コロナはすべてを変えたのか 北陸大学卓球部の"逆境に打ち勝つ"継続力 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:北陸大学卓球部/提供:北陸大学

卓球インタビュー コロナはすべてを変えたのか 北陸大学卓球部の“逆境に打ち勝つ”継続力

2021.07.23

文:川嶋弘文(ラリーズ編集部)

コロナはすべてを変えた、のか。

昨年7月に大きな反響のあった北陸大学卓球部特集から約1年が経過した。

大学生ながらプロチームのように地元企業から応援され、金沢から全国を目指す。そして中国やスペインなど海外とも交流する、次世代型大学卓球チームの先駆けだった。

ところが、昨年は秋のインカレ・全日学の中止が決まり、予定していた冬のスペインリーグ挑戦も諦めざるを得なくなった。

その意味では、確かにコロナは予定のすべてを変えたのだ。

しかし、変わらなかったものがある。

彼らの努力の継続だ。

今年の5月。久しぶりの公式戦となった春季北信越学生選手権で、北陸大は変わらず続けた努力の成果を見事に発揮する。

団体、シングルス、ダブルスの全種目で優勝。シングルスはベスト8に7人、ダブルスはベスト8に6組が入賞する快進撃だった。


写真:小池皓(北陸大学)/提供:本人
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予期せぬ理由で目標にチャレンジできなくなってしまった時、人はどう考え、前を向くべきなのか。

オンラインで、監督、選手に話を聞いた。

リーダーはピンチのとき、どう振る舞うべきか?

ーー昨年は「目標としていた大会が無くなる」という非常に難しい1年だったと思います。どのように乗り越えたのでしょうか?

木村信太監督:4年生の力が大きかったと思います。後輩たちに「背中で見せる」という形でリーダーシップを取ってくれた。


写真:インカレで選手に檄を飛ばす木村信太監督(北陸大学、写真中央)/撮影:ラリーズ編集部

就職活動や教育実習の忙しい時期でも4年生がよく練習に顔を出したので、下級生も緊張感を持って練習を続けられました。

小池皓(4年、以下小池):試合は無くなってしまいましたが、最後の1年なので卓球から逃げないということを4年生全体で決めました。大会が無いことを理由に、就活や勉強などに切り替えるという考えもあるのかもしれないですけど、それは逃げだと思ってました。


写真:小池皓(北陸大学)/撮影:ラリーズ編集部

北陸大は3年生がキャプテンをし、4年は下級生をサポートをする立場。3年の礒野キャプテンを中心に「北信越で全種目制覇」「インカレベスト16」という目標を決めたので、最上級生もその目標を達成する中心にいようと思いました。

ーー就活や教育実習などで練習不足になって4年生が弱くなるのは、よく見られることです。でも今回の北信越大会で4年生が大活躍でしたね。
(編集部注:シングルス決勝は4年の小池、宮﨑両選手の対戦。ダブルスも4年の中陳と3年の浦口ペアが優勝)

中陳辰郎(4年):就活中は練習にフルで出られない日もありますが、少しでも顔を出して1球でも多くボールを打つようにしました。教育実習で地元(富山県)に帰っていた時も、毎日短い時間ですが自宅で練習していました。そういう小さな積み重ねがチームに伝染していくと思います。


写真:中陳辰郎(北陸大学)/撮影:ラリーズ編集部

小池:自分たちは本当はもっと強いのに、試合になると実力が発揮できていないとずっと思ってたんです。そこを変えるには日常の甘さを捨てるしかないですよね。結果的には北信越では3種目とも優勝が出来たし、シングルスではダブルスパートナーの宮﨑と決勝を争えて嬉しかったですね。

ーー練習の仕方なども変化があったのでしょうか?

宮﨑:それまでは各自が課題練習のメニューを自由に決めていたんですけど、一部を共通のメニューに変えました。特に40分1コマの多球練習をみんな共通でやりましたね。


写真:宮﨑純(北陸大学)/撮影:ラリーズ編集部

試合ができないことが確定してしまったからこそ、みんなでスキルアップというか底上げする意識が大事だったと思います。

1年生がチームに与えた刺激

ーー今年も全国の名門校から強い新入生が入部されましたね。

小池:自分達が入学した頃よりもいい意味で雰囲気が変わってきました。大学生活を楽しむために部活をするのではなく、結果を出して成長するためのチームになってきたかなと。みんな大学で一花咲かせたいと思って入ってきてくれているので刺激になります。


写真:インカレでデビューを果たした1年の加藤遼(北陸大学。熊本・慶誠高出身)/撮影:ラリーズ編集部

宮﨑:今年の1年は金光(将希。関西高・岡山)、加藤(遼。慶誠高・熊本)を筆頭にレベルが高いんですけど、控えめな子が多い。なので、たくさん声をかけて自分をさらけ出して貰うようにしてます。折角色んな県(現在21府県)から金沢に来てくれているので、みんなで強くなりたい。

ーー1年生の立場から見るとどんなチームですか?

加藤遼(1年):大学でもっと強くなりたいと思って入部したのですが、先輩たち、特に4年生がプレーでも生活の面でも僕たちを引っ張ってくれています。高校までは勢いでプレーをしていた部分があるんですけど、大学入ってから先輩と話す中で1本1本戦術を考えてプレー出来るようになってきました。

ーー4年間での目標は?
加藤:中国の張継科(ロンドン五輪金メダリスト)のようにバックで強弱をつけて、フォアを思い切り振り切れるスタイルを目指しています。インカレベスト8,全日学ランク入りが目標です。4年間で成長して強い実業団から声がかかるような選手になりたいです。

さらなる高みを目指して


写真:インカレでの中陳辰郎(左)、小池皓ペア(北陸大学)/撮影:ラリーズ編集部

このインタビューの後、2年ぶりに開催された7月のインカレで北陸大は目標としていたベスト16に一歩及ばず、ベスト32に終わった。

主力の中陳は「北信越大会で優勝した事で、受け身で試合に臨んでいた部分があって、力を出し切れずに負けました。反省を生かして、最後の全日学でランク入りを狙います」と早くも目標を切り替え、前を向いている。

4年生として、引退までまだまだ背中でチームを引っ張るつもりのようだ。

最上級生がしっかりしているチームはやっぱりいいな、と改めて感じた。

2020年の北陸大学特集はこちら


第1話:東京一極集中を覆せ〜北陸大学卓球部 学生スポーツ界の新たな挑戦者たち〜
第2話:“大学で伸びた男”の卓球スペインリーグ挑戦秘話(北陸大学・中陳辰郎インタビュー)
第3話:6つの肩書を持つ男「全ては卓球普及のために」(西東輝・北陸大学卓球部コーチインタビュー)