スーパーマン、許昕の独壇場。

横に動きながら、ボールの底をカットすると、ボールは、まるでブーメランのように曲がり、相手コートへ吸い込まれる。その曲がり具合は、思わず樊振東が身を避けようとするほど。得点した瞬間、高々に右手を突き上げた許昕。目の肥えた日本の卓球ファンを、驚嘆させるスーパーショットだった。

4(三)絶対王者、馬龍の本気。異次元のフォアカウンター


写真:馬龍(マロン・中国)/提供:ittfworld

概要:ITTFワールドツアー 中国オープン 男子シングルス準決勝 馬龍(中国) vs 張本智和(木下グループ)

世界選手権シングルス3連覇を果たした絶対王者、馬龍。衰え知らずのそのフォアハンドは、今年も何本も相手のフォアサイドを打ち抜いた。様々な彼の一撃カウンタードライブの中でも、もっとも印象深かったのがこちらのプレーだ。

舞台は、今年の中国オープンの男子シングルス準決勝。ホームで日本の若武者、張本と激突した。1ゲーム目は16-14で張本が取り、2ゲーム目は逆に14-16で馬龍が取り返す、白熱した展開となったこの試合。ホームのファンの前で負けるわけにはいかない馬龍は、ゲームカウント2-1でリードを奪い、迎えた第4ゲーム中盤で、驚きのショットを放つ。

張本は、ミドルにきたツッツキに対し、やや体勢を崩しながらボールをしっかり引きつけて全力でループドライブ。普通なら回転量に負けてしまうのを恐れ、安全に入れにいきたくなってしまうが、馬龍はそのボールに対し、フルスイングでカウンター。目にも留まらぬ速さでボールを張本のフォアサイドに突き刺さした。

これが絶対王者の本気なのか。あまりにも凄まじいフォアカウンターだった。

5(中)これは取れない!ゴジの横回転バックカット


写真:シモン・ゴジ(フランス)/提供:ittfworld

概要:世界卓球2019 ブダペスト大会 男子シングルスベスト16決定戦 シモン・ゴジ(フランス)vs 許昕(中国)

今年の世界選手権で、3番にも登場した、優勝候補の中国・許昕を破り、世界の卓球ファンを驚かせたゴジ。当たりだすと手のつけられない両ハンドドライブで、許昕を打ち砕いた。時折見せるトリックプレーもインパクト抜群の選手だ。

このラリー、フォア対フォアの引き合いとなり、許昕が得意のカーブドライブを連発。ゴジを不利な体勢へと追い込んだ。しかし、ゴジは難しい体勢から、ボールの側面をえぐるように切り、強烈な横回転をかけて許昕のドライブを返球。あまりの回転量に、合わせにいった許昕のボールは、完全にコートの横に逸れていく。許昕のお株を奪うような、創造的な一球。フランスのトリックスターが、また一つ、名プレーを演出した。

6(一)イングランドのエース、ピッチフォードの背面打ち


写真:リアム・ピッチフォード(イングランド)/提供:ittfworld

概要:ITTFワールドツアー オーストリアオープン 男子シングルス1回戦 リアム・ピッチフォード(イングランド) vs 水谷隼(木下グループ)

中陣から、長い手足を生かして強烈な両ハンドドライブを放つ、イングランドのエース・ピッチフォード。今年のワールドカップ団体戦では、予選リーグで張本智和、丹羽孝希を破り、日本の卓球ファンに鮮烈な印象を残した。そのピッチフォードがみせた、信じられないスーパーショットがこちら。

オーストリアオープンでの、日本の大黒柱、水谷隼との一戦。ハーフロングのサーブを出した水谷は、ピッチフォードの軽く起こしたボールに対し、回り込んでがら空きのバックサイドに返球した。完全に決まったと思われたボールだったが、ピッチフォードは、その長い手を後ろに回し、背面打ちで逆にクロスに打ち返し得点した。その美技に、思わず感嘆し、親指を立てた水谷。ちなみにピッチフォードは、この試合でもう一度背面打ちを決めている。まさに、背面打ちマスターといっても過言ではないだろう。

