坂本竜介からTリーグへの提言「"5年生存ルール"は厳しすぎ」「観たことない人がいきなり卓球は観ない」 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:坂本竜介氏/撮影:槌谷昭人

卓球インタビュー 坂本竜介からTリーグへの提言「“5年生存ルール”は厳しすぎ」「観たことない人がいきなり卓球は観ない」

2022.04.06

この記事を書いた人
1979年生まれ。2020年からRallys/2024年7月から執行役員メディア事業本部長
2023年-金沢ポート取締役兼任/軽い小咄から深堀りインタビューまで、劇場体験のようなコンテンツを。
戦型:右シェーク裏裏

T.T彩たまの監督を1stシーズンから4季務め、独自のチーム運営でTリーグを盛り上げた坂本竜介氏が、この3月、惜しまれながら退任した。

後編は、監督としての戦いを終えた坂本竜介に、いまだから語れる来季のTリーグへの真剣な提言を聞いた。

>>“嫌われ役”に徹した坂本竜介「心にナイフをグサグサ刺される感覚」卓球Tリーグ監督生活振り返り

代表選考とTリーグは別の職種だ

――来季は興行としても勝負の年になるでしょうし、Tリーグの個人成績が、パリ五輪代表選考ポイントに加算されます。

坂本さんは離れますが、各チームの監督が今まで以上に強いリーダーシップを取らないと、選手起用も難しいと思うんですが。

坂本:正直言えば、本来ポイントを入れるべきではなかったと僕は思います。

あくまでTリーグというのは、プロスポーツ興行であり、卓球というものを発展させていく場所なんです。強化の場所ではあるけど、個人が競争する場所じゃない。代表選考とTリーグというのは、大げさに言えば、別の職種だと思ってます。

――観る側としては、せっかく紡いできた“チームを応援するストーリー”が成立しにくくなることを危惧しています。
坂本:僕は最初から言ってますが、Tリーグは団体戦なので、チームを好きになってもらわきゃいけない。そこに、地域密着の活動や社会貢献事業を通して、このチームの色が好きだって思ってもらう。

あくまで例えの話ですが、もし丹羽孝希が他のチームに移籍してT.T彩たまと対戦したとしても、丹羽のファンの方には“丹羽の試合だけは丹羽を応援するけど、チームとしてはT.T彩たまを応援するからね”ってという気持ちが成り立つと思うんです。


写真:4thシーズンのホーム最終戦を終えたT.T彩たまとファンたち/撮影:ラリーズ編集部

坂本:Tリーグは、選手の貴重な収入源の場所でもあります。まずは、やっぱり選手がしっかりご飯を食べていける場を作っていかないといけない。

4チームしかないということは、活躍できる場所が少ないということです。でも、海外に行くと選考ポイントが獲得しづらくなるという矛盾が生まれる。
五輪選考の基準に入れたのであれば、チーム数も増やして試合に出られる場を作ってあげないと不平等になってしまいます。


写真:坂本竜介氏/撮影:槌谷昭人

“5年生存ルール”は厳しすぎる

――みんな増やしたいチーム数ですが、どうすれば増えると思いますか。
坂本:新規加入の際の“5年生存ルール”は厳しすぎます。僕は要らないと思ってます。例えば2年で厳しいなってなったら、どこかにM&Aしてもらうっていう発想でもいい。

チームの経営基盤の大小はあっていいし、弱小チームと強力なチームがあってもいい。強いチームだからって人気があるわけじゃないから。

プロ野球やJリーグみたいに歴史があるリーグじゃないんだから、まずはスタートさせていくことに、もっと謙虚にならないといけないと思います。卓球が五輪でメダル獲っても、まだこの状況なんですから。

※一度参戦すると5年間リーグを脱退できないというTリーグの規約のこと


写真:坂本竜介氏/撮影:槌谷昭人

その先の扉を開けたら卓球の試合がある

――“観る卓球”の面白さを、どうやって広げていきますか。
坂本:観たことない人が、いきなり卓球は観ないですよ。でも観た人はみんな面白いって言います。

アスティーダさんが開催したアスティーダフェスみたいに、そこでしか食べられないもの、体験できないことがあって、その先に卓球があるっていうことだと思うんですよ。そこに出店したい企業を集めるほうを考えたほうが良いと思います。単純に卓球だけをどう見せようかっていう考えは消したほうが良い。


写真:画期的だったイオンモールでのTリーグ開催/提供:岡山リベッツ/T.LEAGUE/アフロ

――プレーヤーにも、もっと観てもらいたいですね。
坂本:やっぱり、みんな卓球はやりたいんですよ。自分のやる時間を削ってまで卓球を観に行こうって、なかなかなれない。

この2年はコロナで、出店ができないとかお酒が提供できないとか、難しいところも確かにあったんですけど、でもいつまでもコロナのせいにしているわけにもいかない。

これからは、卓球以外で人が集まる要素を先に考えて、その先の扉を開けたら卓球の試合があるからちょっと入ってみよう、というスタイルが良いと思います。


写真:坂本竜介氏(右)/撮影:槌谷昭人

これからの坂本竜介

そして坂本竜介、相変わらず行動が早い。
T.T彩たまの監督退任インタビューを行い、この原稿を準備している間に、もう次の進路が発表された。

丹羽孝希のプライベートコーチ(専属コーチ)に就任するという。


写真;2022年全日本選手権で丹羽孝希のベンチに入った坂本竜介氏/撮影:ラリーズ編集部

――少し意外な気もしました。
坂本:退任を決めた当初、次の現場は決めてませんでした。

現在契約して頂いているミズノさんと一緒に勝負しながら、他の仕事は家族とゆっくり過ごしつつ、半年〜一年くらいかけて決めていこうかなと。

――ええ。少し休むのかなと思ってました。
坂本:ただ、ありがたいことに、退任リリース直後から7〜8つのオファーを頂いて。

嬉しかったですし、頑張ろうという気持ちになりました。

オファーの中で、最も自分にとって“楽しくもヘビーな仕事を”という基準で考えて“丹羽孝希専属コーチ”という仕事を選びました。


写真:丹羽孝希(T.T彩たま)/撮影:ラリーズ編集部

坂本:丹羽孝希という選手は既に世界的な選手ですし、沢山の経験、メダルを獲得している選手です。
だからこそ彼なりの考え、ポリシーというのを強く持っています。それがプラスにもマイナスにも働くことがあります。

一年間指導をして、技術的にもメンタル的にもプラスに変わってきた矢先の退任で、私自身寂しい気持ちもありました。そして大げさに言えば、自分しか孝希を強くできないのではないかという自負もありました。

その“強くしたい”という気持ちが、他の仕事に勝ったんだと思います。

――強化の方針を教えて下さい。
坂本:東京五輪、世界選手権後は国内を中心にというように見えていましたが、今は国内はもちろん、更に高みを目指すメンタルになってきたなと感じているので、僕も楽しみにしています。

技術的に言えば、やることはまだたくさんあります。
バックハンド、守備力、レシーブ、、、まあ、内緒です(笑)。楽しみにしててください。


写真:坂本竜介氏/撮影:槌谷昭人

――今年も結局忙しそうですね(笑)。貴重なお話、ありがとうございました!
坂本:こちらこそ、ありがとうございました!


写真:坂本竜介氏/撮影:槌谷昭人

(終わり)