「あの時期、陽向を怒るようになっていた」バンビの部全国3位 川口陽陽・陽向親子の成長と葛藤 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:川口陽陽・陽向親子(YOYO TAKKYU)/撮影:ラリーズ編集部

卓球インタビュー 「あの時期、陽向を怒るようになっていた」バンビの部全国3位 川口陽陽・陽向親子の成長と葛藤

2022.12.25

この記事を書いた人
1979年生まれ。2020年からRallys/2024年7月から執行役員メディア事業本部長
2023年-金沢ポート取締役兼任/軽い小咄から深堀りインタビューまで、劇場体験のようなコンテンツを。
戦型:右シェーク裏裏

卓球場経営者の子どもは、強い。
概ねそれは正しいのだろう。

しかし、卓球台があるだけで強くなるわけではない。
自身も知る“卓球修羅の道”の日々を、共に歩む覚悟をすることでもある。

YOYO TAKKYU。
東京の東中野と西日暮里に2店舗を構え、独立系の民間卓球場として、卓球界に知られた存在である。

代表・川口陽陽さんの息子、川口陽向くん(8歳/小学2年生)は、2022年8月に開催された全農杯全日本ホカバのバンビの部(小学2年生までが出場)で3位に入賞した。

「陽向くんの頑張りはもちろん、民間卓球場として、いろんな“これから”に挑戦されている姿勢に共感しています」
YOYO TAKKYUのスポンサーのひとつ「みんなのおもいで.com」を展開する株式会社ハッピースマイルの佐藤堅一社長も、そのチャレンジ精神に寄り添う。

いま、親子は何を思い、日々の練習に取り組むのか。話を聞いた。


写真:川口陽陽、陽向親子(YOYO TAKKYU)/撮影:ラリーズ編集部

卓球場の拡張が契機だった

――陽向くんが卓球を始めたのは何歳からですか。
――3歳からですね。きっかけはわりと覚えていて。

東中野の卓球場を隣に拡張する2017年12月31日、オープン前の卓球場に行って、家族でボール遊びをしたんですよ。

それが陽向はすごく楽しかったみたいで、それから“卓球場行きたい”って言うようになって、散歩コースに卓球場が入って。

場所がきっかけでしたね。

――卓球場を持つ一家ならではですね。
――その後、妻がジュニアコースのコーチに復帰すると、実際、陽向を卓球場で見るしかないので。

生徒さんのお兄ちゃんお姉ちゃんたちに可愛がってもらって、という感じでしたが、僕はまったく卓球は教えていませんでした。

永遠に勝てないんじゃないか

――陽陽さんが本格的に指導し始めるきっかけは。
――一応、試合も出てみたんです。

すると、1ゲームのうち90%くらいサービスミスしてしまうんです。サービスは練習していたのに。

すごく悔しかったんですよ。

“勝てなくてもいい、せめて練習したことはしっかりできるように”って。そこで僕は最初のスイッチが入りました。

そのまま卓球場に戻って、100球連続で入るまでサービス練習しました。

でも、その後も一年くらいは試合で全然勝てませんでしたね(笑)。

――両親とも卓球選手なわけで、子どもにその才能を感じるものですか。
――いや、わからないですよ。

永遠に勝てないんじゃないかと思ってました(笑)。

3歳で始めると、常に2、3歳上の子どもたちと試合をするので、力の差は圧倒的なんですよ。

この頃は陽向がサービス出す、パーンと打たれる、陽向はボール拾いに行かず、ただ立ったまま見てましたからね(笑)

――立ったままじゃないよ、踊ってたんだよ。
――もっと謎(笑)。


写真:川口陽向/撮影:ラリーズ編集部

川口陽向「試合で良いラリーが続くと楽しい」

――ただ、卓球場がある環境のおかげか、陽向自身が相当卓球好きだなっていうのはその頃から感じてました。

“もう1回、もう1回”って、とにかくしつこいんですが、卓球の練習に関しては、僕も付き合っています。

――それも大事な才能の一つですよね。

陽向くん、卓球していて、特に何が楽しい?

――試合で良いラリーが続いたとき。
――お互いが力を出し切って、勝ちたいって言うんですよね。


写真:川口陽向/撮影:ラリーズ編集部

練習は週6回

――いま、普段の練習はどんなスケジュールですか。
――平日はジュニアアスリートのレッスンが3時間、土日が4時間半の週6日の練習です。

大事な大会が近づいてきたらジュニアアスリートレッスンは週5日に減らして、残りの週2日を3時間ほどマンツーマンで練習を行います。

ジュニアレッスンで練習時間の確保と全体のレベルアップを、マンツーマンで普段手が行き届かない技術や、試合に重要な技術の練習を、という狙いです。


写真:川口陽向(YOYO TAKKYU)/撮影:ラリーズ編集部

意識が変わった「U-7 特別強化合宿」

――今年の全日本ホカバでバンビの部では3位入賞しました。始めた当初のお話から考えると、急成長ですね。
――昨年、陽向が6歳のとき、東京予選をギリギリ通って出場した全日本ホカバのバンビの部で、ベスト32に入ったんです。

