新卒で卓球の仕事を選ぶべきなのか | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:渡邉悠生さん(左)と宮田祐作さん(右)/撮影:ラリーズ編集部

卓球インタビュー [PR] 新卒で卓球の仕事を選ぶべきなのか

2023.01.10

この記事を書いた人
1979年生まれ。2020年からRallys/2024年7月から執行役員メディア事業本部長
2023年-金沢ポート取締役兼任/軽い小咄から深堀りインタビューまで、劇場体験のようなコンテンツを。
戦型:右シェーク裏裏

卓球部の大学生が新卒で卓球の仕事を選ぶことを、社会人歴の長いあなたは薦めるだろうか。

卓球に限らず、多くのスポーツ業界で求められる人材は、即戦力だ。
選手として採用される場合を除けば、コーチ、卓球メーカー社員、チーム運営スタッフなど、多様な“卓球の仕事”で要求される能力のほとんどは、実は一般企業とほぼ同じものである。

その実力は、どこでどう磨くべきなのだろうか。

今回は、就職活動時に「卓求人.com」に就職相談し、一般企業に新卒入社して働いている2人の社会人一年生に話を聞いた。

「資格が取れる」「土日休み」で就職活動

「今は、来年施工管理技士2級試験のための、勉強が中心です」

宮田祐作さん、23歳。
小学生のときにクラブチームで卓球を始め、大学まで卓球を続けた。
2022年4月、改修工事の施工管理や、静かな工事のための工具開発の会社、株式会社丸高工業に新卒で入社した。もちろん、卓球部枠などない。

彼の就職活動での条件は「資格が取れること」「土日休み」だった。


写真:宮田祐作さん/撮影:ラリーズ編集部

就職活動を始めた当初、卓球の仕事も探してみた。
「大学3年時に、新たに卓球部を作って実業団チームにする会社からのお話もあったんです。でも、自分の実力は実業団なんていうレベルじゃないですし、それで成績が出ないと自分が追い込まれるだろうなと」

卓球部員たちの間で評価の高かった「卓求人.com」に相談したのは、大学4年の5月に入ってからだった。
コロナ禍で、何度かオンラインで会話する中で、自分が仕事に求めるものを整理してみた。

社会人になったら、趣味として卓球を続け、週末の大会出場をモチベーションにする。
そのプロセスを仲間と楽しむ。
だから、土日が休みの職場を探す。

「いまは、埼玉県で一人暮らしで近くに卓球仲間がいないので、自分の時間はあるのに練習があまりできないのが悩みですけど(笑)」


写真:宮田祐作さん/撮影:ラリーズ編集部

将来、副業コーチとして子どもたちに教えるために

「資格を取れる」職場を探したのは、彼には秘めた思いがあったからだ。
将来、子どもたちに卓球を教えていくこと。それも趣味でいい。

「僕も小学生の頃からクラブチームで教わってきました。そのコーチたちは別の仕事を持っていたのに、本当にいつも練習や大会に来てくれて。大人になるにつれて、そのコーチたちとご飯に行ったりする関係がとても楽しくて、僕もそういうコミュニティを作りたいんです」

自分が教わってきたように、卓球を趣味で教えていく融通を確保するためには「仕事では資格が必要だろう」と彼は思った。

手厚い支援のある会社

会社も、社員が資格取得をするために、多くのバックアップを用意する。
彼は、会社で同期新入社員8人と共に、週1回の授業とテストを繰り返し受けながら、施工管理技士2級試験を目指している。

街で見かける工事現場も、いろんな違いが目につくようになった。
「あ、あの白い仮囲いは“アドフラットパネル”とか、わかると嬉しくなりますね」

学び、知ることは嬉しい。
それは将来、子どもたちに卓球を教えるときにも、伝えていこうと思っている。


写真:作業着も企業ロゴもおしゃれだった/撮影:ラリーズ編集部

漠然と始めた就職活動

さて、もうひとり社会人一年目の話を聞いた。
渡邉悠生さんは、不動産売買仲介業を営む株式会社アークレストに就職、いま埼玉県所沢市で人生初の一人暮らしをしながら営業職として働く。

