坪井勇磨「卓球界は恵まれている」筑波大で感じた他競技との差とセカンドキャリアの考え方 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:坪井勇磨/撮影:ラリーズ編集部

卓球インタビュー 坪井勇磨「卓球界は恵まれている」筑波大で感じた他競技との差とセカンドキャリアの考え方

2023.06.04

この記事を書いた人
2001年生まれ。大会報道、インタビュー記事から動画企画まで幅広く担当。
卓球の魅力を共有するコンテンツ制作を目指して活動中。
戦型:右シェーク裏表カット

東京アート休部後、プロ挑戦を決め再びドイツに渡った坪井勇磨。

前編では東京アートでの経験、プロ挑戦を決めた理由について話してもらったが、後編では自身の欲について、そして卓球選手のセカンドキャリアについて話を伺った。


写真:坪井勇磨/撮影:ラリーズ編集部

卓球選手としての“欲”

――以前のインタビューで選手としての欲が無いと仰っていたのが印象的でした。

何がきっかけで自分は欲が無いなと思ったのでしょうか。

坪井:欲があり過ぎてだめなんですかね、分からないですけど。

一つ思っているのは、手が届きそうなものに対してはめちゃくちゃ欲が出るんですよ。

でも手が届かない、遠いなって思う欲が目標に対して欲が出ないという感覚で。

――なるほど。大き過ぎる目標に対しての欲が出ないという気持ちですかね。
坪井:そうですね。目標の立て方についても、今までは大きい目標を言うようにしていたんですよ。

でも本当にその目標は自分が求めているものなのか。っていう事を最近は考えていて。

――なるほど。
坪井:オリンピックに出たい、メダルを取りたいっていう目標に欲を出したいと思うときもあるんですけど、自分で“遠いな”って思ってしまうので、欲が出てこない。

そう言う意味では自分は欲が無いなって思うことはありますね。


写真:坪井勇磨/撮影:ラリーズ編集部

――良くも悪くも自分の現在位置を把握しているという事ですかね。
坪井:そうですね。今の自分では到底叶わない目標に対して、ストイックにモチベーション高く頑張れる人もいるじゃないですか。

でも自分は学生の頃とは考え方も変わっていく中で、見えない目標に対しての欲を出すことが難しいなと思っていますね。

――大きい目標への欲が無いことに対してご自身ではどう考えていますか。
坪井:前までは欲が無いことに対して少しマイナスな考えを持っていました。

ですがブンデスリーガの戦績や、目の前の試合に勝ちたいという自分がいま対峙していることに対する欲は凄くあるので、それで良いなと思っています。

――目の前の目標に集中して、それをクリアした先に大きい目標が見えてくるということですかね。
坪井:でも今は、繋がった先もあまり見ていないですね。

先のことを見過ぎても良くないですし、いま目の前にやるべきことは沢山あるので。


写真:坪井勇磨/撮影:ラリーズ編集部

――ここまでお話を聞いていると、坪井選手は視野が広いからこそ、後の人生を考えて卓球をしているという印象を受けました。
坪井:確かに考えているとは思いますけど、今はプロとしてスタートしたので、先のことを考えるのは一旦辞めています(笑)。

1年1年自分がどうなるか分からないという環境に置かれて、プロでやっている選手たちは1年に懸けてるんだという事が改めて分かりましたね。

僕は今まで「なんでみんな将来のこと考えていないんだろう。将来みんな何になるんだろう」と思っていたんですよ。

でも強い選手は目の前の1試合に懸けているんだということを、自分がプロになってから実感しましたね。

卓球選手がセカンドキャリアを考えるために

――坪井選手は教員免許をお持ちだそうですが、セカンドキャリアについて考えるきっかけはありましたか。
坪井:教員として働いている父の影響で、僕自身子供の頃から教員になるという夢がありました。

セカンドキャリアを考えて教員免許を取ったというよりも、卓球選手と教員どちらもやりたいと思っていたので免許を取得したという経緯ですね。

セカンドキャリアについて考えるきっかけは筑波大学での経験が大きいですね。

――なるほど、具体的に教えて下さい。
坪井:筑波大学にはバレーボール、ハンドボール、柔道など様々な競技のアスリートがいる中で、自分の競技を将来活かしたい、指導者になりたいという風に将来を考えている選手が多くて。

卓球は環境が凄く恵まれている分、将来のことを考える人が少ないのかなと思いました。


写真:坪井勇磨/撮影:ラリーズ編集部

――卓球界と他のスポーツの環境の差はどこに感じたのですか。
坪井:卓球界が恵まれているなと思ったのは、実業団の環境が整っているので、他の競技に比べると就職先が見つけやすいのかなと思ったのが一つの理由です。

それに比べてほかの競技の選手は、日本代表レベルでも競技を続けるために大学院に進学したり、教員として働きながら競技を続けている人が多いんですよね。

――なろほど。卓球選手がセカンドキャリアを考える上では何が必要だと思いますか。
坪井:今卓球に打ち込んでいるという事は素晴らしいことだと思います。

だからこそ選手を終えた後は、卓球で学んだ経験や考え方を他の事に応用したり、自分はこれだけ卓球をやってきたんだ、という自信や経験を持っていれば、何をしても上手くいくんじゃないかなと個人的には思っています。

“勝つこと”が仕事

――最後に、今後の目標や抱負を教えて下さい。
坪井:8月からブンデスリーガ2部のシーズンがまたスタートしますが、それまでに技術や体つくりをしていきたいと思います。

昨シーズンは出足が悪かったので、今年はシーズン序盤から良い状態で臨めるように準備していきたいと思います。

プロとしてやるべき事は“勝つこと”で、勝たなければ仕事をしていないことと同じなので、そこは忘れないように戦っていきたいと思います。

――ありがとうございました。


写真:坪井勇磨/撮影:ラリーズ編集部

取材を終えて

将来を考えすぎなくても良いと、自分に言い聞かせるように坪井は言った。

今を積み重ねていくことが自分を支える過去となり、そして未来に繋がっていくのかもしれない。

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