琉球アスティーダはなぜ上場したのか 早川社長に聞いてみた | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:早川周作社長(琉球アスティーダ)/撮影:ラリーズ編集部

卓球インタビュー 琉球アスティーダはなぜ上場したのか 早川社長に聞いてみた

2021.03.31

取材・文:川嶋弘文(ラリーズ編集部)

30日、卓球Tリーグ男子・琉球アスティーダを運営する琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社(以下、琉球)は、東京証券取引所が運営する特定投資家向け株式市場TOKYO PRO Market(以下TPM)へ上場した。

琉球の2020年12月期の業績は年商約4億円。

卓球業界には琉球を超える事業規模のメーカーや、実業団チームを持つ上場企業は存在するが、意外にも卓球関連事業を本業とした上場企業は琉球アスティーダが初となる。

2018年2月の創業から約3年でのスピード上場。その目的と今後の成長戦略とは。東京証券取引所で上場の鐘を鳴らした直後の早川周作代表を直撃した。

>>卓球・琉球アスティーダ、国内プロスポーツチーム初の上場

琉球アスティーダ上場の要因と目的

――この度は上場おめでとうございます。審査も大変だったと思いますが、どんな点が認められて上場が承認されたのでしょうか?
早川周作社長(以下、早川):
いつもご取材ありがとうございます。創業から約3年間のスポーツ関連事業、飲食関連事業での着実な伸びと、ガバナンス体制が評価されました。

――すばり上場の目的は?監査や上場維持に今までより余分なコストがかかると思うのですが。
早川:
全ては夢と感動を与えるスポーツ産業に新たなお金の循環を創る為です。

確かに監査法人、証券会社、ガバナンス整備等々で5000万円以上は投資をしています。

これまでスポーツ業界に関わってこなかった私がスポーツ業界に入り、様々な矛盾を感じ、それでも夢と感動を与えるスポーツに新たなお金の循環を創る成功モデルを作る事が必要だと感じました。

その歴史を変える作業の為には決して大きな投資ではないと思っています。

――なぜ東京プロマーケット(TPM)への上場を選んだのですか?
早川:
まずファーストステップとして、スポーツとTPMは非常に相性が良い。TPMをほとんどの皆様が誤解しており残念なのですが、活用の方法次第で本当に有益です。

例えば、LINE元社長の森川さんが代表を務める「C Channel」もTPMに上場して200億以上の時価総額になっています。

――琉球アスティーダが他の上場企業と異なる点について教えて下さい。
早川:
地方の時代が進行する中で地域の中でスポーツを支える株主のコミュニティを作り、そこに経済圏を創り地方でもチーム運営できる新たな仕組みを創りたいと思っています。

それが地方創生に繋がる。そして、この度は人口2万人の中城村から初めての上場会社になる。地方都市どころか南の島の村からでも挑戦できる事を証明できた。

――TPMへの上場で公募・売り出しはしないとのことですが、今後の資金調達のご予定は?
早川:
当社は資本金100万円からのスタートでしたが、上場時株価により時価総額が10億円を超えました。マイナースポーツチームとしては今は十分な株価と言えると思います。あくまでこれがスタートラインです。

沖縄の地元企業の皆さまにもっと応援いただけるような形で近々大きな資金調達を検討してますが、まだ確定ではないので、楽しみに待って頂ければ嬉しいです。

ガバナンスと成長戦略について


写真:琉球アスティーダ/撮影:ラリーズ編集部

――上場のメリットとして「会社のイメージアップ」もあると思います。企業は公器ですので透明性の観点から情報開示の重要性は大きいですよね。また今後はESGの観点からもガバナンスが重視されると思います。現在早川社長が支配株主になられていますが、アスティーダのガバナンスをどう考えているのでしょうか?
早川:
経理、財務、内部監査、監査法人、証券会社、様々な視点でガバナンスが効いてる状況で経営してるからこそ上場できました。

