"まるで本物" に込めた卓球トップメーカー社長の切なる願い | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:株式会社タマス代表取締役社長 大澤卓子氏/撮影:卓球レポート/バタフライ

卓球インタビュー “まるで本物” に込めた卓球トップメーカー社長の切なる願い

2022.10.07

この記事を書いた人
1979年生まれ。テレビ/映画業界を離れ2020年からRallys編集長。
軽い小咄から深堀りインタビューまで、劇場体験のようなコンテンツを。
戦型:右シェーク裏裏

もうほとんど品切れらしい。

“クオリティが高すぎる”、“まるで本物”と、6月の発売当初から大きな話題を呼んだ、フィギュアメーカーの「ケンエレファント」とバタフライとのコラボレーション商品だ。


写真:バタフライのカプセルトイは全4種類/撮影:ラリーズ編集部

しかし、卓球メーカーのバタフライがなぜ突然、カプセルトイ、いわゆる“ガチャガチャ”を制作したのだろう。

暇だったのか(違う)。

実は発案者だった、株式会社タマス代表取締役社長・大澤卓子さんに話を聞いた。


写真:パッケージもミニチュアと思えない再現性/撮影:ラリーズ編集部

きっかけは朝のNHK番組

――見つけた!って、みんながすごく嬉しそうにSNSにアップしてました。

どういう経緯で、あのミニチュア卓球セットを制作することにしたんでしょうか。

大澤卓子:確かに、これまで当社があまりやってこなかったことかもしれません(笑)。

朝、私が家で支度をしているときに、NHKの番組で“家具のミニチュア”が流行しているっていうのを見て、ふっと当社に良いかもしれないと思ったんです。

で、出社してすぐに社員に“ちょっと会社を探して連絡してみてもらえるかな?”って。

――朝のアイデアですね(笑)。
大澤卓子:すると、本当に偶然なんですけど、最初にお電話した会社から“実は2年前、こちらから作りませんかってお願いしたんですよ、ぜひやりたいです”というお話で。

当時、当社のお客様サポートセンターにお声を頂き、担当部門で検討したみたいなんですが、私がキャッチしきれなくて。

――そうか、やっぱりその業界から見てもニーズはあったんですね。

「フェンスをもう少し波打たせてください」

大澤卓子:やるからにはクオリティにこだわりたいってお話をすると“もちろん、そのつもりです”ということだったので、じゃあやりましょうと。
――あの細部へのこだわりには、さすがの卓球愛を感じました。
大澤卓子:パッケージの文字はもちろん、フェンスなんかも“もう少しこう、波打たせてください”とか、担当者は何度もやり取りしたみたいです(笑)。


写真:リアルに波打つミニチュアフェンス/撮影:ラリーズ編集部

――反響もたくさんあったんじゃないですか。
大澤卓子:はい、おかげさまで。

ミニチュアを作っていろんなストーリーをつけて楽しんでいただいたり、私たちが想定しなかったような展開をしましたね。

あとは、お孫さんに渡したいっていう声も多かったですね。軽くて荷物にならないですしね。


写真:大澤卓子社長/撮影:卓球レポート/バタフライ

――考えてみれば、これも立派な“卓球の普及”ですね。

このミニチュア卓球台セットを、いろんな世代の方が遊び、家や職場に飾って、また別の人が興味を持って。

大澤卓子:ちょっとでも“面白いなあ、可愛いなあ”と思ってもらいたくて、真面目に作りました。


写真:全4種類コンプリートするとこうなる/撮影:ラリーズ編集部

――でも、この“本物感”はバタフライだなあと思いますよね。それが話題を呼んだわけで。
大澤卓子:当社に期待して頂ける本物感はずっと大切にしながら、いろんな方法で少しでも卓球の間口を広げていくことで、普及に繋げていければいいなと思います。


写真:大澤卓子社長(写真右)/撮影:卓球レポート/バタフライ

再始動したバタフライ・ダブルス・チームカップ

大澤卓子:卓球の普及、という点でいえば、バタフライ・ダブルス・チームカップも、コロナ禍にはバタフライ・チームカップという形で再始動しました。
――各地で開催されるダブルスの大会ですよね。
大澤卓子:はい、コロナ禍に日本卓球協会から出された感染拡大予防ガイドラインで、ダブルスでの開催が難しくなったタイミングで、大会の開催基準をシングルスでもOKにしました。