7(左)ドイツのレジェンド、ボルの驚異の反撃


写真:ティモ・ボル(ドイツ)/提供:ittfworld

概要:ITTFワールドツアー 香港オープン 男子シングルス準々決勝 ティモ・ボル(ドイツ)vs 周雨(ジョウユー・中国)

ドイツのレジェンド、ボルが香港オープンでまたもやスーパープレーを披露した。相手は中国の左腕、周雨。

ボルのYGサーブをチキータで狙い、速攻で台から下げた周雨は、ボルのフォアサイドに沈み込むようなドライブを放つ。ここで、カウンターが難しいとみたボルは、なんとカットマン顔負けの低く切れたフォアカットで返球した。意表を突かれた周雨は、安全に返球するも、ボルは、周雨の空いたフォアサイドへ、前に出ながらのバックドライブで攻撃し、ノータッチで得点。38歳にしてこのフットワーク。まさに生ける伝説だ。東京五輪でも日本勢の手強いライバルになることは間違いないだろう。

8(右)天才、丹羽孝希。大舞台でみせたスイッチハンド


写真:丹羽孝希(スヴェンソン)/提供:ittfworld

概要:世界卓球2019 ブダペスト大会 男子シングルス準々決勝 丹羽孝希(スヴェンソン)vs 梁靖崑(リャンジンクン・中国)

これまでも数々のスーパープレーを披露してきた丹羽。ここでは、今年の世界選手権準々決勝で、中国・梁靖崑相手にみせた、スイッチハンドを取り上げる。

5ゲーム目、9-8とリードして迎えた大事な場面。丹羽は、やや浮いたストップを見逃さずバックに払うも、梁靖崑はさすがの反応をみせ丹羽の空いたフォアサイドへ返球。なんとか飛びついて返した丹羽だが、梁靖崑はそれを強烈なフォアドライブで狙い打つ。完全に後手に回ったかのように見えた丹羽だが、ここで、まさかのスイッチハンドを選択。このスイッチハンドがネットインで入り、次のチャンスボールを相手のフォアサイドへ叩き込んで得点した。

これで、流れがさらに丹羽に傾き、勝負は第6ゲーム以降へ。日本男子悲願のメダルに、あと一歩まで迫った。普通ならばラケットを持ち替えるという発想さえ浮かばないだろう。ましてやこの緊迫した場面で持ち替え、しかも成功させるという人間離れした技術。ベンチの倉嶋監督も思わず苦笑いのスーパープレーであった。

9(投)卓球帝国の超新星、孫穎莎の回り込みチキータ


写真:孫穎莎(スンイーシャ・中国)/提供:ittfworld

概要:チームワールドカップ東京大会 女子決勝 孫穎莎(スンイーシャ・中国)vs 伊藤美誠(スターツ)

今年、何度も名勝負を繰り広げてきた宿命のライバル、伊藤美誠と孫穎莎。最後は、孫穎莎が伊藤美誠相手にみせた、渾身のチキータを取り上げよう。

舞台は、チームワールドカップ東京大会の決勝戦。伊藤が2ゲームを先取するも、孫穎莎が負けじと2ゲームを取り返し迎えた最終ゲーム。伊藤が10-7でマッチポイントを握るも、孫穎莎が2本粘り、10-9となった場面である。会場の日本ファンが伊藤の勝利を願う中、伊藤はよく効いていたフォア側からの巻き込みショートサーブを出す。ここで孫穎莎が選択したのは、なんとこれまで1本もみせなかった回り込みのチキータレシーブだった。これがレシーブエースとなり、孫穎莎は拳を握りしめガッツポーズ。まさしく勝利を引き寄せた一本であった。

実はこのポイントを打線に入れるかどうか、かなり悩んだ。ノータッチエースのチキータならば山ほどあるからだ。しかし、考えてみてほしい。フルゲームの10-9で負けている場面、一つのミスで試合が終わってしまう極限状況の中で、これまで一度も見せなかったチキータを選択した孫穎莎の勇気、そして勝負勘を。これは並大抵の精神ではできない。ここに中国の超新星・孫穎莎の凄さをみた。これからも伊藤美誠と孫穎莎のライバル対決に注目していきたい。