"元世界王者"パーソン氏が語る「強くなるために一番大切なこと」【前編】 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:ヨルゲン・パーソン氏/撮影:ラリーズ編集部

卓球インタビュー “元世界王者”パーソン氏が語る「強くなるために一番大切なこと」【前編】

2021.05.24

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1979年生まれ。テレビ/映画業界を離れ2020年からRallys編集長/2023年から金沢ポート取締役兼任。
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スウェーデン卓球のレジェンドとの独占インタビューが実現した。

2020年10月に男子ナショナルチーム監督に就任した、ヨルゲン・パーソン氏だ。
ヤン・オベ・ワルドナー氏との二枚看板で1991年の世界卓球千葉大会で団体優勝、パーソン氏はシングルスでも世界チャンピオンとなった。


写真:2004年アテネ五輪にて抱き合うワルドナー(左)とパーソン(右)/提供:ロイター/アフロ

80年後半〜90年代中盤、スウェーデン卓球黄金時代のレジェンドが、次は代表監督として、圧倒的な強さを誇る中国に挑む。

スウェーデン復活の息吹は既に感じられる。
世界ランキング8位のマティアス・ファルク(2021年第14週時点)をはじめ、ドイツ・ブンデスリーガで大活躍中のアントン・ケルベリ、TリーグT.T彩たま所属の世界ジュニア銀メダリストのトルルス・モーレゴードら若手選手も台頭する。

日本が誇るグローバルカンパニー、ユニクロが「ユニクロ チーム スウェーデン」として、ファルク、パーソン氏、車いす卓球のアナ=カリン・アールクヴィストら含む13名のスウェーデン代表選手やレジェンドと、チームブランドアンバサダー契約パートナーシップを発表したことも記憶に新しい。

2000年初頭のスーパーサーキット参戦で頻繁に来日するなど“日本とは特別な関係”と語るパーソン氏に、オンラインで話を聞いた。

>>元世界王者ヨルゲン・パーソン氏、卓球スウェーデン代表監督に就任へ

東京五輪は日本にチャンスがある理由

――お時間頂き、ありがとうございます。
パーソン監督:こちらこそ、よろしく!
――では、まず最近の日本の卓球への印象を教えて下さい。
パーソン監督:日本は、久しぶりに大舞台に戻ってきたよね。男子はもちろん、特に女子。
1960年代、日本は圧倒的に強かった。当時、私たちスウェーデンも多くのことを日本から学んだんだ。

ここのところ、強い日本が戻ってきて、対戦することも、共に中国を倒そうと挑戦することも、嬉しいよ。


写真:張本智和(木下グループ)/提供:新華社/アフロ

――日本では、代表が強くなるにつれて、卓球人気も高まっています。
パーソン監督:母国で開催される東京五輪は、日本にチャンスがある。
若い張本智和、高いレベルで長年戦い続けている水谷隼がいる。若い選手と経験豊かな選手がチームにいるのはとても良いことだからね。


写真:水谷隼(木下グループ)提供:ロイター/アフロ

「日本のファンには敬意を感じている」

――日本では、今もスウェーデン卓球の人気が根強いです。日本のファンにはどんな印象を持ってますか。
パーソン監督:これまでたくさん日本にも行って、日本とは特別な関係だと思っている。日本のファンは“卓球”への探究心と好奇心が強くて、敬意を感じている。卓球をよく知っているから話すと楽しいよね。私たちは日本でプレーしたいといつも思っているよ。

「ママさん卓球!」

パーソン監督:あと、ママさん卓球ね!
――おお、よく知ってますね笑
パーソン監督:よく覚えているよ。素晴らしいことだよ。
――スウェーデンには無いですか?
パーソン監督:少しずつ増えているけど、日本ほどじゃない。スウェーデンでも、もっと幅広い層に卓球してほしいんだ。


