勉学も卓球も一流を目指す慶應義塾大学 なぜスポーツ推薦なしでも実力者が集うのか | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:慶應義塾大学メンバー/撮影:ラリーズ編集部

卓球インタビュー 勉学も卓球も一流を目指す慶應義塾大学 なぜスポーツ推薦なしでも実力者が集うのか

2021.09.15

この記事を書いた人
Rallys編集長。学生卓球を愛し、主にYouTubeでの企画を担当。京都大学卓球部OB。戦型:右シェーク裏裏

ハイレベルな関東学生卓球リーグの2部校の中で、唯一スポーツ推薦なしで戦うのが慶應義塾大学だ。

全日本大学総合卓球選手権大会・団体の部(インカレ)に毎年のように出場している。今年の大会でも、予選リーグの東北福祉大戦で0-2から劇的な逆転勝ちを収め、予選を突破した。

レギュラー陣では、主将の林亮宏、副将の窪田直希は、慶應義塾高校からの内部進学組で、インターハイでは学校対抗ベスト16に入っている。3年の岡本優一は桐蔭学園高校から理工学部にAO入試で、2年の田坂宗次郎は広島県・武田高校から一般入試でそれぞれ進学しており、ともに全日本ジュニアやインターハイ出場経験も持つ。


写真:インターハイシングルスベスト32の実績も持つ林亮宏(慶應義塾大学)/撮影:ラリーズ編集部

なぜ慶應義塾大学にはスポーツ推薦がなくとも各地から実力者が集い、全国でも勝ち続けられるのか。

卓球部の魅力や強さの秘訣を探るべく小島威裕監督と選手らに話を聞いた。


【慶應義塾大学卓球部】1928年創部、1937年に体育会に加入。現在は関東学生リーグ2部に所属する名門校。男子は全日本大学総合卓球選手権大会・団体の部(インカレ)に毎年のように出場しており、2021年大会では予選リーグを突破しベスト32。卒業生の進路も大学院、大手飲料メーカー、大手広告代理店、コンサルなど多岐に渡る。株式会社ラリーズの代表取締役・川嶋弘文も慶應義塾大学卓球部OB。

「卓球が好きでやりたい」気持ちが大事

まずは、主将兼エースとしてチームを支える林に慶應義塾大学卓球部の特徴を尋ねた。


写真:林亮宏(慶應義塾大学)/撮影:ラリーズ編集部

――チームをまとめてきた主将から見ると、慶應卓球部はどういうチームですか?
林亮宏:一番は卓球好きな人が多いです。

一般受験して入ってくる人がほとんどですが、体育会卓球部を選んだということは心から卓球が好きだということ。やっぱりそういう人が最終的に強くなりますし、チームの雰囲気を良くしてくれます。


写真:林亮宏(慶應義塾大学)/撮影:ラリーズ編集部

林亮宏:卓球が好きでやりたいという気持ちと、あとは強くなりたい気持ち。この2つが慶應卓球部でやっていく上で大事な部分かなと思います。

「いつか努力は報われる」卓球で培ったこと

副将の窪田直希はどうか。主将の林とは慶應義塾高校からの同期で、インターハイ学校対抗ベスト16の実績を持ち、大学でもチームの勝利に貢献してきた男だ。


写真:インカレの東北福祉大戦、5番シングルスでチームを救う勝利をあげた副将の窪田直希(慶應義塾大学)/撮影:ラリーズ編集部

――どういう選手に慶應義塾大学卓球部に入ってきてほしいですか?
窪田直希:慶應の卓球部は卓球が好きで上手くなりたい選手がたくさんいます。その中でも「ハングリー精神が豊富な人」に入部してもらいたいです。

我々の部では良い意味で先輩後輩関係なく刺激しあっています。そのため、卓球で強くなることに飢えている選手が入ってくれたら、より良い部になると思います。

――慶應卓球部での生活も含めて、卓球で培ってきたものを今後どう生かしていきたいですか?
窪田直希:14年間の競技生活で、多くのことを学んできました。一つ挙げるならば、「いつかは努力は報われる」ということです。