名前も「バタフライ・ダブルス・チームカップ」から「バタフライ・チームカップ」に変えてリスタートしたんです。


写真:バタフライ・ダブルス・チームカップの参加者たち/提供:卓球レポート/バタフライ

――あ、そうなんですね。もう長くやってますよね。
大澤卓子:私が入社したときにはもう既に始まっていて、1989年からスタートしているので優に30年は超えますね。

おかげさまで、地域に浸透している大会なので、気軽に地元の方が出られる大会を、私たちもその空気を肌で感じながら開催したいという思いです。

コロナ禍で、目標があることの大切さは身にしみましたから。

――そうですよね。

大会が無いと、勝ちだけでなく、負けもなくなってしまうことが、スポーツの意義や物語を希薄にしてしまう気がします。

大澤卓子:おっしゃるとおりですよね。

私も、卓球プレーヤーとしてはやっぱり“負け組”なんですよ。

卓球やっていて辛いこともあったし、挫折したり、頭打ちになったり、悔しい思いをしたり。でも、悔しい思いをした人たちにもいくつもストーリーがあって、だからこそ、卓球が好きなんですよね。

バタフライ・チームカップは、みなさんが自分の物語を描ける大会になればいいなと思います。


写真:大澤卓子社長/撮影:卓球レポート/バタフライ

――その後、大澤さんはタマスの社長になりましたけどね(笑)。
大澤卓子:それも、まさかの卓球ストーリーです(笑)。

今でも、憧れの選手の人たちとご飯を食べたり、意見公開したりするときに、ふっと選手時代の自分を思い出すときがあります。


写真:大澤卓子社長/撮影:卓球レポート/バタフライ

リニューアルしたバタフライ卓球道場

――バタフライ卓球道場は、いまどんな活動をされてますか。

水谷隼さんの出演するテレビ番組収録で“天井の高い綺麗な卓球場”としても知られてきた印象ですが(笑)。


写真:リニューアルしたバタフライ卓球道場/撮影:卓球レポート/バタフライ

大澤卓子:2018年に改修工事をして、全面的にリニューアルしたんですよ。

エレベーターを設置して、車椅子の選手が行き来しやすいように、あと、卓球台の運搬なども簡単になりました。

宿泊施設も鍵付きの個室を用意したので、東京五輪のときに選手村に入れない選手のご家族の方に宿泊していただいたりすることも予定していましたが、コロナ禍ということもあり、残念ながら実現しませんでした。


写真:バタフライ卓球道場はタマス本社に隣接する/撮影:卓球レポート/バタフライ

――でも、1980年代の設立からずっと、利用者からお金は取らないんですよね。
大澤卓子:「好きな卓球を好きなだけできる場所」として、創業者の情熱を今でも引継いでいます。何より、卓球の魅力を知ってもらう場所なので。

練習環境の整っていない国からの留学生の受け入れも続けていて、今では海外の方の思い入れも強いですね。

クロアチアのプリモラッツさんなんかは“自分はここで育った”と言うくらいに。


写真:ゾラン・プリモラッツ(クロアチア)は現在ITTFアスリート委員長/提供:ittfworld


写真:2018年に来日したブラジル・アルゼンチンからの留学生/提供:卓球レポート/バタフライ

――水谷隼さんはじめ多くの選手が“聖地”と呼び続けるゆえんですね…。

私も道場で打ってみたいのです(唐突に)。

大澤卓子:コロナが落ち着けば、もう少し間口を広げて、このバタフライ卓球道場を活用する方法を考えているところなのでお待ちください(笑)。


写真:大澤卓子社長/撮影:卓球レポート/バタフライ

卓球を本当に好きになってもらうために

――ところで、講習会、ミニチュア、バタフライ・チームカップ、バタフライ卓球道場などそれぞれ違う普及事業に、共通する思いって、なんでしょうね。
大澤卓子:やっぱり、卓球を本当に好きになってもらえる人をどうやって増やしていくか、ということでしょうね。

もちろん一過性の方がいても良いんですが、私たちバタフライがやらないといけないことは、長く、本当に卓球を好きになってくれる人を増やすための普及活動だと思っています。だからこそ一つ一つの商品や事業のクオリティーには、こだわりたいんです。

と、いま話しながら、整理できました(笑)。聞いていただくことって大事ですね。


写真:大澤社長の話やっぱり面白い、の顔/撮影:卓球レポート/バタフライ

取材を終えて

「心のどこかに卓球と、あとバタフライがあれば嬉しいんです」と大澤社長は言った。

例えば、初めて目の前で見た水谷隼のプレーに胸が震えた少年少女が、ずっと後になって、そうか、あれはバタフライ講習会だったのかと思い至ること。

例えば、卓球を辞めてずいぶん経って、ふと再開を考えたとき、バタフライ製品がかつての信頼感のままで、そこにあること。

それでいながら、用具品質はもちろん、普及活動も時代に合わせた進化を遂げていくこと。

でも、願いは、長く本当に卓球を好きな人を増やしていくこと。

「だって、槌谷さんだってそうでしょう?」

その通りなのだった。


写真:2019年に栃木卓球センターを訪問した水谷隼(木下グループ)/提供:卓球レポート/バタフライ

>>多忙な水谷隼はなぜ講習会を続けるのか 卓球トップメーカー創業者と共通する執念とは

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