なぜスポーツにお金が集まらないのか?琉球アスティーダ代表が語る3つの理由 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:琉球アスティーダスポーツクラブ代表の早川周作氏/提供:琉球アスティーダスポーツクラブ

卓球インタビュー なぜスポーツにお金が集まらないのか?琉球アスティーダ代表が語る3つの理由

2021.12.19

卓球Tリーグ2020-2021シーズンに初めてTリーグの頂点に立った琉球アスティーダ。奇しくもチームの初優勝と同日に琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社の上場承認の対外公表が行われました。日本のプロスポーツチームの株式上場は史上初めてのことでした。

琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社代表は早川周作さんです。早川さんは、元々ビジネス畑の人間で、スポーツ、特に卓球とは無縁の人間でした。

そんな早川さんが「経営者人生をかけてつくりあげる」と決心したのが琉球アスティーダスポーツクラブなのです。

早川さんは琉球アスティーダスポーツクラブでの経験を通して、「なぜ、スポーツにお金が集まらないのか」を考察し、株式上場を決意。そして見事成し遂げました。

今回は、「スポーツにお金が集まらない理由」を早川さんの新著『琉球アスティーダの奇跡』より抜粋してお届けします。

なぜ、スポーツにお金が集まらないのか

卓球チーム「琉球アスティーダ」の運営会社を立ち上げ、日々足を棒にしてスポンサー開拓のための企業訪問を繰り返しながら、各企業で同じようなことを幾度も言われました。

「早川さんのプレゼンはとても素晴らしいです。でも、我が社は現在株価が低迷していて、スポーツチームのスポンサーになることは無理です」

僕がこれまでの仕事で知り合った仲間の中には、無理を承知のスポンサー依頼に「早川さんの役に立てるなら嬉しいです」と何も言わずに承諾してくれた人もいました。一方で「早川さんのビジネスだったらいくらでも出資したいよ。でもスポーツチームのスポンサーは、難しい」と言われることも多かったのです。

企業の株主であれば、株価の上昇・リターンを期待できます。しかし、スポーツチームのスポンサーの見返りが見えづらいのは、その時点での明白な事実でした。いくら卓球を、スポーツを盛り上げたい!と志を熱く語っても、結局どれくらい自社のロゴがアピールできるのかという「露出換算」の話に帰結してしまうのです。

訪れた企業も仲間たちも言った、同じようなセリフ。これで、僕はスポーツ業界にある根本の課題に気がつくことになります。

こんなにも夢と感動を与えるスポーツに、なぜ日本人はお金を出さないのだろう。

中世の時代からスポーツや芸術は、どれほどテクノロジーが進化し AIが当たり前の世界になっても、それ自体が消えるものではありません。なぜかというと、エモーショナルなもの、人の心を揺さぶるものだからです。

スポーツは時代を超えて残っていく価値の高いものなのです。2021年に開催された東京オリンピック(TOKYO2020)も、新型コロナウイルスの感染者が増え続ける中での開催で問題も山積していました。

しかし全力で競技に挑む選手の姿や数々の奇跡のようなシーンに人々は熱狂し、感動しました。そういう価値の高いものにお金が集まらない、お金が循環しないという状況に、僕は疑問を持ったのです。

僕は興味があることについてはとことん突き詰めて調べ考える、オタク気質なところがあります。琉球大学で客員教授をしたり、MBAビジネススクールで講師をしたりしていますが、経営を理系的視点から分析していくのが得意なのです。

このときも海外のスポーツチームの事例を含め、片っ端から研究しました。イギリスでは法人の20%がスポーツに出資していると言われているのに、日本はたったの5%ほど。お金が集まらないとき、またビジネスがうまくいかないとき、その背景には必ず理由があります。

野球やサッカーはもちろん、様々なスポーツチームそれぞれが抱える事情やスポンサーとなる企業の意向を調べ上げ、スポーツ業界にお金が集まらない三つの理由に僕なりに辿り着きました。

1.ガバナンス(統治)がきいていないこと

経理と財務が分かれていなかったり、内部監査がされていなかったり、監査法人や証券会社がついていないなど、企業にあるべき規定が定まっていない。つまり、企業としての体がなっていないから、いくらスポーツの素晴らしさを理解しても、どうなるか分からない未来を信じて企業がお金を払うことはできないのです。

2.ディスクロージャー(情報公開)がされていないこと

PL(損益計算書)や ディスクロージャー(情報公開)がされていないこと BS(貸借対照表)などの財務諸表を開示したがらない体質 をはじめ、情報を外に出さず閉鎖的なケースが多く見られ、これも不信感のひとつとなっていると考えました。

3.上場会社が1社もないこと

市場からプライシングを受けていないということは、公正な評価が得られていないということです。

価値があいまいな企業にビジネスとしてお金を出したいと思う人はいません。上場しているスポーツチーム運営企業がないということ、それはつまり「スポーツは儲からない」と認識されているということです。

株式上場を決意する

スポンサーが見つからない理由は見えました。つまり、適切な市場から、適正なお金を、適正に集められる仕組みをスポーツ業界は持っていなかったのです。それでは、それをどう解決していくのか。僕が出した結論は、「我々のチーム、琉球アスティーダが、日本のスポーツチームとして初めての株式上場を成し遂げよう」ということでした。

誠意を持って出資してくれた企業へ、誠意を返す。ビジネスとして、当たり前のことをしよう。スポンサーになるメリットが「選手の胸に企業名がつく」ということだけではなく、またそもそもスポンサーやチケット収入に頼った仕組みではなくて、我々はスポーツを基軸としたBtoC、BtoBのマーケティング会社をつくろうと決めました。

そして設立から3カ月後には上場に向けた準備を始めました。 僕はそれまで中小企業の上場をサポートしてきた経験から、様々なケースを見ていましたが、今回の上場にはよりいっそうの困難が待ち受けるだろうということは予測していました。

しかし現状を変えるにはこれしかないという、不退転の気持ちで臨みました。僕を待ち受けていたのは想像した通り、いや、想像以上の困難でした。

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