自分が団体戦の戦犯にいくらなろうが、全国大会に出れなかろうが、めげずに努力を続けていれば、今回のインカレのように最後に結果はついて来てくれます。

社会人になってから自身の夢に向かう道中で挫折しそうになっても、諦めずに努力し続け、いつか自分の夢を叶えたいと思います。

インカレでチームを救った理工学部3年の岡本優一

続いては理工学部に所属する3年生岡本優一だ。インカレの東北福祉大戦では、4番シングルスで勝利し、チームを予選リーグ突破に導いている。

桐蔭学園高校時代には、現主将の林、副将の窪田を擁する慶應義塾高校のライバルとして神奈川県下でプレーした。


写真:岡本優一(慶應義塾大学)/撮影:ラリーズ編集部

――なぜ慶應義塾大学に進学されたのでしょうか?
岡本優一:高校時代から対戦していた林さんや窪田さんら強い選手が内部進学することも魅力でしたし、一番の理由は勉学と卓球の両方を高いレベルでやっていけるところです。


インカレでの岡本優一(慶應義塾大学) 東北福祉大戦で4番シングルスで勝利

岡本優一:卓球では関東学生リーグ2部に所属していて、かなり強い選手と試合ができる機会もありますし、一方で勉学の方もしっかりと自分の学びたい化学と生物の融合領域分野を理工学部で勉強できるので進学を決めました。

受験勉強は「卓球に比べたら楽」

2年生の田坂宗次郎は、AO入試で慶應義塾大学にチャレンジするも不合格、そこから一般入試に切り替え、見事合格を掴み取った。


写真:田坂宗次郎(慶應義塾大学)/撮影:ラリーズ編集部

――慶應義塾大学卓球部に入るために1日10時間ペースで勉強したと伺いました。キツくなかったですか?
田坂宗次郎:卓球で精神的に追い込まれた状況には慣れていたので、卓球に比べたら楽だなと思いながら過ごしてました(笑)。
――卓球で培われたメンタルが活きたんですね(笑)。

そこまでして慶應に入りたかったのはなぜですか?

田坂宗次郎:元々大学は勉強で進学しようと考えていて、慶應には6年ほど上の高校の先輩が入部していて、その人の影響もありますし、卓球も勉強も高いレベルでしたいと思って、慶應を目指しました。

実際に入ってみて、勉強と卓球のどちらにも偏らずに両立している人が多くて、自分も刺激を受けています。


写真:田坂宗次郎(慶應義塾大学)/撮影:ラリーズ編集部

勧誘面での工夫は「慶應のファンを作る」

チーム作りを担う小島威裕監督には、部員勧誘について尋ねた。スポーツ推薦のない中で、どのように実績のある選手を引っ張ってくるのだろうか。


写真:慶應義塾大学卓球部の小島監督/撮影:ラリーズ編集部

――スポーツ推薦が無い中で実績ある選手を勧誘するにあたり、何か工夫している点はありますか?
小島監督:まず前提として、スポーツ推薦はないですが、だからどうということは実はあまり意識したことがないんですよね。

スポーツ推薦が無い大学の中でのトップを目指してるわけではない、という前提を理解していただく必要があると思います。


写真:練習を見守る慶應義塾大学・小島威裕監督(写真中央)/撮影:ラリーズ編集部

小島監督:そうは言っても、実力のある選手には入ってほしいです。

全国大会出場レベルの選手やトップ層の選手にも声をかけつつ、一言で言うと「慶應のファンを増やす」ことを意識しています。


写真:慶應義塾大学の練習風景/撮影:ラリーズ編集部

――ファンを増やすとは具体的にはどういうことでしょうか?
小島監督:卓球部の価値を理解してもらって、努力して入ろうと思ってもらうことです。

ただ、それは結構地道な努力なんです。例えば、関東大会に行って頑張ってほしい子には直接声をかけて、少しでも興味持ってもらったら、よりファンになってもらうための話をする。他にも学生がSNSやブログで発信もしてくれています。

インカレでレギュラーとして出場した岡本(優一)や田坂(宗次郎)は、高校のときに慶應のファンになってくれていました。そういう高校生を増やしていきたいと思ってます。


写真:慶應義塾大学卓球部の練習風景/撮影:ラリーズ編集部

――監督から見たときに、慶應義塾大学卓球部に合うのはどのような学生でしょうか?
小島監督:どういう人が合うかというより、どういう人が欲しいかだと、努力ができる人です。慶應に入るまでにはすごく努力が必要ですし、入ってからも努力する人が欲しい

慶應の体育会では、勉学も卓球もどちらも死に物狂いで一流を目指す“文武双全”を掲げています。

文武双全に共感でき、チャレンジしようという気持ちがある人に入ってきてほしいと思っています。


写真:慶應義塾大学卓球部/撮影:ラリーズ編集部

卓球にも勉学にも努力し、文武双全に挑む学生が慶應義塾大学卓球部には集っている。

潜入・大学卓球部

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