“悔しいけど、ま、良かったな”くらいに思っていたら“小学1年生でベスト32に入ったら“U-7特別強化合宿”に呼ばれます”と。

アンダー7ってなんだ?と調べたら、7歳以下の成績優秀な子供を集めて合宿と試合をし、成績優秀な1名がナショナルチームに選ばれる合宿だと。

おお、陽向ラッキーだな、1回勝てれば良いなくらいの気持ちで親子で合宿に行ったんです。

――記念受験的な(笑)。
――U-7合宿では、リーグ戦を2日間で3回しました。

1日目のリーグ戦では4人中、3位か4位でした。

子どもだからどうしても仕方ない面もあるんですが、陽向が試合中、試合を投げてしまう場面がありました。そのときは怒りました。陽向も気まずかったと思います。

でも、選考会に何度か行って思うのは、結局試合を投げない子が通ってるんです。バンビの部ですから、ある程度、実力はどんぐりの背比べなんです。

2日目のリーグ戦では精神面も含めてしっかり対策して臨んで、終わってみれば、全体で陽向は2位だったんです。

――すご。
――ホープスナショナルチームには入れなかったんですが、2位に入ると“ナショナルチーム合宿に呼ばれます”と。

そのときに思ったんです。陽向、なんか持ってるなと。予選もギリギリで通って、たまたま出られた場所で勝てた。

陽向も目指した場所じゃないけど、目の前の試合を一生懸命やっていたら、ギリギリ通った。


写真:川口陽向(YOYO TAKKYU)/撮影:ラリーズ編集部

――そこで、陽陽さんも本気スイッチが入ったと。
――そうですね。

一応、同世代トップになれるかもしれない、でもまだ見ぬ子どもたちもいっぱいいる、どう戦っていくかの戦術も立てなければならない。

4月のHNT選手選考合宿に向けて、2月くらいから情報収集をして対策も立て、“次こそナショナルチーム入りを狙いに行こう”と。


写真:川口陽陽、陽向親子(YOYO TAKKYU)/撮影:ラリーズ編集部

負けた後の様子がいつもと違った

――どうだったんですか。
――残念ながら、2位までが通るところを、得失点差で3位に終わりました。

我慢して1ゲーム取れなかったことが最後に響きましたが、それが陽向のいまの実力です。

ただ、負けた後の陽向の様子がいつもと違っていて。

――どう違ったんですか。
――いつもは、負けると悔しさを抑えきれずに、物にあたったりして僕に怒られるんですが、そのときは、まったく動かずに一点を見て、静かに涙をこぼしていました。

合宿の最後に、スタッフの方が“メンバーの子だけユニフォームを渡すので残ってください”と言われたんですが、陽向は外に出てからも、ずっとそれを見ているんです。

ああ、悔しかったんだなあと。

僕もそれを見ながら悔しくなってきて“もう帰るぞ”と声を掛けましたが(笑)。

――陽向くん、どういう気持ちだった?
――練習しようと思った。
――その後めっちゃ必死になるかなと思いましたが、そこまででもなかったです(笑)。
――子ども、読めない…(笑)。


写真:川口陽向/撮影:ラリーズ編集部

本当にナショナルチームに入りたいのか?

――僕自身も、新しい練習メニューなど、その合宿でいろいろと勉強になりました。わかってはいましたが、改めて“昔の基本が、今の基本じゃない”んだなと。

一方で、“なんでもできる戦型に”という自分がやってきた方向性自体は間違ってなかった、という自信も持てました。

あと、もしホープスナショナルチームを目指すなら、覚悟と責任が必要だなと実感しましたね。

――と、言うと?
――ナショナルチームに入れば、親も子どもも、行動に責任を持たないといけない。チームの練習についていくためのプレッシャーもあります。

一度入ると、外れたときの挫折感も親子共に大きい。

僕も、やっぱりその時期、陽向を怒るようになってましたから。“そんなんじゃ勝てない”って。

僕も怒りたくないし、しんどいし、子どももしんどい。これは入ると大変だなと思いました。

陽向に、“本当にナショナルチームに入りたいの?”って聞きました。

――すると?
――どうしても入りたい、と。

覚悟できるの?と聞くと、できる、と。

――陽向くん、なんでそこまでナショナルチームに入りたいの?
――卓球が強くなったら、お金が稼げるから。
プロ志向(笑)。でも、良いことですね。
――さすが、民間卓球場経営者の息子です(笑)。
ナショナルチーム合宿って、しんどくないの?
――しんどいけど、楽しい。
――やっぱり、実際に合宿を経験して、陽向の意識は変わってきたんだろうと思います。

僕もそうです。自分の休みを返上して努力する親子たちの情熱が、日本の卓球業界を支えてるんだなあと思いながら、合宿に参加していました。

そして、僕もその世界にいるんだなと。


写真:YOYO TAKKYU/撮影:ラリーズ編集部

川口親子のこれから

これから、川口一家はどんなふうに歩んでいきますか。
――バンビ3位になれたことは自信を持っていいと思いますが、まだまだバンビの世界ですし、何かを成し遂げたわけじゃありません。

これから、将来本物になれるように、そして卓球の楽しさを忘れないように進んでいきたいと思っています。

ちなみに陽向くん、パパは怖い?
――いや、卓球のときはパパのほうが怖いけど、家では友だちみたい。家ではママのほうが怖い。
最後にママ登場(笑)。ママに、なんて言われるの?
――早くお風呂入りなさいって。


写真:撮影前にパパが髪型を整えていた/撮影:ラリーズ編集部

取材を終えて

葛藤のない子育てはない。

でも、長く厳しい道のりも、できれば笑顔で歩んでいきたい。

おしゃれな卓球場YOYO TAKKYUの根底には、良く似た卓球好き親子の素顔があった。


写真:川口陽陽、陽向親子(YOYO TAKKYU)/撮影:ラリーズ編集部

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