T.T彩たまの監督を1stシーズンから4季務め、独自のチーム運営でTリーグを盛り上げた坂本竜介氏が、この3月、惜しまれながら退任した。
後編は、監督としての戦いを終えた坂本竜介に、いまだから語れる来季のTリーグへの真剣な提言を聞いた。
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代表選考とTリーグは別の職種だ
坂本さんは離れますが、各チームの監督が今まで以上に強いリーダーシップを取らないと、選手起用も難しいと思うんですが。
あくまでTリーグというのは、プロスポーツ興行であり、卓球というものを発展させていく場所なんです。強化の場所ではあるけど、個人が競争する場所じゃない。代表選考とTリーグというのは、大げさに言えば、別の職種だと思ってます。
あくまで例えの話ですが、もし丹羽孝希が他のチームに移籍してT.T彩たまと対戦したとしても、丹羽のファンの方には“丹羽の試合だけは丹羽を応援するけど、チームとしてはT.T彩たまを応援するからね”ってという気持ちが成り立つと思うんです。
写真:4thシーズンのホーム最終戦を終えたT.T彩たまとファンたち/撮影:ラリーズ編集部
4チームしかないということは、活躍できる場所が少ないということです。でも、海外に行くと選考ポイントが獲得しづらくなるという矛盾が生まれる。
五輪選考の基準に入れたのであれば、チーム数も増やして試合に出られる場を作ってあげないと不平等になってしまいます。
写真:坂本竜介氏/撮影:槌谷昭人
“5年生存ルール”は厳しすぎる
チームの経営基盤の大小はあっていいし、弱小チームと強力なチームがあってもいい。強いチームだからって人気があるわけじゃないから。
プロ野球やJリーグみたいに歴史があるリーグじゃないんだから、まずはスタートさせていくことに、もっと謙虚にならないといけないと思います。卓球が五輪でメダル獲っても、まだこの状況なんですから。
※一度参戦すると5年間リーグを脱退できないというTリーグの規約のこと
写真:坂本竜介氏/撮影:槌谷昭人
その先の扉を開けたら卓球の試合がある
アスティーダさんが開催したアスティーダフェスみたいに、そこでしか食べられないもの、体験できないことがあって、その先に卓球があるっていうことだと思うんですよ。そこに出店したい企業を集めるほうを考えたほうが良いと思います。単純に卓球だけをどう見せようかっていう考えは消したほうが良い。
写真:画期的だったイオンモールでのTリーグ開催/提供:岡山リベッツ/T.LEAGUE/アフロ
この2年はコロナで、出店ができないとかお酒が提供できないとか、難しいところも確かにあったんですけど、でもいつまでもコロナのせいにしているわけにもいかない。
これからは、卓球以外で人が集まる要素を先に考えて、その先の扉を開けたら卓球の試合があるからちょっと入ってみよう、というスタイルが良いと思います。
写真:坂本竜介氏(右)/撮影:槌谷昭人
これからの坂本竜介
そして坂本竜介、相変わらず行動が早い。
T.T彩たまの監督退任インタビューを行い、この原稿を準備している間に、もう次の進路が発表された。
丹羽孝希のプライベートコーチ(専属コーチ)に就任するという。
写真;2022年全日本選手権で丹羽孝希のベンチに入った坂本竜介氏/撮影:ラリーズ編集部
現在契約して頂いているミズノさんと一緒に勝負しながら、他の仕事は家族とゆっくり過ごしつつ、半年〜一年くらいかけて決めていこうかなと。
嬉しかったですし、頑張ろうという気持ちになりました。
オファーの中で、最も自分にとって“楽しくもヘビーな仕事を”という基準で考えて“丹羽孝希専属コーチ”という仕事を選びました。
写真:丹羽孝希(T.T彩たま)/撮影:ラリーズ編集部
だからこそ彼なりの考え、ポリシーというのを強く持っています。それがプラスにもマイナスにも働くことがあります。
一年間指導をして、技術的にもメンタル的にもプラスに変わってきた矢先の退任で、私自身寂しい気持ちもありました。そして大げさに言えば、自分しか孝希を強くできないのではないかという自負もありました。
その“強くしたい”という気持ちが、他の仕事に勝ったんだと思います。
技術的に言えば、やることはまだたくさんあります。
バックハンド、守備力、レシーブ、、、まあ、内緒です(笑)。楽しみにしててください。
写真:坂本竜介氏/撮影:槌谷昭人
写真:坂本竜介氏/撮影:槌谷昭人
(終わり)