春。
卓球Tリーグの選手、監督たちの移籍情報に、卓球ファンたちの気もそぞろだ。
T.T彩たまの監督を1stシーズンから4季務め、独自のチーム運営でTリーグを盛り上げた坂本竜介氏も、この3月に惜しまれながら退任した。
いまだから語れる、Tリーグ監督生活について、ゆっくり話を聞いた。
写真:坂本竜介氏/撮影:槌谷昭人
春は最高であり最悪
T.T彩たまの監督をさせてもらって、本当に感謝しかないです。監督をしてなければ会えなかった人ばかりだし、知らなかったことばかりなので。
だから春は最高であり、最悪なんです。今年はそれをやらなくていいっていうことが一番すっきりしてます(笑)。
写真:坂本竜介氏/撮影:槌谷昭人
僕たちにはタイムリミットがある
“優勝して人気のあるチームにする”っていう同じ方向を向くために、4月から、とにかく毎日コツコツ、コミュニケーションをとっていくってことです。週に5日は練習場で一緒にいましたからね。上田なんて帰る電車も一緒で、またお前と一緒かよって(笑)。
写真:坂本竜介(写真左)と上田仁(写真右)/撮影:田口沙織
背中を見せてついて来い、とか言うじゃないですか。あれは時間がかかるわけですよ。
僕たちには、契約というタイムリミットがある。早い段階で信頼してもらわないといけないから、くだらない話もたくさんして、重要なときは絶対にミーティングをして、同じ方向を向いていくんです。
写真:坂本竜介氏/撮影:槌谷昭人
できたこと、やり残したこと。
自分としては好かれようとは全く思わず、突っ走ってきただけだったので。
賛否両論がある世界で、新しいものを作って勝負するんだから、仕方がないですよ。
でもそこで作り続けていけば、次はあの人なにやってくれるんだろうって、面白味に変わっていくんです。
写真:坂本竜介氏/撮影:ラリーズ編集部
あとは、批判ではないんですが、Tリーグが発展していない事実は、日本卓球界としても真剣に考えないといけない。これは正直1チーム単位ではできないこともありました。
※プレーオフファイナルの篠塚(T.T彩たま)-及川(木下マイスター東京)戦、最終ゲーム8-9から篠塚がサービスミスした失点のこと
チーム運営スタッフにもみんな、どんどんプロ精神が生まれてきましたよね。動きが早くなったり、先々を考えてトライしたり。チームの中で一人でできることなんて限られているので、特に3季目以降、みんなが率先して動くようになって、チームも成長したと思います。
写真:ファンが掲げたボード/撮影:ラリーズ編集部
指導者としてアップデートし続けた
ただ、みなさん勘違いしているのは、練習場があることが環境じゃないんです。そこで指導者がどうかなので、自分が指導者としての質を上げてアップデートし続けないと選手に信用されない。
毎日毎日勉強でした。
選手は“坂本さんうるせぇな”って思ってたかもしれないけど(笑)、でもたぶん、その熱意って今の選手には嬉しいことで。
そうして選手が良い形になっていけば、また自分自身もアップデートしないといけなくて。
僕自身も、選手を強くするってことがどんどん面白くなっていきましたね。
僕自身も、トップ選手たちをここまで毎日指導したことはなかったので、自分は指導するのがめっちゃ好きなんだということに気づきました。
写真:篠塚大登(T.T彩たま)/提供:T.LEAGUE/アフロスポーツ/アフロ
心にナイフを
写真:坂本竜介氏/撮影:槌谷昭人
でも、正直言えば、つらい夜もありました。心にナイフをグサグサ刺されている感覚。
一番救われたのは、やっぱり家族です。奥さんも8歳の娘も、自分のことを理解してくれていて、奥さんは“いつでもあなたの応援をしているし、辞めたいと思ったらいつでも辞めればいい”って言い続けてくれました。
結婚している意味を知った4年でした(笑)。
写真:坂本竜介氏/撮影:槌谷昭人