他の上場会社でもオーナーが過半の株主を持ってる会社が多く、支配株主とガバナンスは全く別問題と考えています。

――今後の成長戦略について、ジャスダック、マザーズ等へのステップアップも考えているのでしょうか?
早川:
既に昨年から福岡証券取引所とのやり取りを含め、東京証券取引所のグロース(現マザーズのイメージ)に2023年には鞍替えする準備を進めています。

決して急ぐ訳ではなく、毎年20%~30%の成長曲線を描く想定でいます。ステークホルダーの皆様と共に着実に確実に突き進み5年以内に時価総額50億円、10年以内に時価総額100億円の企業に育てていきたいです。


写真:琉球アスティーダ代表の早川周作氏(写真左)/撮影:ラリーズ編集部

――沖縄の観光資源を利用して沖縄県以外のアスティーダファンの拡大などを考えているのでしょうか?また、沖縄でチームの練習拠点を作る計画はありますか?
早川:
世界中からスポーツの合宿を受け入れできる環境を持った施設を沖縄に建設することを考えています。卓球ではITTF(国際卓球連盟)の国際大会を沖縄に誘致し、インバウンドでのホテル需要なども取り込みたいと考えています。

また沖縄での成功モデルを九州、関西、東北、北海道へと広げていく計画もあります。さらに卓球だけでなくメジャーなスポーツへの参入もいくつか検討してる案件があります。

オーナーとして、チームや業界との向き合い方は


写真:Tリーグ初制覇を果たした琉球アスティーダ。ベストファン賞も受賞/撮影:ラリーズ編集部

――Tリーグには毎試合帯同されていましたね。選手、監督が試合後のコメントで必ず早川さんの名前を出し、信頼されているように思います。どんなことを意識してチームと接しているのでしょうか?
早川:
僕はチームを心から愛してる。愛するチームと共に行動するのは当たり前。チームと共に自分も成長し、最高&最強の世界ナンバーワンのチームへの育てていきたいですね。

――卓球を知らないのに卓球チームのオーナーになって苦労したことや、逆に卓球を知らなくてよかったことはありますか?
早川:
単刀直入に苦労の連続でした。私の経歴や取り組んでる内容も理解していないのに根拠のない噂を流されたり、非常にユニークな経験をした(笑)

全ての人から理解をされようとは思わないですが、自己中心的な方や、また卓球の事だけで、経営を理解できない方から冷たい言葉を受けたことは今でも明確に憶えています。でも、だからこそ、結果で証明するしかなかった。

初年度最下位からTリーグ優勝、そしてプロスポーツチームとして初めての上場ができ少しづつ形になってきた。

実際、卓球業界の実情を知っていたらチームを引き受けなかったと思うので、知らなくて良かったかなと思います。

スポーツビジネス、他の業界との違いは


写真:オフシーズンに講演する吉村真晴(琉球アスティーダキャプテン)/提供:一般社団法人卓球ジュニアサポートジャパン

――スポーツビジネス、特にチーム運営について、ほかのビジネスとの違いや独特だと思うことを教えて下さい。
早川:
自分の力が及ばないところで結果が出るところですね。試合では選手を信じて結果を待つしか無いですから。

資金力があり、有名選手を何人も獲得できるチーム以外は、選手、監督との心からの信頼関係がなければ優勝はできないと思います。

――卓球というスポーツにビジネスとしてどういう価値や可能性を感じますか?
早川:
日本のマーケットより、卓球人口が急増してる地域で勝負をかけたら大きなビジネスチャンスがあると思います。

――国内プロスポーツチーム初、卓球業界初の上場、又クラウドファンディングを実施した企業の初の上場ということになり、大変話題性もあります。スポーツファン、卓球ファンに一言お願いします。
早川:
卓球というプロスポーツとしてはマイナーな競技、それも人口2万人の村(中城村:なかぐすくそん)からでも上場ができた。

是非、多くの方に一度限りの人生、二度ない人生なので様々なチャレンジをして欲しいですね。

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写真:吉村真晴/撮影:伊藤圭

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