【Real Voice・後編】森薗政崇が語る ドイツでの私生活と苦悩


取材・文:赤羽ひな(ラリーズ編集部)
写真:伊藤圭

現在、ドイツのプロリーグ・ブンデスリーガで活躍中の22歳、森薗政崇。
前編記事から引き続き、ドイツ生活10年目となる森薗の私生活についてお届けする。
ブンデスリーガはドイツ全域にリーグを持ち、毎年9月から3月にかけてホームアンドアウェー戦が繰り広げられている。そのため選手は国内移動も多い。インタビュー後編では、ドイツでの移動事情について聞くと同時に、世界で頭角を現すことで生じ始めた最近の悩み事について教えてもらった。

【Real Voice・前編】10年の武者修行を経て。森薗政崇が語る「ドイツで戦う難しさ」

——ドイツ全国にリーグがあるって、やっぱり大変ですか?
森薗:そうですね。それだけじゃなくて、そもそも僕らは試合拠点と練習拠点が違って、ホームの拠点が2つあるんですよ。例えば今僕らが練習しているのがフリッケンハオゼンっていう地域で、試合はグリューンヴェッターズバッハっていう地域でやっていて。試合する場所と練習する場所がみんな違うんですよ。他には、今日のホームチームであるグレンツァオの選手たちは、ここのグレンツァオのアリーナで試合をやって、デュッセルドルフで練習するとか。だから、試合拠点と練習拠点とが車で数時間離れてるっていう感じです。

——ドイツ国内の移動時間は苦にならないですか?
森薗:キツいですね。国内移動は基本車で、例えば僕らの練習拠点から車でブレーメンに行くとすると6時間から8時間くらいかかったりします。
しかもこっちはアウトバーンっていう制限速度が無制限の道路も多くて、みんなすごいスピードで走るから事故が多いんです。事故が起きて渋滞しちゃうと、ものすごく時間がかかる。この前なんて、4時間くらいの道のりのはずが7時間半かかったりとかして。そういう時はやっぱりキツいです。ひたすら寝てるか、音楽聴いてるか、という感じです。でもそういう暇な時間も重要だなって思っていて。いろいろ考えられるじゃないですか。卓球のこともそうですし、人生のこともそうですし。だからじっくり考える時間に充てています。

——ちなみに車の中では何を聴いてるの?
森薗:洋楽が好きだから、基本洋楽っすね。Pitbullとかmaroon5とか好きですね。他には小説好きで。

写真は今年6月の世界卓球ダブルス銀メダル獲得後のインタビュー時のもの

——好きな小説はありますか?
森薗:佐藤多佳子さんの『一瞬の風になれ』です。10回以上、いや15回くらい読んでるかな。あれはこれまでで一番グッと来ましたね。主人公と自分を重ねながら読んでいます。あのストーリーって、インターハイ予選の高校総体について書いてあるんですけど。実際、高校総体の時って、主人公の神谷新二とか一ノ瀬連とかの心情になるんですよ。もうまさにそういう感じになるんです。だから毎回「うわ、あんとき本当にそうだったよなぁ」とか思いながら読んでて、アツいですね。

——昔から小説好きでしたか?
森薗:もともと小説にハマったのが『走れ!T高バスケット部』を読んで以来です。なんかやっぱりスポーツの話にグッとくるのかもしれないですね。あとは、最近だったらオーストリアの時に友達に渡された『君の膵臓を食べたい』を読みました。

——日本の小説をこまめに買うほど頻繁に帰国してるんですか?
森薗:基本的には、シーズン中はずっとドイツにいます。4月から8月は日本にいて、ブンデスのシーズンが9月から3月だからその間はずっとドイツ。たまに日本で試合があるときに1週間から10日間くらい帰って、試合が終わるとブンデスに合わせてまた戻って来るっていう感じです。

——日本とドイツの往復で大変な中で、ドイツでの今年の目標は?

森薗:当然チームとしては、10チーム中の4位以内に入ってプレーオフにいくことが目標です。ただ、僕の日程がなかなか合わないっていうのがあって、そこが最近の大変な部分かもしれないです。

——ドイツ10年目の苦悩があると。
森薗:日程が合わないというのも、日本の大会に出なきゃいけないじゃないですか。

例えば、世界選手権も今回から一次予選と二次予選ができたから、それで2回帰らなきゃいけない。全日本シングルス予選があるから、全日学があるからって何度も帰っていると、その間はドイツで試合があっても出られないじゃないですか。やっぱり僕が出られないとチームも苦しくなってしまうので、そのあたりのスケジュール調整が今ドイツにいて一番大変なところかなって思います。

今の僕としては、このグリューンヴェッターズバッハっていうチームが本当に家族のように大切なんです。だから本当は全試合に参加して、プレーオフに進むっていう目標をみんなで叶えたいっていう気持ちを強く持っていて。それでも僕自身、プロでやっていく身としては日本の大会も疎かにできないし、今は明治大学所属なので明治のイベントだとかそういったのも疎かにできなくて。その辺のバランスがものすごく難しいです。

——人気者だからこその大変さですね。
森薗:やっぱりどこかに顔を出したら、言い方は悪いですが、他のどこかは切り捨てざるを得ないわけで。僕としては多くの方々に必要とされてるということは心から嬉しいことなんですが、でもやっぱりこれは日本にリーグがないからこその不便さかなって僕は思っています。

——今後日本にリーグができたら?
森薗:
日本にリーグができるとしたらとても嬉しいことだなと思います。ヨーロッパに行く時間やお金が負担になっている面もあるので、日本のイベントに出ながらリーグに参加できたらチャンスが広がると思いますし、始まったら積極的に参加していきたいです。

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