オーストリアへ旅立つ直前インタビュー全3回の最終回は、松平賢二が描く卓球界の未来について、だ。
日本リーグ選手会の代表として感じる変化や提言、トップ選手と卓球Youtuberの関係のありかたなど、風通しのよい話は多岐にわたった。
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外から見て気づいた実業団の良さ
写真:御内健太郎(シチズン時計)/撮影:ラリーズ編集部
一方で、もっとフォーカスするべきところがいっぱいあるなとも思いました。やり方がうまくなくて、認知されてない。
会社の名前がフォーカスされること
ああいう人たちが出ると華があるんです。でも正直、宣伝が下手だったなと。
石川(佳純)さんが出ていること、どれだけの人が知ってたのかな。
写真:石川佳純(昭和電工マテリアルズ)/撮影:ラリーズ編集部
勝ちはもちろんですが、会社の名前がフォーカスされることも大事。僕も選手会の代表として、もったいなかったなと反省しました。
実業団は実業団の伸ばし方があると思います。
写真:松平賢二(協和キリン)/撮影:ラリーズ編集部
それぞれの会社の中で卓球部を周知できるか
SNSでファンを増やすというよりも、それぞれの会社の中で卓球部を周知できるか、ということのほうが今は大切だろうと。
協和キリンも、社内SNSで卓球部を紹介したり、リモートで試合の配信時間を周知したりしていますが、まだまだです。
写真:松平賢二(協和キリン)/撮影:ラリーズ編集部
都市対抗の社会人野球が理想
コロナのせいにするのはもう時代遅れだとも思うんです。
コロナ前に一度、一度だけ観戦時にビールを配ったこともあるんです。来場者に缶ビールかチューハイかお茶を選んでもらって、会場で飲んでいいですよという運用を会社側と話して作って。
お客さんもめっちゃ喜んでくれて、これがスポーツ観戦だ、と思いました。“初めて見たけど面白かったよ”って言ってくれて。
コロナ以降は、リモートワークも増えたので、また考えどころが来ただけだと思っています。
写真:スーパースポーツセビオ セブンパークアリオ柏店の野球展示にも興味津々/撮影:ラリーズ編集部
実業団選手というプライド
写真:松平賢二(協和キリン)/撮影:ラリーズ編集部
実業団選手ということにプライドをもってやっていた。
いまは、Tリーガーに絞った選手も増えてきて、実業団に入ってきた選手はどこかで自分が下だと思ってないか。
特に、1部に入ってくるような子たちに多い気がします。
写真:2018-19シーズンのTリーグに参戦していた当時の松平賢二/撮影:ラリーズ編集部
自分の目標を持って入ってきてほしい
1部の子たちのほうが、Tリーグに行けない、行く自信がないという、どこかでふわっとした感じで入ってきてないか。
会社に入るモチベーションを見つけ、自分の目標を持って入ってきてほしい。
良い待遇で入ってきた子のほうが、かえってギャップに苦しんでいるのかもしれない。
その選手個人の意識の部分は変えていきたいと思っています。
自分の土俵を知る大事さ
松平賢二全力チャンネル
でも、自分の土俵を知るって大事なんだなあと思いますね。
例えば、YouTubeっぽく自分の好きなアイス3つをランクづけてみたら、1,000回再生くらいでした。
嘘でしょと(笑)。
余裕がなくて、サービス練習だけの動画を上げたら今度はそれが見られて、え、これなのって(笑)。
僕には、真面目なものとか、うまく解説してる動画をみんな期待してくれてるんだなあと。
写真:松平賢二(協和キリン)/撮影:ラリーズ編集部
吉田海偉選手との練習動画
松平賢二という架け橋
例えば、トップ選手がいて、卓球YouTuberがいて、たぶん僕はどちらの立場もわかる。
超トップ選手は限られた人しか自分で発信できないけれど、でもプロなんだから、人任せでなく自分でやるべきなんです。
YouTuberの人たちは自己PRがうまいので、トップ選手が学ぶべきこともたくさんある。
一方で、いま卓球を始めたばかりの子どもたちには、関係性をわかりやすくしてあげたほうがいい。その子たちに“YouTuberのほうが強い”と思われるのは、僕らにはキツいので。
YouTuberにとってはトップ選手と一緒にやることで知名度を上げられる。繋げかた次第で、お互いに良い関係になる気がします。
写真:松平賢二(協和キリン)/撮影:ラリーズ編集部
今じゃないとやれないこと
Tリーグと日本リーグのありかたも、小中高の各カテゴリーとクラブチームのありかたも、考えればきりがないんですが、でも僕は卓球というスポーツを、やりながらも、観るものにしていきたいんですよね、どうしても。
その環境づくりをしていきたい。
もしかしたら、引退して卓球界に振り切るのもあるかもしれない。
でも、今じゃないとやれないこともあると思うんです。まずは今、精一杯やります。
写真:松平賢二(協和キリン)/撮影:ラリーズ編集部
取材を終えて
最後は、いつもの全力な賢二節で締めたのだった。
こうやって、悩みながら、苦しみながら、結果的に多くの壁を超えてきたのだろう。
この夏、オーストリアに行ってからもそうだろう。
そうか、まだ33歳なのだから、と思わずつぶやいた。
写真:取材後の大山乳業の白バラ牛乳、美味しかったです/撮影:ラリーズ編集部
写真:撮影を行ったスーパースポーツゼビオ セブンパークアリオ柏店/撮影:ラリーズ編集部