写真:松下浩二Tリーグチェアマン(右)と荻野強太氏(株式会社グレープストーン常務取締役)/撮影:ラリーズ編集部
卓球×ビジネス “東京ばな奈”はなぜTリーグにスポンサーしたのか?<卓球応援企業特集>
2020.01.01
取材・文:川嶋弘文(ラリーズ編集長)
2018年8月1日、全国の卓球ファンの間で衝撃が走った。
2ヶ月後の開幕を控えたTリーグのスポンサー第1号が発表されたからだ。その社名は株式会社グレープストーン。東京土産でお馴染みの「東京ばな奈」を製造販売する同社にとって、卓球はもちろんのこと、スポーツスポンサーシップ自体が初めてのことだった。
東京ばな奈がなぜ卓球界へ?松下チェアマンとグレープストーン荻野専務にTリーグ開幕の裏側を聞いた。
このページの目次
法人設立から1年半。Tリーグ開幕の裏側
写真:松下浩二Tリーグチェアマン(右)と荻野強太氏(株式会社グレープストーン常務取締役)/撮影:ラリーズ編集部
ーー東京ばな奈さんがなぜ卓球のスポンサーに?そしていつ頃から動かれていたのでしょうか?
荻野強太氏(株式会社グレープストーン常務取締役、以下荻野):当社の礎を築いてきたのは東京です。
その東京に2020年に五輪がやってくることが決まりました。東京に育ててもらった菓子屋として、何か我々が力になれないかと考えていました。
そしてちょうどTリーグからお話を頂く直前の2018年2月には平昌五輪でカーリング女子でもぐもぐタイムが盛り上がり、お菓子とスポーツの掛け合わせでこんなに盛り上がるんだと感心しました。
そんなタイミングでのお話だったので、検討を前に進めることになったんです。
ーー他にもスポーツがある中で決め手になったのは?
荻野:人間って新しいことは好きだけど全く見当がつかないことに対しては臆病になると思います。誰もが知っていながら実は手がついていない。そういうスポーツやソースって世の中にあんまり存在しないんです。
知られている物は大体先駆者がいて、何かをやってるので入る余地が無い。でも卓球はこれだけ身近なスポーツでありながら手つかずでした。
今Tリーグ理事の福原愛さんも日本中が育てた感あるじゃないですか、私はテレビで見てただけで何にも貢献してないけど、日本中で見守ってたみたいないわゆる日本の文化における村社会の家族感みたいなのをしっかり持ってる。
しかも卓球は老若男女問わず、雨でも平気、参加する敷居も低いわけです。
どちらかというと10年前は根暗なスポーツで、卓球部ってあんまり大きい声で言いづらい時代もあったりした中で、今はイメージが変わってきました。誰もが知っててみんなの近いところにあるスポーツでありながら実は大きな企業が独占しているわけでは無い。
スター選手が多い、若い、しかもメダルを狙える。その時にTリーグの話があって、我々が卓球業界を後押しすることで、卓球業界が活性化してオリンピックでメダルを獲ることができて、今って世界ランキング2位じゃないですか、もし1位になる縁の下の力持ちになることができれば。そういうところから入ってるんです。
卓球に詳しくもなければ、スポーツビジネスではド素人のまま入ったんで、正直、我々もびっくりしてますよ(笑)。
ーーTリーグ内部では当時どのようなお話をされていたのでしょうか。
松下浩二(Tリーグチェアマン、以下、松下):とにかく必死でした。2016年12月に日本卓球協会の承認プロセスが終わって2017年3月に一般社団法人を設立しました。立ち上げから1年半で開幕戦をやらないといけないという短い準備期間だったので、チームもスポンサーもほとんどゼロ。某アスリートの事務所をお借りして、社員たった2名でのスタートでした。
そんな中、東京ばな奈さんが開幕前に(スポンサーに)ついていただいて、本当に有り難いと心から思いました。全国の皆さんが東京に来たら必ず目にするお菓子ですよね。知名度の高いブランドがスポンサーにつくのはリーグが盛り上がる必須条件の一つだと思っていましたから。
ーーそしてついに2018年10月24日、両国国技館での開幕戦を迎えられました。
松下:2日間で約10,000人。
荻野:埋まりましたね。
うちはとにかく開幕のお祝いの気持ちを込めて東京ばな奈をご来場の皆様に配りました。そして気づいたのは卓球は選手と観客が近いということ。
野球とかサッカーよりも距離が近いので直接お菓子を配っていただければ、皆様も嬉しいと思い、今では試合後に選手からファンの皆様に手渡しして頂けるようにもなりました。
選手たちもSNSで食べている様子をアップしていただいたりと、とても協力してくださって、本当にありがたいです。
松下:試合中のベンチにも専用のボックスが置いてあるので試合後にもぐもぐしている選手も多いですね。
試合後に選手からファンに東京ばな奈を配る演出はTリーグ名物となりつつある(写真提供:Tリーグ)
松下チェアマンが語る“BにあってTに無いもの”
写真:松下浩二Tリーグチェアマン(右)/撮影:ラリーズ編集部
ーー現在は2ndシーズンの途中ですが、今季、来季はどのような計画をされているのでしょうか?
松下:やらなければいけないことが沢山あります。同じアリーナスポーツで先を走るBリーグは一番参考になります。視察もさせていただくのですが、BJで10年、Bで4年の積み重ねがすごくあるなぁと感じます。TリーグはBリーグの良いところを3倍4倍のスピードで取り入れないといけない。
ーー特に取り入れたいのはどういう所でしょうか?
松下:世界的に見た選手のレベルではTリーグの方が上です。ただBリーグの観客と選手の一体感は凄いですし、試合を盛り上げてスポンサーをもっと獲るんだというスポーツビジネスとしての貪欲さ、そういう点ではまだまだTリーグは足りていない。
ただ、Tリーグも元々選手個人個人にファンがついていたのが、最近はチームにファンがついて来ていて、その点はBリーグに近づいて来たかなとも思っています。
ラグビーのワールドカップで6万人、7万人の観客が入っていましたが、そのほとんどがラグビーのルールを知らない。にわかファンでも行けばお祭りみたいに楽しいから足を運ぶ。卓球以外にどれだけ面白いこと、盛り上がることを用意できるかだと思っています。
今後はリーグ主導からチーム主導で試合空間を変えていく構想になっていますのでチームとの対話を続ける予定です。
スポンサーから見たTリーグの魅力
写真:荻野強太氏(株式会社グレープストーン常務取締役)/撮影:ラリーズ編集部
ーー最後にスポンサー視点でのTリーグの魅力を改めて教えて下さい。
荻野:Tリーグはサクセスストーリーが垣間見えて共感できるリーグです。日本の卓球は世界2位。スター選手、若い選手も沢山いる。世界一を目指せる条件が揃っているということが面白さですよね。
プロ野球も戦後何も無い時にみんなが何か夢中になれるものをということでエンターテインメントとしてのプロ野球が発展した。
サッカーではJリーグからワールドカップに繋がっていったように、Tリーグが出来たから日本の卓球が世界一になった。そういう可能性を秘めているから応援しがいがありますよね。
松下:今開催中の2ndシーズンも、東京五輪の後の3rdシーズンも引き続きサポートと盛り上げを宜しくお願いします!
荻野:チェアマンもさらに前面に出ていきましょう(笑)
松下:頑張ります(笑)
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