【吉田雅己#1】 “サムライ”卓球Tリーグへ挑む ケガを乗り越えろ


環境が変わる時、人も変わる。Tリーグの開幕で人生の大きな転換点を迎えた選手がまた1人生まれた。「侍(サムライ)」――。そんなあだ名で呼ばれる卓球プレーヤーがいる。吉田雅己だ。Tリーグ開幕を控え、実業団の名門・協和発酵キリンを退職、日本人と初となるインドリーグへ挑戦、新天地で見事に結果を残した。5月には岡山リベッツへの所属を表明した。

「実は、昔の僕はニセ侍だったのかもしれません」。そうはにかむ吉田。24歳の涼し気な目元には勝負師としての自覚が宿る。「侍」の進化はいつ始まったのか。時は2018年1月に遡る。

上田仁の“一言”

「Tリーグに挑戦するために、協和発酵(キリン)を退職しようと思います」。チームメイトの上田仁がメンバー全員の前で突然こう発した。全日本選手権の大会直後のことだった。当時の上田は全日本社会人選手権を三連覇中で、日本リーグのエースとの呼び声も高かった。ただ、この大会で吉田は上田とダブルスで出場、決勝戦で水谷・大島ペアに敗れてしまった。苦い敗戦を喫した直後のことだった。

日本リーグの名門でチームメイトの上田による突然のTリーグ挑戦の表明。看板選手のプロ転向宣言を吉田はどう受け止めたのか。「以前から僕もTリーグに挑戦したいという気持ちはあった。上田さんの発言がきっかけということはない」と前置きしながらも「ただ驚いた。やっぱりサラリーマンは安定している。正直、安定志向だと思っていた仁さんがリスクをとって挑戦するって言った時はびっくりしました」。

ただ吉田は「グラグラ揺れていた」のだという。Tリーグに挑戦にあたっては日本リーグを兼ねることもできる。つまり、実業団に籍を置きながらTリーグの試合に参加することもできたのだ。同僚の松平賢二がまさにそうだ。吉田は当初、そのキャリアを選択しようとしていたが「実は日本リーグだけじゃなくて、ワールドツアーも諦めたくなかったんです。Tリーグと国際大会に参加しちゃうと日本リーグはファイナルしか出場できないんです」。卓球への理解が深い協和発酵とは言え、年間1試合のみの出場というわけにはいかない。サラリーマンという安定を取らず、挑戦を選んだのは2017年から上り調子だったことも一因だ。2017年8月には世界ランキングは18位と過去最高に達した。「今年は、すごい僕の中でいい時期だった。もう思い切っていこう」。そう腹を括った。

無論、不安がないかと言えば嘘になる。「実はケガに悩まされていて。本当にずっと治らなかった。『もう無理かな』とも思っていた。僕ほど卓球界でケガが多い選手もいないと思います」。吉田のケガは大学時代から始まっている。最初は卓球選手の職業病、手首の腱鞘炎だ。手首の痛みをかばうように打球し続けることで、肩や腰など身体全体へと痛みは広がった。大学時代に痛めた左腰は1年も続き、実業団時代は練習もままならないこともあった。「骨折などの『見える痛み』と違って腰痛や腱鞘炎は『見えにくい痛み』。なかなか理解されにくいところもある。だからブンデスリーグ在籍時代は無理して出ていました。そうしたら怪我が悪化して」。それでもTリーグ参戦という道を選んだのは、2020年の東京五輪を見据えてのことだ。

「実業団で1年間やってて、Tリーグ。この道がオリンピックを狙うにあたって1番いい環境だと思った。これからTリーグに身を置くことが一番いいと思った」と語る。

Tリーガーとしてプロ転向を決めた後、吉田が選んだのは意外な道だった。インドリーグである。ドイツやスウェーデンやロシアを選ぶ日本人選手はいるが、インドリーグへの日本人の参戦は吉田が初だ。若武者が未開の地、「インド卓球」で掴んだものは一体。

文:武田鼎(ラリーズ編集部)
写真:伊藤圭

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