「スポーツ×SNSの先駆者に」松下チェアマンに聞くTリーグのTikTok活用法 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:松下浩二氏(Tリーグ チェアマン)/撮影:寺西ジャジューカ

連載 「スポーツ×SNSの先駆者に」松下チェアマンに聞くTリーグのTikTok活用法

2019.01.24

文:寺西ジャジューカ

Tリーグは、アジアを中心に月間アクティブユーザー5億人を超える人気ショートムービーアプリ「TikTok(読み:ティックトック)」をPRパートナー(公認アプリ)とし、リーグ開幕の昨年10月より連携をスタートしている。

開幕から約2カ月が経ち、今やTリーグのTikTokフォロワー数は20,000を超える(Facebookのフォロワーは3,100強、Twitterは15,000強)。

また、松下浩二チェアマンによる投稿動画“全力〇〇始めるよ”や張本智和、石川佳純ら人気選手による“素振りダンス”はコア層からライト層までを幅広く巻き込み、話題となった。

今回は、日本のスポーツ界では初となるトップリーグとSNS企業とのコラボレーションの意義や、積極的なSNS投稿によって表れた効果などについて、Tリーグの松下浩二チェアマンと、Tリーグ事務局でメディアプロモーションを担当する松永容樹氏にお話を伺った。

なぜ、Tリーグは人気SNS“TikTok”と提携したのか?

――TikTokとの提携のきっかけは?

松下浩二チェアマン(以下、松下):Tリーグの認知度を幅広い年代で高ようと思った時、SNSの活用は不可欠です。Twitter、Facebook、Instagram、ブログなどは一般的で、もっと違った形でも認知度を高めたいと思っていたところ、TikTokさんも「TikTok×スポーツ」の掛け合わせを展開していきたいという考えがあり、ご一緒させて頂くことになりました。

――提携前、TikTokは使われていましたか?またどのような印象をお持ちでしたか?

松下:話題になっていたので聞いたことはありましたが、アプリをインストールしたのは提携が決まってからですね。


写真:松永容樹氏(Tリーグ メディアプロモーション部)/撮影:寺西ジャジューカ

松永容樹氏(以下、松永):初めてお話を伺ったときには、それこそ“若い子が踊ってる動画集”というイメージが先行していましたね(笑)

――実際ユーザーとなってみて「TikTokならではの強み」はどこにあると感じていらっしゃいますか?

松下:例えばインタビューやコメントなどのコンテンツを発信するときでも、Facebookだと真面目というか、かしこまってしまう部分があります。しっかりとした堅めのコンテンツを好む層もいらっしゃると思うんですが、若い層にはTikTokのようなライトなコンテンツの方ががウケがいいですよね。特に10代の若い方から良い反応が得られていると感じています。

――卓球やTリーグを若い世代にアピールするメリットは?

松下:卓球に親しんでいただくことにより、後に何かのきっかけで卓球を始めるかもしれません。若い頃から接していると、年齢を重ねて「何かスポーツやろうか」というときに記憶にある卓球をやるかもしれないですし。

また、これは少し嫌らしく聞こえてしまうかもしれませんが、長期的に見て、卓球のスポンサー支援者を増やすのにも一役買ってくれると考えています。立場上「卓球にご支援いただけませんか?Tリーグのスポンサーになっていただけませんか?」というお話をすることが多いのですが、子どもの頃に卓球に関わった方の理解が得やすい。

例えば、中学や高校まで卓球をやっていたとか。ご支援いただけるのは卓球に接点があった方が多いんですよね。そういう意味では、SNSをきっかけに卓球に親しんだ子供たちが大きくなり、企業の中で決定権のあるポジションに付いた時、卓球を資金面でも応援しやすい土壌が出来ると考えています。

――SNSは身内になる人を作る役割も担っているということでしょうか?

松下:はい、長期的にはそれも見据えています。

松永:また、卓球は中高生の競技人口がとても多いので、SNSがプレーヤーとTリーグと直接繋ぐ役割を担っていると思っています。卓球はやっているけど、Tリーグとは接点がない。でもTikTokを通じてコミュニケーションが取れるということは有り得ますよね。本来であればアマチュアのプレーヤーとプロアスリートにはとてつもない距離がありますが、TikTokの動画を通じてなら繋がれますので。

TikTokを通じてファンと選手の間で協調性が生まれる

――スポーツとSNSは親和性が高いとも言われていますが、卓球とTikTokの相性の良さは感じますか?