写真:日本への思い入れを楽しそうに語るパーソン監督/提供:ラリーズ編集部

スウェーデン卓球の現在地

――2020年10月からスウェーデン代表監督に就任されました。就任発表で「長期的な目標はもちろん中国をもう一度倒すこと」とコメントしました。どんな計画でしょう?
パーソン監督:世界中の国にとって、中国を倒すことが目標。私は可能だと思ってる、だってかつて私たちは成し遂げたから。
具体的な課題は、スウェーデンでは、合宿で一緒にもっとトレーニングを重ねていきたい。


写真:成長著しいアントン・ケルベリ(スウェーデン)/提供:ittfworld

パーソン監督:ただ、一番大切なことは。
――なんでしょう。
パーソン監督:信じること。中国を倒すことができる、と信じることなんだ。

80年代初頭と同じように、中国はいま、卓球のすべての面において圧倒的な存在だ。でも当時、私たちは倒せると信じていた。現在も、大事なことは同じ。スウェーデン、日本、ドイツ、それ以外の国も、中国にも勝つことができると信じることだ。

――はい。(さすがレジェンド…)


写真:パーソン監督「大切なのは、勝てると信じること」/提供:ittfworld

――80年中盤〜90年代と比べて、現在、中国と差が開いた理由はなぜでしょうか。
パーソン監督:ご存知のように、スウェーデンは小さい国。中国に勝てたあの時代は、素晴らしい選手の世代がいて、そして実力を維持していた。しかし、いつの時代もずっとトップに居続けることは難しいことなんだ。

一方、中国は、卓球が国技で人気があり、才能ある選手が多く、さらに進歩を続けている。

また、ボールの変更に伴い、卓球は大きく変わった。

より回転量が少なく、パワフルなのが今日の卓球で、スウェーデンで言えば、その変更によって、回転量と創造性を失ってしまった。この状況に早くキャッチアップしなければならない。


写真:中国選手たちは圧倒的な強さを誇る 樊振東(写真左)馬龍(写真右)/提供:ittfworld

パーソン監督:ただ、スウェーデンの未来は明るい。ファルク、トルルス、アントン・ケルベリ、そしてクリスチャーナなど、若くて素晴らしい選手が育ってきたから。

スウェーデンも含めたヨーロッパの卓球は近い将来、良い方向に変わるだろうと思う。


写真:スウェーデンのエース、マティアス・ファルク/提供:ittfworld

――国内での卓球人気はどうですか?
パーソン監督:最近、人気が出てきてるよ。2018年の世界選手権ハルムスタッド大会で、団体銅メダルを獲ったのは大きかったね。そして、ファルクが2019年の世界選手権では決勝に進出した。90年代から2000年初頭の感じに、少しずつだけど近づいてきている。

スウェーデンにとって卓球は伝統あるスポーツだからね。とても嬉しいよ。


写真:17年ぶりのメダルを獲得したスウェーデン男子2018年世界選手権ハルムスタッド大会/提供:ittfworld

ユニクロとのコラボレーション「とても嬉しい」

――ユニクロがスウェーデンオリンピック・パラリンピック代表チームのパートナーになり、大会公式ウエアを提供することが決まったのも、日本人にとっては嬉しいニュースでした。


写真:ユニクロのウエアを纏うマティアス・ファルク(写真左・スウェーデン)、ヨルゲン・パーソン氏/提供:SOC

パーソン監督:もちろん、私たちもとても嬉しかった。2000年代初頭、私は何度も日本に行ってプレーしていたから、スウェーデンでまだ誰もユニクロを知らない頃から、自分の子どもにユニクロの服をたくさん買って帰ってたしね(笑)

だから、このコラボレーションが始まってとても嬉しかった。

スウェーデンの四季は変化が激しいけど、ユニクロの服はあらゆる種類が揃えてあってクオリティも高いから、とても気に入っているよ。

――卓球のユニフォームを選ぶとき、どんな基準で選ぶ?
パーソン監督:大きすぎないこと。サーブの後スムーズに戻れるように。あと、毎日違う柄にするのも好きだね。


写真:真剣に、ユーモアも交えながらインタビューで答えてくれるパーソン監督/提供:ラリーズ編集部

(“>>欧州のレジェンド”パーソン監督 節目の50年で語るスウェーデン卓球の現在地【後編】 に続く)