"嫌われ役"に徹した坂本竜介「心にナイフをグサグサ刺される感覚」卓球Tリーグ監督生活振り返り | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:坂本竜介氏/撮影:槌谷昭人

卓球インタビュー “嫌われ役”に徹した坂本竜介「心にナイフをグサグサ刺される感覚」卓球Tリーグ監督生活振り返り

2022.04.05

この記事を書いた人
1979年生まれ。テレビ/映画業界を離れ2020年からRallys編集長。
軽い小咄から深堀りインタビューまで、劇場体験のようなコンテンツを。
戦型:右シェーク裏裏

春。
卓球Tリーグの選手、監督たちの移籍情報に、卓球ファンたちの気もそぞろだ。

T.T彩たまの監督を1stシーズンから4季務め、独自のチーム運営でTリーグを盛り上げた坂本竜介氏も、この3月に惜しまれながら退任した。
いまだから語れる、Tリーグ監督生活について、ゆっくり話を聞いた。


写真:坂本竜介氏/撮影:槌谷昭人

春は最高であり最悪

――多くの人に惜しまれながら、監督を退任しました。4年前、監督を引き受けるとき、今の自分の姿を想像できましたか?
坂本:いや、全然です。当時自分は33歳で、“監督を始めるときよりも成長した姿でいよう”とは心に決めてましたけど、想像していたよりも成長できたのかもしれないなあと。

T.T彩たまの監督をさせてもらって、本当に感謝しかないです。監督をしてなければ会えなかった人ばかりだし、知らなかったことばかりなので。

――4年間で一番嬉しかったことって何ですか。
坂本:毎年この時期の、獲りたい選手との契約が成立した、継続したい選手と継続できた瞬間が一番嬉しく、プラスの方向に心が揺さぶられるときでしたね。自分はGM(ゼネラルマネージャー)的なポジションだったというのもありますが。
――悲しかったことは?
坂本:それもやっぱり契約の話で、更新したい選手と契約更新できなかった、獲りに行って獲れなかったときは悲しかった。好きな人に振られるようなものです。
だから春は最高であり、最悪なんです。今年はそれをやらなくていいっていうことが一番すっきりしてます(笑)。


写真:坂本竜介氏/撮影:槌谷昭人

僕たちにはタイムリミットがある

――でも、そうやって自分で交渉して契約した選手たちも、シーズンに入ると使わない選択もしないといけないわけですよね。その葛藤には、どう整理をつけていたんですか。
坂本:Tリーグという団体戦は、協調性を絶対に持たせないといけないんです。

“優勝して人気のあるチームにする”っていう同じ方向を向くために、4月から、とにかく毎日コツコツ、コミュニケーションをとっていくってことです。週に5日は練習場で一緒にいましたからね。上田なんて帰る電車も一緒で、またお前と一緒かよって(笑)。


写真:坂本竜介(写真左)と上田仁(写真右)/撮影:田口沙織

――でも、出られない選手は悔しいですよね。
坂本:もちろんです。だからこそ信頼関係なんですよ。特に監督がやるべきことは、言動で引っ張っていくってことなんです。

背中を見せてついて来い、とか言うじゃないですか。あれは時間がかかるわけですよ。
僕たちには、契約というタイムリミットがある。早い段階で信頼してもらわないといけないから、くだらない話もたくさんして、重要なときは絶対にミーティングをして、同じ方向を向いていくんです。

――よく、坂本さんから“ミーティング”という言葉を聞いた気がします。
坂本:言動で引っ張るってことは、自分でもやりすぎだろうっていうくらい意識してやってました。


写真:坂本竜介氏/撮影:槌谷昭人

できたこと、やり残したこと。

――4年の監督生活で、できたこと、やり残したことは何ですか。
坂本:できたことって正直わからないんですけど、でもふっと感じたのは、僕の退任のリリースが出たときの反響が「ええ!」の一色で。やっと退任だよとかの反応もあるかと思ったんですけど、ゼロで(笑)。その後のファンミーティングでもみんな泣いてくれて。あれ、みんな俺のこと好きじゃん、みたいな(笑)。

自分としては好かれようとは全く思わず、突っ走ってきただけだったので。

――主張も行動も、はっきりしてましたね。
坂本:嫌われ役って、いいですよ。自分が嫌われておけば、他の人が満足できることも多いし、嫌われてるってことは、また突拍子もないことをやれるってことなので。