松下:「全力卓球」なんて、みんなやりやすいと思いますよね。他のスポーツで、例えば「全力ピッチング」ってやってみても動きはほぼ一緒ですけど、卓球はスイングのバリエーションが本当に多い。だから、他の競技と比べてTikTokとの相性はいいんじゃないかなという気はします。

ーー確かにフォアハンド、バックハンド、サーブ、カットなど、いずれもラケットの動かし方が全然違いますね。

松下:あと、選手がやっているダンスを真似されている方がいたんですが、同じ動きをしてシンクロすることによって感情がその人に近付いていくらしいんですよ。

――プレイヤーに近付いていく。

松下:例えば昨年DA PUMPの「USA」が大ヒットしましたよね?あのUSAダンスをみんなで真似することで、ISSAさんとの心理的距離が自分の中で近付いていくそうです。シンクロして何かやるっていうのは、すごく協調性が出てきやすいらしいんですね。是非Tリーグの選手たちの動画を真似して頂きたいです。

――TikTokを通じてTリーガーをより身近に感じられるようになるということですね。

松下:USAのヒットからは学ぶところが多いです。短い尺の動画で完結するダンス、替え歌や真似がしやすい単純な振り付けと歌詞など、SNSとの親和性やコミュニケーション戦略がヒットを生んだと言われています。Tリーグは、新しいリーグなので時代に合った発想を柔軟に取り入れたいと思っています。

――チェアマン自らが先導されているので、卓球ファンも楽しみにしていると思います。ちなみに松下チェアマンが「全力卓球」の動画をアップされたときは、どのようなリアクションがありましたか?

松永:チェアマンが楽しく素振りされているのを見て、卓球をやられている方以外からも「安倍総理だ!」なんてコメントが書き込まれたり(笑)。普段、接点のない人からも笑えるコメントが入ったりするんです。


写真:松下浩二氏(Tリーグ チェアマン)/撮影:寺西ジャジューカ

松下:個人的には「全力◯◯」とかもいいんですけど型にはまらず、ナンセンスなものが逆にセンスになるのではないかと思ってます。

――チェアマン、すでにTikTokを熟知されていらっしゃる気がします(笑)。

松下:やりようはたくさんあるなと、可能性を感じています。15秒や20秒の短い尺の動画をドラマみたいに連続ものにして、「今週は何が出てくるのかな?」とお客さんに思っていただいたり。例えば「続きは会場で」と繋げたら「会場で何かやってくれるのかな?」ってファンが期待を持って会場に足を運んでくれるかもしれない。

――TikTokも新しいSNSなので、逆に言えば色々と試せますよね。今までの投稿の中で一番反響が大きかったのは?

松永:今までで一番反応が大きかったのは「卓球言いなり選手権」ですね。「いいね」が1.7Kなんで1,700人くらいで、見てるのは81.1Kで8万1千。

松下:結構、見てくれてるんだねえ!

TikTok活用によるアスリートの可能性

――TリーグはTwitterやFacebookの公式アカウントを以前からお持ちでしたが、それだけでは物足りない部分はあったわけですか?

松下:そうですね。有名人はTwitterでフォロワー数がどんどん増えますけど、実力があってTリーグに参戦していても、知名度が低い選手がTwitterをやっても見る人も少ないし、あまりインパクトがない。ユーチューバーがYouTubeの中でどんどん有名になっていったようにTikTokなら、キャラが立っていればまだ知名度の低い選手でも多くのファンを獲得できるかもしれない。

――選手にドンドンTikTokを使ってほしいということですよね。具体的に、どんな選手がTikTokに向きそうだと思いますか?

松下:キャラ的に面白い選手はいますよ。琉球アスティーダの松平賢二選手とか、卓球でもSNSでもアクティブです。それから若い選手は、やっぱり抵抗なく使いこなしている印象です。選手のキャラが立っていて、卓球のプレー以外でも注目されれば、また違うファン層が生まれるかもしれない。

ーーもし松下チェアマンが現役アスリートだったらTikTokをどのように使いますか?

松下:僕が選手だったら、もっともっとTikTokを積極的に活用すると思います。誰よりも投稿数を増やし「この選手、バカみたいにやってるな」っていうのを植え付けさせて、プロ選手である自分を売っていく。だって、やる分にはタダじゃないですか?

それをメディアが1つでも2つでも拾い上げてくれて、そこからファンが増えてくれたらすごくラッキー。卓球のランキングはナンバーワンじゃなくても、キャラクターが愛されて、テレビに呼ばれることになり、そこからスポンサーが付く……なんて展開に結びつくかもしれない。

ーー現実的にあり得るお話だと思います。

松下:TikTokとの連携はもう2カ月以上経ちます。TwitterやFacebookだけだと突き抜け切らなかったけど、TikTokによって全く違う角度から突き抜ける効果が結果として表れ出した。

外部機関の調査によれば、Tリーグの認知度は開幕前と比べて2倍になり、それに伴って観客動員数も増えました。そういう意味で、Tリーグを普及させるためのツールとしてTikTokの重要性は肌で感じています。今後も新しい活用方法を考えていきますので、Tリーグや選手アカウントに注目して頂きたいです。

ーー松下チェアマン、松永さん、ご協力ありがとうございました。Tリーグの熱戦も、今後のSNS投稿も楽しみにしてます。

話題になった松下チェアマンのTikTok投稿はこちら