「とてもやりがいがあって、楽しいです。仕事が終わって家に帰ってから、洗濯回して干すとき、一人暮らしって大変だなと思うくらいで(笑)」


写真:渡邉悠生さん/撮影:ラリーズ編集部

中学・高校と卓球に打ち込んだ渡邉さんだったが、入った大学には卓球部がなかったため、約3年間大学生コーチとして、母校や卓球場でアルバイトを続けた。
教えた選手が上達する様子には、自分がプレイヤーの頃より、はるかに達成感があった。

「最初は就職活動も、漠然と好きな卓球業界で働けたら楽しいだろうな、と」

twitterで卓求人.comを見つけて相談したのは大学3年の12月頃だ。

「卓求人.comの水島さんにご相談したところ、業界よりもまず、自分のやりがいや、どういった場面が楽しかったのかを一緒にフォーカスしてみようと」

誰かの人生に貢献する仕事

水島氏は渡邉さんの印象をこう振り返る。
「たぶん渡邉さんなら、どうしても卓球業界にこだわれば仕事はあったと思います。ただ、いろんな問いを投げかけていく中で、コーチ経験もそうですが、渡邉さんは誰かに貢献する、人の人生に大きな影響を与える、という領域に自然と引き寄せられてる感じがしました。その気づきがお互いの共通認識として出てきて、そこから自然と定まっていった気がします」


写真:水島大瑚氏(卓求人.com代表取締役)/撮影:ラリーズ編集部

最終的に、人生において大きな買い物を提案する不動産業界か、仕事という大きな決断に伴走する人材業界の二択の中で、いまの仕事を選んだ。

「僕の場合、就活は自分一人で走り続けてもちょっと限界がしてしまう。業界選定だったり、様々なサポートやアドバイスだったり。僕は結局、エージェントは卓求人.comさんだけしか利用しませんでしたが、とても感謝しています。大人の力を借りられる部分は頼って、自分の力を発揮する部分に最大限注力したほうが良い、というのが、これから就活する学生へのアドバイスですね」


写真:渡邉悠生さん/撮影:ラリーズ編集部

それで、そのやりがいは今、実感できているのだろうか。

「ついこないだ、所沢でお客さんにマイホーム購入を決めていただいたとき、お母さんと一緒に見に来た5歳の女の子がすごく喜んで、“ここがいい、ここに住みたい”って走り回って“どうもありがとう!”って言ってもらったとき、ああ、この物件をご提案できてよかったなと、こちらも嬉しくなりました」。

もちろん、営業だからどれだけ準備を重ねてもうまくいかないこともある。
“一喜一憂しないほうが良いんですが”と渡邉さんは笑うが、その喜怒哀楽の振り幅が大きいことも一年目の特権だろう。

“槌谷さんの一年目はどんな感じでしたか”と、渡邉さんは、こちらが心地よいタイミングで質問も挟んでくれる。その柔らかなコミュニケーションに、不動産売買の営業で培い始めたスキルを感じる。

ところで、いま、渡邉さんが卓球をプレーするのは、地元の実家に帰省する3ヶ月に一度くらいだ。
“あ、こんなに自分が動けなくなっている”。
その感覚を楽しめるほどに、いまの社会人生活を満喫している。


写真:渡邉悠生さん/撮影:ラリーズ編集部

社会人スキルを磨いた先に

卓球が好きだからといって、卓球を仕事に選ぶことが、必ずしも人生にとって豊かなことだとは限らない。
反面、卓球業界の新卒採用が狭き門だからといって、卓球の仕事をあきらめる必要もない。

卓球は、また会えるスポーツだ。

それぞれの業種の社会人スキルを存分に磨いた先で、もしくはその途中で、卓球と卓球業界は再会を待っている。

大学生の就職活動が本格化する季節が始まる。

>>【2022年4月掲載】なぜ男は1年半の空白を経て卓球コーチになったのか?コロナ禍の就職活動と小さな卓球場の後継者問題