伊藤美誠と中学時代は同じ学校に通い、平野美宇、早田ひなとはチームメート。“黄金世代”を間近で見ながら、一学年下から虎視眈々と高みを目指すのは、卓球Tリーグ女子・日本生命レッドエルフに所属する皆川優香(みながわゆうか)だ。
生まれ育った大阪の地から世界を目指す皆川は、同じチームで1つ年上の平野に指名を受け、ワールドツアーや代表合宿で練習相手を務め、「自分も頑張らないと」と刺激を受けている。
4月からは大学生となる皆川は、「真似したくてもできない」と評する平野との練習や、憧れの選手とのTリーグでの試合、そして自らの今後の展望を笑いを交えながら明るく語ってくれた。
>>日本生命レッドエルフ特集 五輪代表や全日本女王輩出 日本生命卓球部、“育成と勝利”両立の秘訣
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日本生命への恩返しを誓い、臨む大学生活
――4月からは大阪成蹊大に進学されますね。
皆川優香(以下、皆川):父が監督をしてて姉もいるのでそこで頑張ろうかなと。姉とは昔からよく練習していて、卓球になるとお互い負けたくない気持ちが強い。切磋琢磨していきたいです。
まだチームは関西リーグ2部ですが、自分が入って1部昇格、優勝できたらと思ってます。団体戦も大事ですが、全日学優勝など個人戦でも成績を残したいです。
写真:皆川優香/撮影:ハヤシマコ
――大学生活は楽しみですか?
皆川:とても楽しみです。高校から通信制に行っていたので友達も少なく、授業行くことも全然なかった。その分、卓球の練習ができて良い環境でしたが、やっぱり友達は大事。今までは卓球界の友達しかいなくて、学校に行く度に1人だったので、授業をみんなで受けるとかそういう普通のことが楽しみです。
写真:皆川優香/撮影:ハヤシマコ
――大学は誘惑が多く、練習量が落ちてしまう選手もいると聞きます。
皆川:そこは父や姉もいるので大丈夫だと思います。また、日本生命に恩返しするためには結果が大事だと思うので、全日学優勝など大きな結果を出すために頑張ろうと思ってます。
それに平野美宇選手の練習相手に最近は帯同させてもらっているので、自分も頑張って強くならないと練習相手も務まらないと思うので。
4時間ぶっ通しの練習 間近で感じた平野美宇のすごさ
――平野選手の練習パートナーを務めるきっかけは?
皆川:元々結構仲が良くて、ジュニアのときから海外で一緒になってご飯食べたりはしていました。
Tリーグで平野選手と私がレッドエルフでチームメートになって、そのときにハンガリーオープンで最初来てほしいと言われて、初めて帯同しました。そこからはカタールオープンやトレセンの合宿なども一緒に行くようになりました。
写真:ラリーを得意とする皆川。練習でも引き合いで力強いボールを放つ/撮影:ハヤシマコ
――東京五輪代表の平野選手とのトップレベルの練習は刺激になりますか?
皆川:もちろんなります。練習に対する集中力がすごくて、3、4時間くらいぶっ通しでやることもある。本当にすごいの一言しかないです。1つの練習に2時間かけることもあって、自分が納得するまで反復練習をやり続ける。そこは真似したくてもできないです。
良いボール打っていても、『まだ納得していない』『ここが違う』と微調整をコーチと話し合ったり、できていても『もっとここをこうしたい』と言って、朝の10時から夜の8時くらいまでずっとやり続けるんです。この前、平野選手との練習で卓球してて初めて指をつりました(笑)
――指がつるって相当ですね…。
皆川:自分も初めてだったんでヤバかったです。4時間くらい同じ練習でずっとラケット握ってたんです。すると指の感覚がなくなって、1回グーパーしようと思ってやったら、『ちょっと待って!つった!』って(笑)。練習4時間ぶっ通しも初めてで足もプルプルで大変でした。でも平野選手はその後もトレーニングしてました。本当にすごいです。
写真:「真似したくてもできない」と平野の練習について語る/撮影:ハヤシマコ
エリアカ・木原美悠と中国語を勉強中
――トップ選手はやはり誰よりも努力しているんですね。他にも仲良い選手はいますか?
皆川:木原美悠選手と仲良いです。木原選手は中国語がめっちゃ上手いんです。私も中国語で会話したくて、毎日中国語で音声を送り合ってて、分からないことあったら質問してます。
――なぜ中国語を勉強されてるんですか?
皆川:女子はアジア圏の選手が強いので、海外の試合に行くと中国語を話してる人が多い。コーチ陣も中国の人がいるので、自分が中国語話せたらコミュニケーションをもっと取れるから中国語は覚えたいと思ってます。あと国際結婚も狙ってるので(笑)。真剣に今勉強してます。
写真:「国際結婚狙ってます(笑)」/撮影:ハヤシマコ
「卓球をやめよう」全日本ジュニアでの敗北
――Tリーグセカンドシーズンでは試合出場も果たしました。振り返ってみていかがですか?
皆川:昔から馮天薇(フォンティエンウェイ)選手が大好きで、対戦できてうれしかったです。
試合前から結構楽しみで『よっしゃ頑張ろう。1ゲームは取りたいな』と思ってました。どこか1つでも上回っていたらそこで勝負しようと考えてましたが、試合が始まると何も自分が上回るとこがなかった。強すぎて1点取るのも大変で世界の厳しさを知りました。
写真:皆川優香/撮影:ハヤシマコ
――Tリーグでの馮天薇選手との試合の他に、今までで印象に残ってる試合はありますか?
皆川:去年の全日本ジュニアです。優勝を狙ってそのためにずっと練習してた。でも、4回戦で2-0リードから逆転されて、人生で一番悔しかった。あの負けは忘れられないくらい悔しくて、自分は本当に卓球に向いてない、卓球をやめようと思って、1日中暗い部屋のベッドで泣いてました。
私があまりにも落ち込んでいるので、母からも『当分卓球しなくていいよ』と言われて、村上総監督にも『ちょっとの間休憩して、また卓球したくなったら戻っておいで』と言ってもらって、1週間くらいは遊んでました。
――それでも戻ってきたんですよね。
皆川:偶然いとこが卓球してるのを見に行ったんです。ちょっと相手してたら、卓球が楽しくて。次の日からまた毎日普通に練習するようになりました。やっぱり卓球が好きなんだと思います。
写真:皆川優香/撮影:ハヤシマコ
――日本生命の選手はみんな「卓球が好き」とおっしゃいますね。最後に目標を教えてください。
皆川:全日本でランク入りしたいです。あとは、大学でもTリーグでも出させてもらったら勝ってチームに貢献したいと思ってます。大学では姉とダブルスを組むと思うのでケンカせず仲良くやれるように頑張ります(笑)。
日本生命レッドエルフ特集
>>第1話 五輪代表や全日本女王輩出 日本生命卓球部、“育成と勝利”両立の秘訣
>>第2話 “高2で福原愛下し卓球全日本2位” 森さくらを苦しめた呪縛
>>第3話 森さくら「初めて卓球の楽しさに気付けた」卓球人生変えた恩師との出会い
>>第4話 転機は「インドの“さくら”コール」 Tリーグ最多勝・森さくら誕生秘話
>>第6話 「早田ひなに憧れて」 卓球激戦区・大阪に現れた17歳のニューヒロイン麻生麗名
(取材:3月初旬)