「もう引退かな」どん底に落ちた大矢英俊を救った浜野社長の一言 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:大矢英俊(ファースト)/撮影:ラリーズ編集部

卓球インタビュー 「もう引退かな」どん底に落ちた大矢英俊を救った浜野社長の一言

2022.06.26

この記事を書いた人
1979年生まれ。2020年からRallys/2024年7月から執行役員メディア事業本部長
2023年-金沢ポート取締役兼任/軽い小咄から深堀りインタビューまで、劇場体験のようなコンテンツを。
戦型:右シェーク裏裏

大矢英俊と聞くと、あの咆哮が耳に奥に響いてくるだろうか。
独特のフォームが目に浮かぶだろうか。

卓球台を離れると、誠実で、チャーミングな33歳の男である。

大矢に関しては、ファーストとスポンサー契約ではなく、株式会社ファーストに入社し、社員としても働いている。
名実ともに、ファーストと共に歩む男に話を聞いた。


写真:大矢英俊(ファースト)/撮影:ラリーズ編集部

もう引退かなと思った全日本予選の敗退

――ベスト32に入った今年1月の全日本選手権では、久しぶりに大矢さんらしい咆哮を聞きました。
大矢英俊:でも、昨年、その全日本の予選で初めて落ちたときは、もう引退かなと思いました。

でも、浜野社長に“大矢はもっとやれる、あきらめずに頑張れよ”という言葉を頂いて、“いったい自分は何をしてるんだ”と強く思いました。夜、眠れなかった時期です。


写真:大矢英俊(ファースト)/撮影:ラリーズ編集部

苦しかった時期の努力が報われた

――そこからの復活劇ですか。
大矢英俊:あ、いえ。その1ヶ月後くらいに、全日本社会人選手権があって。前の年に優勝している大会なのに、初戦で敗退してしまって。

頑張ってその結果だったので、ダメージが大きくて立ち直れなくて。

――確かに…。
大矢英俊:その翌週に、全日本選手権の関東ブロック最終予選がありました。もうここで負けたら自分は終わりだと思いました。

命懸けの覚悟で戦い、グループ予選2位通過、最終決定戦でなんとか勝って、通過しました。

そこからはもうゼロスタートで頑張って、全日本の本戦でベスト32に入れたときに、苦しかった時期の努力が報われたのかなと思いました。


写真:大矢英俊(ファースト)/撮影:ラリーズ編集部

社員と選手のバランスの取り方

――大矢さんだけがファーストの社員でもあるんですよね。社員コーチとしての仕事と、選手としての練習は、どういうバランスなんでしょう。
大矢英俊:卓球スクールの運営面や売上とのバランスを取りながらですが、今は全日本実業団前の大事な時期なので練習量のほうを多くしていますね。
――大変ですか。
大矢英俊:大変なときもありますが、そこに面白い部分もたくさんあって。

いろんなお客さんと触れ合うと、選手を続けているからこそ、すごく応援してもらえていると感じます。僕も恩返しで、なんとかお客さんに強くなってもらいたいと色々考えたり。


写真:ファースト卓球スクールの様子/撮影:ラリーズ編集部

――大矢夜間卓球教室っていうのも定期的に開催してるんですよね?
大矢英俊:はい。このファースト卓球スクール有明校で、平日夜19時30分から21時まで。

“マスターズで勝ちたい”“東京選手権に出たい”という方などのために、今の卓球で勝つための様々なメニューを、僕自身が教える形でやっています。

――忙しいですね。
大矢英俊:でも、やりがいがあって、楽しいです。

あと、来月は僕自身の試験もあるんですよ、ビジネスマネージャー検定試験っていうんですけど。なのでいま、勉強もしてます。


写真:大矢英俊(ファースト)/撮影:ラリーズ編集部

“一度死んでも蘇る”感覚

――いいですねぇ。仕事面で浜野社長に学ぶことも多いですか。
大矢英俊:はい、選手にも仕事にも、とにかく熱いところはもちろん、コミュニケーションを取りながら、指示を出して物事を動かしていくのが、とても上手な方です。

それだけじゃなくて、僕が落ち込んでいるときなんかには、すぐ察知してフォローしてくれます。

浜野社長の下なら、“一度死んでも蘇る”という感じです(笑)。


写真:浜野浩 総監督(左)と大矢英俊(右)/撮影:ラリーズ編集部

僕も吠えて、社長も吠える

――気持ちの人ですね。大矢さんのベンチでもそうですか。
大矢英俊:迫力、ヤバいです(笑)。僕も結構“おあああ!”って吠えてしまうのに、ベンチでも浜野社長も鬼の形相で吠えていて(笑)。

今回は無観客ですが、ぜひここは皆さんにも見て頂きたいところです、社長の気持ちのこもった表情(笑)。


写真:大矢英俊(ファースト)/撮影:ラリーズ編集部

――今回の全日本実業団、悲願の初優勝のために何が鍵になりそうですか。
大矢英俊:ダブルスはすごく重要ですね。シングルスで3点獲るより、ダブルスで1点獲ってシングルスで2点獲れたほうが効率が良い。

ダブルスは注力して練習していきたいと思っています。

――最後に、意気込みを。
大矢英俊:2年前は結構脂が乗っていた時期だったのに、僕自身は不甲斐ない試合をしてしまって、チームに貢献できませんでした。

今年は、もう命懸けです。

ただ、組み合わせが発表されて、キツいなあとは思いましたが(笑)、でも長年優勝できていないこの悔しさをぶつけて、チーム一丸となって、今年こそてっぺんを目指します。


写真:大矢英俊(ファースト)/撮影:ラリーズ編集部

命懸けという表現

奇しくも、浜野社長も大矢も、別々に“命懸け”という言葉を口にした。今の時代に流行らない表現かもしれない。

でも、おだやかな方、新しい方ばかりに賭けたがる現代に、その時代がかった覚悟は清々しく響いた。


写真:大矢英俊(ファースト)/撮影:ラリーズ編集部

特集・ファースト卓球部

動画はこちら