賛否両論がある世界で、新しいものを作って勝負するんだから、仕方がないですよ。

でもそこで作り続けていけば、次はあの人なにやってくれるんだろうって、面白味に変わっていくんです。

――そのスタイルは昔から?
坂本:ちっちゃいときから変わらないですね(笑)。


写真:坂本竜介氏/撮影:ラリーズ編集部

――じゃあ、やり残したことは?
坂本:優勝してないことでしょう。僕も元選手なので、やっぱり悔しくてしょうがないですよ。篠塚、なんだよ最後のそのサービスはって(笑)。でも負けて悔しい精神がなくなったら、この世界の仕事は辞めるべきでしょうね。

あとは、批判ではないんですが、Tリーグが発展していない事実は、日本卓球界としても真剣に考えないといけない。これは正直1チーム単位ではできないこともありました。

※プレーオフファイナルの篠塚(T.T彩たま)-及川(木下マイスター東京)戦、最終ゲーム8-9から篠塚がサービスミスした失点のこと

――同感です。ただ、外から見てて面白かったですよ、坂本さんのチーム運営は。3rdシーズンの13連敗でさえ物語になっていた。
坂本:負けるほどファンが増えていったという(笑)。ありがたいです。勝っても負けても応援してもらえるチーム作りが少しはできたのかなと。

チーム運営スタッフにもみんな、どんどんプロ精神が生まれてきましたよね。動きが早くなったり、先々を考えてトライしたり。チームの中で一人でできることなんて限られているので、特に3季目以降、みんなが率先して動くようになって、チームも成長したと思います。


写真:ファンが掲げたボード/撮影:ラリーズ編集部

指導者としてアップデートし続けた

――振り返ると、やっぱり最初に練習場を作って、そこで一緒に過ごしたっていうのがT.T彩たまにとって大きかったですか。
坂本:一番大事だったと思います。

ただ、みなさん勘違いしているのは、練習場があることが環境じゃないんです。そこで指導者がどうかなので、自分が指導者としての質を上げてアップデートし続けないと選手に信用されない。

毎日毎日勉強でした。

――どうやってアップデートするんですか?
坂本:YouTubeで、今の中国選手の練習映像全部見たり、ティモ(・ボル)、オフチャロフ、カルデラノの映像見ながら、平行足じゃなくてフォアが右足前になってるな、だからバックハンドの手が早く出る、とか、めちゃくちゃ細かい話ですよ。

選手は“坂本さんうるせぇな”って思ってたかもしれないけど(笑)、でもたぶん、その熱意って今の選手には嬉しいことで。

そうして選手が良い形になっていけば、また自分自身もアップデートしないといけなくて。

僕自身も、選手を強くするってことがどんどん面白くなっていきましたね。

――事実、世代を問わず、多くの選手がT.T彩たまで進化しました。
坂本:選手からの信頼は、やっぱりそこが一番です。

僕自身も、トップ選手たちをここまで毎日指導したことはなかったので、自分は指導するのがめっちゃ好きなんだということに気づきました。


写真:篠塚大登(T.T彩たま)/提供:T.LEAGUE/アフロスポーツ/アフロ

心にナイフを

――良いこと尽くしじゃないですか。
坂本:ま、いま振り返れば、ですよ(笑)。やってる間は、大変なことが9割でしたけどね。


写真:坂本竜介氏/撮影:槌谷昭人

――だと思います。どう乗り越えたんですか。
坂本:結局自分は、大変なほうが好きなので(笑)。

でも、正直言えば、つらい夜もありました。心にナイフをグサグサ刺されている感覚。

一番救われたのは、やっぱり家族です。奥さんも8歳の娘も、自分のことを理解してくれていて、奥さんは“いつでもあなたの応援をしているし、辞めたいと思ったらいつでも辞めればいい”って言い続けてくれました。

結婚している意味を知った4年でした(笑)。

――美しい締めが出たところで、前編を終わります(笑)。


写真:坂本竜介氏/撮影:槌谷昭人

>>【後編】坂本竜介からTリーグへの提言「“5年生存ルール”は厳しすぎ」「観たことない人がいきなり卓球は観ない  に続く

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